食と健康の専門家が答えた!脳卒中・心筋梗塞を防ぐ「究極の習慣」|節酒、禁煙、適度な運動
●階段や坂道は無料のトレーニングマシンと心得る
ランキングを片手に、生活習慣の改善に取り組みたい。専門家が「究極の習慣」として声をそろえたのは「定期的な運動」の重要性だ。
「定期的な運動は心臓や足腰を強くし、血流を改善します。血圧やコレステロール値を健康的な範囲に保つことにもつながります」(谷本さん)
渡辺さんが特に推奨するのは有酸素運動。
「運動量が不足すれば筋肉が減って基礎代謝も落ちる。その結果、内臓脂肪が増えて血液循環が悪くなり、動脈硬化が進んでしまう。動脈硬化の予防に最も効果的な運動が有酸素運動であることは、さまざまな実験や論文から明らかになっており、早歩きや自転車こぎ、水中歩行などがおすすめです。忙しい人はエレベーターやエスカレーターを使わないだけでもいい。通勤時に家から駅まで10分以上歩く人は、それ以下の人よりも高血圧の頻度が少ないという研究結果も報告されています。階段や坂道があったら避けるのではなく、無料のトレーニングマシンだと思って歓迎してほしい」
菊池さんも声をそろえる。
「改めて何かスポーツをしなくても、いつもより10分以上歩く時間を増やせばいい。暑い日にはエアコンの効いているスーパーやショッピングセンターをゆっくり歩き回るだけでも充分な運動になります」
体を動かすことを推奨する一方、専門家たちは激しすぎる運動はかえって逆効果であると警鐘を鳴らす。坂東ハートクリニック院長の坂東正章さんが言う。
「いきなり激しい有酸素運動をすると、思いも寄らぬ合併症が生じる可能性があります。かかりつけ医のいる人は、自分にとってどの程度の有酸素運動が適切かを相談したうえで始めましょう」
特に起床後すぐの激しいジョギングは、脳卒中と心筋梗塞のリスクを上げることが明らかになっている。「無理をしない」を合言葉に、いまできることから始めてほしい。
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禁煙、節酒の重要性
運動は適度を心がけるべきである一方、徹底すべきはそれぞれ2位と4位にランクインした「禁煙」と「節酒」だ。徳田さんは「喫煙は動脈硬化の最大のリスクファクター」と断じる。
いまさら遅い思わず、すぐに禁煙してみる
「“いまさら禁煙しても遅い”と思わずに、思い立った日にすぐにたばこをやめてください。遅かったとしても、やめないよりははるかにいい。それだけ喫煙は血管に悪いのです」(徳田さん)
実際に内科医の佐々木欧さんは、医療現場で禁煙の効果を強く実感したという。
「虚血性心疾患を治療中の患者が禁煙したところ、発作の頻度を減らす効能がコレステロール治療薬の約2倍だったという報告がありました」
週末の深酒には要注意
かつて「百薬の長」といわれていたアルコールも同様だ。谷本さんはこう言葉に力を込める。
「アルコール摂取は高血圧や肥満を引き起し、脳卒中や心筋梗塞のリスクを高めます。最近の研究では、少量でもがんリスク上昇など健康に害があるといわれ始めています。節酒ではなく、思い切って禁酒するくらいでもいい」
平日に休肝日を設け、お酒は休みの日だけの楽しみとするのも、残念ながら血管には悪影響のようだ。
「週末に深酒することで心臓に負担がかかり、不整脈の一種である心房細動が起きることを意味する『ホリデーハート症候群』と呼ばれる発作もある。心房細動は脳梗塞と心筋梗塞のリスクファクターになりうるため、休みの日の過度な飲酒は避けましょう」(徳田さん)
意識して水分補給をこまめに
お酒は控えるべきだが、水やお茶などによる水分補給は意識して行うべし。
「血液中の水分量を増やして血液を固まりにくくし、血流をよくするためには、こまめに水分を摂ることが欠かせません。ただしコーヒーには利尿作用があり、体から水分が出ていってしまうのでNG。水や、カフェインを含まない麦茶やルイボスティーがおすすめです」(菊池さん)
特に暑い日は汗をかき、体内の水分が不足して血液がドロドロになりやすい。熱中症対策だけでなく、脳卒中や心筋梗塞の予防のためにも、水分補給を忘れずに。加えて生活の中で「ストレスをためない」ことも、大事な予防策として6位にランクインしている。
「慢性的で過度のメンタルストレスは、高血圧、糖尿病、肥満などをもたらし、血管病のリスクを高めます。一方で笑う頻度が高い人ほど心血管系の病気のリスクが低いという研究もある。ストレスをためず、笑顔でいられる環境に身を置けるように意識してほしい」(医学博士の平柳要さん)
万全の準備で、血管病を退けよう。
※女性セブン2023年8月17・24日号
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