大場久美子さんが経験した白内障手術「“見える世界”は本当に新鮮」治療や手術の最新事情を医師が解説
”目の国民病”ともいわれる白内障。女優・歌手の大場久美子さんも白内障の手術を経験している。白内障は、年齢を重ねると誰でも起こり得る病気で手術で治すことが一般的だが、術後に「車の運転ができなくなった」「遠くが見えづらくなった」という人もいるという。白内障治療の注意点を眼科医に聞いた。大場さんの手術体験記と合わせてご紹介する。
教えてくれた人
平松類さん/二本松眼科病院副院長、大場久美子さん/女優
安全ですぐ終わる手術でも白内障の治療は慎重に
「患者数」という点で、国民的課題なのが「白内障」だ。
60代で70%、70代で90%、80代では100%が罹患するとされ、“目の国民病”とも言える。
二本松眼科病院副院長の平松類医師が語る。
「目のレンズの役割を果たす水晶体が白く濁る病気で、症状は新聞などの文字が読みにくくなることから始まり、人によっては視界がぼやけて見えたり、ものが二重に見えたりなど様々です」
白内障の治療は「手術」が選択されることが多い。基本的に日帰りで、年間165万件と、日本で行なわれる外科手術のなかで最も多く実施されており、“安全ですぐ終わる手術”とされている。
だが、平松医師は「手術にはリスクが伴うことを知ってほしい」と言う。
「ひとくちに白内障の手術といっても、その治療方針は医師によって異なります。しっかり医師とコミュニケーションを取らないと望まない手術になってしまう恐れがあります。緑内障と異なり、治療すれば失明は避けられる可能性が高いため、日常生活の不自由をどのレベルまで許容するかなど、意思をはっきり示す必要があります」
「眼内レンズ」の選び方で生活の質が大きく変わる
白内障手術のリスクは合併症の有無だけではない。水晶体を除去して「眼内レンズ」と呼ばれる人工レンズを入れることになるが、その選び方が術後のQOL(生活の質)を大きく左右することになる。
「主流の『単焦点レンズ』は保険適用のため自己負担は安く済みますが、ピントが合う位置が1点のため、遠くに合わせると手元が見えにくくなり、老眼が進んだような状態になることがあります。
一方、レンズ代が選定療養(追加負担がある)の多焦点レンズは遠くも手元も見えやすくなります。ですが、暗い環境では電灯や車のライトなどが散乱して見えるなどの症状が出やすく、“術後、光がギラギラ見えるようになった”などの不調を訴える人もいます」(平松医師)
夜間に車の運転をする人が、「医師に勧められたから」と、安易に多焦点レンズを選択すると、“運転中に安全な視界が保てない”という大きな落とし穴にはまりかねない。
平松医師が知る患者のなかには白内障手術で後悔した人もいる。
「かかりつけ医に『そろそろ手術を』と勧められて多焦点レンズを入れたところ、逆に日常生活に不自由を感じるという人は多い。単焦点レンズに入れ替える再手術をされる方もいます」(同前)
レーザー手術に必要性も医師としっかり相談を
白内障治療では近年、機械を用いる「レーザー手術」も増えている。
「レーザー手術は診察、検査を含めてすべて自由診療のため、費用が非常に高額。従来の手術に比べて精度が高く、合併症のリスクは減りますが、術後の見え方は人の手によるものと変わらないので、安易に選ぶのはムダになることもあります」(平松医師)
医師によっては、患者の自己負担額が大きいレーザー手術や、レンズ代が自費の多焦点レンズを勧めてくるケースもある。
「患者さんのメリットを考慮した結果であればいいのですが、医師が収益を上げるために勧めるのは本末転倒です。最初から一方的に高額治療を勧めてくる眼科医には注意したほうがいいでしょう」(同前)
後悔しない選択のためにも自らの生活に合わせて「どの不自由を除き、受け入れるか」を医師としっかり相談したい。