川柳作家やすみりえさんが選出した”介護川柳”入賞作品が決定!最優秀賞は「情景が目に浮かぶ、秀逸な句」|応募全作品を一挙公開!
介護する方、介護を受けられる方の日常にまつわる、あたたかで明るく、詠んだ方も読んだ方も前向きな気持ちなれる…そんな川柳を募集し、審査員に川柳作家のやすみりえさんをお迎えし、最優秀賞・優秀賞、編集長特別賞を選出しました。応募いただいた作品は全476。たくさんの作品の中から、はたしてどんな作品が選ばれたのでしょうか――。川柳を詠むコツ、楽しむコツもやすみさんに教えていただきました!
応募総数476作品から「最優秀賞」ほか7作品の受賞が決定!
介護ポストセブンは、読者の皆さまに支えられ、今年7周年を迎えることができました。今回当サイト7周年を記念する新たな試みとして始まった「介護のなかま川柳」。介護するかた、介護を受けられるかたの温かい日常や、愛情あふれる川柳が、なんと合計476作品も届きました。
応募作品の中から「介護のなかま」運営事務局が一次選考を行い、川柳作家のやすみりえさんに最終選考いただいた「最優秀賞」(1作品)、優秀賞(5作品)が決定いたしました。また、介護ポストセブン編集長が選出した「編集長特別賞」1作品も合わせて発表します!
選者・やすみりえさん
たくさんの心温まる作品の中から受賞作を選ばせていただきました!
最優秀賞(1作品):Amazonギフト券1万円分
「母の日に 母に紅さす ケアハウス」
(ペンネーム/牛美さん・85才男性)
「年老いた母に紅をさす情景が目に浮かぶ、秀逸な句です。
川柳は、上五(かみご)、中七(なかしち)、下五(しもご)で構成されていますが、この句は、五・七・五のリズム感がとてもいい。
17音の中で「母」が2回出てくることにより母の存在が強調され、物語の中で「母」にしっかりとスポットが当たり、下五に描かれた場所、ケアハウスに繋がっていく。
作者が、85才と高齢のかたですが、お母様との思い出を詠まれたのか、ケアハウスにいらっしゃる作者自身が、周囲の状況を観察して詠んだ句なのか、色々と想像が膨らみます」(やすみりえさん、以下「」同)
優秀賞(5作品):Amazonギフト券3000円分
「おし活は 母さん乗せた 車椅子」
(ペンネーム/関西流星さん・41才男性)
「いま世の中で「推し活」がブームですが、“おし”を平仮名にして、押す動作とかけているのがポイントですよね。自分がいま一生懸命になっている推し活、それが「母の車椅子をおすこと」であるという、介護を前向きに捉えている温かい気持ちが伝わってきます」
「繋いだ手 歩幅小さき 母に添う」
(ペンネーム/凛香さん・58才女性)
「この句は、中七の表現力が豊か。母が年老いたことを表すのに「歩幅小さき」としたことで、歩くことがおぼつかないのかな、歩くのがゆっくりなのかなと、いろんな想像が働く。
年齢を重ねて少し小さくなった母の姿、作者が心で感じた母の姿を味わい深く表現した一句です」
「AIよ 介護の機知を わかるまい」
(ペンネーム/どてらさん・43才女性)
「介護のお仕事をされているかたの目線で詠まれた句です。ほかの句と異なる輝きがありますね。
利用者さんの表情を読み、状況に応じて対応する、その機知はまだまだ AI にはできないもの。下五の「わかるまい」という言葉に、お仕事に対する自負や心意気、頼もしさを感じました」
「『グーパー』と 手よりも口が 開く母」
(ペンネーム/けんちゃんさん・59才女性)
「まず上五の「グーパー」という動きを表現する言葉に、なんだろう?と引き込まれます。
娘さんの横でお母様がリハビリをしていらっしゃるのか、母娘で笑い合っているひとときが切り取られています。介護のほのぼのとした一面を上手に表現されていると思いました」
「うちの父 要介護5の ビッグボス」
(ペンネーム/夢子さん・58才女性)
「この句は、17音の中にいろいろな要素が詰め込まれています。
まず、「うちの父」とすることで、作者の実体験であることがよくわかります。家族の中で父親の存在感の大きさをよく表している句だと感じました」
編集長特別賞(1作品):Amazonギフト券3000円分
「すたすたと 歩く姿は 来客用」
(ペンネーム/あおぞらさん・58才女性)
「まず、私自身の母の姿を思い出しました。高齢の親御さんのいらっしゃるかたには「あるある」のシーンをうまく切り取られていると思います。
家族の前では、足元がおぼつかないのに、人前ではしゃんとする。あーあ、と思いながらも優しく見守るご家族のご様子が目に浮かびました」(編集長・関)
やすみりえさん:総評
介護は大変なことばかりだと思いますが、そんな中で味わった楽しいこと、嬉しいこともひっくるめて共有する“なかま”がいると思うと、心強いですよね。そんな想いを込めて、今回は、介護を明るく前向きに捉えている作品を中心に選びました。
川柳は五・七・五という17音で、人間の喜怒哀楽のすべてを表現できます。川柳を作る際に身のまわりを観察し、見つけた言葉や感情のことを句材と呼んだりします。介護中には、喜怒哀楽を表す句材がたくさんあると思います。嬉しかったこと、楽しかったこと、悲しいことでも、自分なりの句材を見つけて、気持ちを膨らませながら、川柳を詠んでみてほしいですね。
川柳は、「あるある」「わかるよね」という納得と共感の文芸。介護のなかまのみなさんが詠んだ川柳を通じて、身近なかたやご家族とさらに会話が広がっていくといいなと思って
います。
【やすみりえさんプロフィール】
やすみ・りえ/川柳作家。大学卒業後、本格的に川柳の道へ。抒情的川柳を提唱し、恋を詠んだ作品が幅広い世代から支持を得て現在に至る。多数の公募川柳の選者・監修をつとめるかたわら、各地でワークショップを開催するなど川柳の魅力を様々なメディアで発信。テレビ・ラジオ出演も多数。句集に「召しませ、川柳」(新葉館出版)、監修・共著「俳句・川柳・短歌の教科書」(つちや書店)など多数。
全日本川柳協会会員。日本文藝家協会会員。令和3年度文化庁長官表彰。