編集長が専門家に直撃!「とろみ剤」の正しい使い方を知って家族みんなで安心しておいしい食事を

とろみ剤の正しい使い方を学ぶ

:とろみをつけるときは、どのくらいの濃度が適切なのでしょうか?

稲山:とろみをつけるときは、嚥下の状態に合わせて、「薄い」「中間」「濃い」の3パターンを目安にします。それぞれ実際に作って体験してみましょう。

 薄いとろみは「飲むヨーグルト」程度、中間のとろみは「ハチミツ」程度、濃いとろみは「ジャム」程度と覚えておくといいと思います。

とろみの濃度3つの目安

・薄いとろみ…飲むヨーグルト フォークの隙間から通って流れる

・中間のとろみ…はちみつ フォークの間に少し残る

・濃いとろみ…ジャム フォークの間から流れ落ちない

藤代:『とろみファイン』の場合、水やお茶など150㎖につき、「薄いとろみ」は1.5g、「中間のとろみ」は3g、「濃いとろみ」は4.5gが、適切なとろみをつけられる目安になっています。個包装タイプは1個1.5gなのでわかりやすいと思います。

使用方法をしっかりチェック

藤代:とろみのつけ方が間違っていることで、むせてしまったり、うまく飲み込めなかったりすることもあります。パッケージに使用方法が記載されていますので、しっかりチェックしていただきたいです。


稲山:そうそう、水分は目分量で、とろみ剤も感覚的に入れてしまう人もいるんですが、これは絶対にやってはいけません。最初にしっかり計測して、いつも使っているコップに対してスプーンで何杯とか決めておくといいと思います。

:分量を量る手間を考えると、使い始めの頃は、1回分の分量が個包装になっているものが便利かもしれませんね。

とろみをつけるメリット・デメリット

:とろみ剤の魅力がわかってきました。是非、積極的に活用していてきたいですが、利用にあたって、気をつけたい点はありますか?

稲山:とろみ剤のメリットは、食事や飲み物を安心して、安全な状態で飲み込める状態にすること。一方でデメリットもあります。

 とろみがつくとどうしても食感が変わってしまうので、おいしいと感じられるかどうか。たとえば今までコーヒー好きだった方が、とろみのついたコーヒーを飲むと違和感を覚えることも。コーヒーなど嗜好性が高いものはとろみをつけずに気を付けて飲むようにするか、口当たりのよいゼリーにするなどもおすすめですね。

:たしかにそうですね。味の変化はないとはいえ、とろみがつくことでのど越しは変わりますよね。そうそう、母は冷たいものをゴクゴク飲みたいとよく言っていました。

稲山:嚥下機能が低下している場合は、ゴクゴク飲むのは心配ですが、とろみをつけた飲料を冷やしてみるとのど越しがよくなるかもしれません。

藤代:とろみ剤は冷たいものにも溶けやすいので、いいかもしれませんね。

稲山:常温よりも冷たいもののほうが、口や喉に刺激を感じて、飲み込みの反応がよくなることもあるんです。

 また、ストローで飲めば少しずつ口の中に入りますので、飲みやすくなることもあります。

夏場の水分補給に「とろみ炭酸」を試してみた!

稲山:とろみ剤の使い方で最近注目されているのが、炭酸飲料なんです。

:えっ!? 炭酸にもとろみをつけられるんですか?

稲山:はい、そうなんです。食感やのど越しも楽しいので試してみましょう!

藤代:炭酸飲料450mlに対して『とろみファイン』を4.5gを入れて溶かしました。味のついていない炭酸水と、甘みのある炭酸飲料で作ってみました。

:見るからに炭酸がシュワシュワしています。キャップを開けると「プシュッ」といい音が!

 これ、しっかり炭酸を感じますね。とろみがついているからなのか、口の中でパチパチ弾けるのを長く感じる気がします。

稲山:まず初めに甘い炭酸飲料にとろみをつけてデザート感覚で飲んでもらえば、とろみに対して「おいしい」という印象をもってもらえるかもしれませんね。

:オレンジ味などの風味や甘みがついているとさらにおいしいですね。いろいろな炭酸飲料で試してみたいです(笑い)。デザートのようなイメージで家族みんなが楽しめそうです。

 とろみ剤を夏休みの自由研究のテーマにしても面白いかも。お孫さんから「これ、おいしいから飲んでみて」と言われたら、とろみが苦手だったおじいちゃんおばあちゃんも、喜んで飲んでくれそうです。

藤代:それ、いいですね(笑い)

稲山:夏場はとくにさっぱりした“とろみ炭酸”はおすすめ。高齢者の方には、昭和の時代から親しんできた甘い炭酸飲料が好きという方も結構多いんですよ。

:好みの炭酸飲料から始めて、とろみに慣れてもらうのはいいアイディアですね。

【まとめ】とろみ剤を活用して嚥下機能の改善の工夫を

:簡単に飲み物にとろみをつけられて、しかも、味が変わらずにおいしいというのが驚きでした。

稲山:とろみ剤を上手に活用して水分や栄養をしっかり摂れるようになれば、体力もアップして、嚥下の状態もよくなるかもしれません。

 入院などで寝たままの状態が続くと、舌や口の周りの筋力が落ちて、嚥下機能も低下してしまいますが、退院して口腔リハビリをしたり、人と喋ったりすることで、口がよく動くようになり、嚥下機能が回復する事例をたくさん見てきました。

藤代:スティックタイプは最初の一歩として使いやすいと思います。個包装だから持ち歩きにも便利なので、手軽に使ってもらえると思います。旅先などでも食事を楽しく安全に味わっていただけると嬉しいですね。

:これまで母に対して家族と同じ食事を摂れなくなったことを「かわいそう」と感じていたんです。とろみ剤を使うことで、家族みんなと同じものが飲めるし、食べられるんだと考え方が変わりました。

 見た目や味を変えないどころか、炭酸飲料はむしろおいしくなったと感じました。安全に楽しく食卓を囲むための魔法のアイテムかも(笑い)。実際に使ってみたら、とろみ剤に対するイメージが一新しました!本日はありがとうございました。

【データ】

キユーピー やさしい献立 とろみファイン

キユーピーとろみファイン

1.5g✕50本(1,037円)、300g(1,599円)、600g(3,068円)

※価格は参考小売価格。

→『キユーピー やさしい献立 とろみファイン』の詳細はこちら!

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撮影/浅野剛 取材・文/山下和恵 イラスト/うえだのぶ

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