兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第252回 ショートステイ中の兄の様子】
ライターのツガエマナミコさんは、一緒に暮らす認知症の兄の施設入所の申し込みはしているものの、受け入れ可となるかどうかまだ分からぬ状況です。その間は、ショートステイを活用しながら在宅でサポートを続ける日々。症状が進行する兄のお世話は、それはそれは苦労が絶えないのです。
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入浴をめぐる攻防
特別養護老人ホーム入居お申込みの経過をご報告しましょう。
先方から「一度面談したい」とご連絡をいただきました。兄のショートステイの関係でまだなのですが、近々ご来訪されることになっております。お電話で「来訪されたら決まりというわけではないんですよね?」と伺うと、「そうですね、一旦は持ち帰り検討します」というお返事があり、なんとなく期待薄の予感がいたしました。可能性はゼロではないけれど、入れない可能性の方が大きい。前回見事に裏切られたので(第229回を参照)、今回は最後の最後までぬか喜びはせず、契約書を交わすまでは「どうせ入居できないんだ」という心持ちでいようと決めております。とはいえ、どこかで「兄を拾ってください!」と願ってしまうのですが……。
→第229回「まさか!衝撃の連絡」を読む
最近のショートステイ滞在中の兄の様子は、大まかにこんな感じでございます。
「入浴時に放尿あり」「他の居室で排便あり」「尿失禁あり」「便失禁あり」「トイレに誘導しても便座に座っていただけず尿パット交換」「スリッパをテーブルに置く」「日中ニコニコ穏やかな様子」「鏡で自分の顔を見て笑っている」「各テーブルを回り『よっ』『ヤッホー』と笑顔で声掛け」「朝までよく休んでいる」「食事はほぼ完食」………施設の報告書より。
帰ってきた兄は紙パンツではなく、紙オムツに尿パッドでいかにもモコモコ窮屈そうでございました。我が家も紙オムツの購入を検討したほうがいいのでしょうか。
入浴拒否は毎回ではございませんが、なにがきっかけでご機嫌を損ねるかわからないので難儀しております。先日はお風呂場までは来てくれましたが、ズボンを脱がす段階でブレ―キがかかり、少し粘っておりますと、げんこつで頭をゴツンゴツンされました。さすがに手加減してくれたようで痛みはさほどでもありませんでしたが、足元にいるわたくしを強引に押しのけてお風呂場から出て行きました。お尻からはお便さまの匂いがしているのですが、どうにもなりません。
こういうときは、”触らぬ神に祟りなし”なので、パンツを脱ぐ気になるまで辛抱強く待つことにしております。数時間置きに「シャワーする?」という声掛けをする中で「そうだね」と言ってくださるときもあれば、「あんまり」「やめとこ」とおっしゃるときもございます。「そうだね」といってくださったとしても結局首をかしげて「ちょっと…」といったままリビングに逆戻りして「入らないんか~い!」となることもございます。
なるべく琴線を刺激しないように嫌そうな素振りがみえたら、わたくしは「そっか、そうだね」とさっさと引くようになりました。
近頃、洗濯は毎日2回が絶対でございます。朝の横漏れでビショビショの服一式と防水シーツは別々に洗わないといけないからでございます。2回で終わればいいですが、午後にお便さまなどでおズボンや靴下が汚れた場合は更にひと回しいたしますので、洗濯機が気の毒でなりません。「毎日大変だね。申し訳ない」と声掛けせずにはいられません。全自動洗濯機がない時代の介護はさぞ大変だったと思います。でも50年先の未来では「2024年頃は洗濯機何回も回して大変だったらしいよ」と言われていることでございましょう。「老人介護」や「認知症」という言葉もなくなっているといいですね。
突然ですが、小学生でもできる問題をひとつ。
「バッドとボールは併せて1100円です。バッドはボールより1000円高い。ボールはいくら?」
答は100円!
「簡単じゃん」とわたくしは思ってしまったのですが、本当の答えは50円です。
算数苦手のわたくしは、それを知ってなお「なんで?」とかなり悩んでしまいました。
じつはこれ、米国の大学教授がハーバード大などの学生たちに出し、即答させると半数が間違えていて驚愕したという有名な問題のツガエ風アレンジでございます。人は案外直感を信じやすく間違いやすい生き物のようでございます。じつに面白い問題です。今小学校に入れたら、算数の授業もきっと楽しいだろうな~と思ったツガエでございました。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性61才。両親と独身の兄妹が、8年前にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現65才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。病院への付き添いは筆者。
イラスト/なとみみわ
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