「パートナーが重い病気に。この先のことが不安でたまらない」思い悩む女性に毒蝮三太夫が授ける金言|「マムちゃんの毒入り相談室」第45回
人は「生老病死」の四つの苦から逃れることはできない。大切なパートナーが重い病気になって落ち込んでいる53歳の女性。病気への不安はもちろん、金銭的な不安もふくらむ一方で、夜も眠れなくなってしまったという。出口が見つからない袋小路でもがいている相談者に、マムシさんが「パートナーもあなたも幸せだよ」と語りかける。(聞き手・石原壮一郎)
今回のお悩み:「パートナーが重い癌に。金銭的にも不安で夜も眠れない」
春が来たなあ。東京では桜吹雪が舞ってる。春はたくさんの若者が、社会に出ていく季節だ。長いあいだ客員教授をやってる聖徳大学でも、このあいだ卒業生の謝恩会があった。俺も出席して、4月から社会人になる女子学生たちにエールを贈ってきたよ。たいへんなこともあるだろうけど、長い人生、たくましく生きていってほしい。
そう、人生にはいろんなことがある。明るい話ばかりじゃない。今回はパートナーが重い癌になってしまった53歳の女性からの相談だ。
「入籍はしていませんが同居している65歳のパートナーの男性がいます。彼が3ヶ月前にステージ4の癌になりました。パートナーは海外生活が長く、コロナ禍の直前の4年前に日本に帰国し、それから一緒に住んでいます。今は第3クールの抗がん剤治療に入りました。本人は治す気満々なので救われます。ただ、これからのことを考えると、心配症の私はどんどん不安がふくらんで、夜も睡眠導入剤を飲まないと眠れなくなりました。
彼はがん保険など入っておらず、年金も期間が足りず、賃貸マンションなので家賃もかかるし、これから金銭的にどうすればいいのか……。抗がん剤治療をしているパートナーにお金の話をするのも酷だと思い、控えてますが、いい解決方法は見つかりません。私はどうすればいいのか、何をしてあげられるのか、アドバイスいただけないでしょうか」
回答:「ひとりで背負い込まないで、早く誰かにSOSを出してくれ。そして、あなた自身を大切にして欲しい」
これはたいへんだよ。しかも、どんどん思い詰めちゃってる。いちばん大事なのは「ひとりで背負い込まない」ことだ。病気のパートナーの世話にしても親の介護にしても、ひとりで背負えるものじゃない。このままだと自分がつぶれちゃうよ。
早めに誰かに相談しよう。身内でもいいし、役所でもいい。どんどん助けを求めて、手を差し伸べてもらうことが大事だ。それは恥ずかしいことじゃない。SOSを出すことで、まず自分が助かる。自分が助かることで、世話をしているパートナーも助かる。
あえてきつい言い方をすると、あなたがどれだけ悩んで苦しい思いをしたところで、パートナーにとって何の足しにもならない。金銭問題にせよ何にせよ、目の前の問題が解決するわけでもない。頼れる身内がいなかったとしても、日本って国はセーフティネットが意外にしっかりしている。ただ、自分から声を上げないと誰も何もしてくれない。
病気は代わってあげられないけど、利用できそうな制度や支援を調べたり役所なりに相談に行ったりすることはできる。パートナーが重い病気になって、あなたもつらいだろう。それはよくわかる。だけど、このままだと共倒れだ。彼のためにも自分のためにも、前を向いて行動を起こそう。今は治療法も進んでいるから、きっと明るい道はあるよ。
看病も介護も、もちろん相手にやさしく接することは大事だ。同時に、自分にやさしくすることも忘れちゃいけない。自分が健康で元気じゃないと、弱っている人を助けられないからね。自分を守ることが、相手を守ることにもなる。
お金のことは彼だって気になってるだろうから、きっちり話したほうがいいよ。「こういう制度があるから大丈夫」と言えたら、彼もあなたも気持ちが楽になる。お互いに目をそらしたままだと、それこそ不安がどんどん大きくなっていくからね
だけど、あなたのようなパートナーがいて、こんなに心配してくれている。彼は幸せものだよ。そして、支えてあげたい相手がいるあなたも幸せものだ。入籍しているとかしてないとかは関係ない。ひとりで生きていくんじゃなくて、支えたり支えられたりする相手がいる。それはとても幸せなことだ。
パートナーが癌を抱えていて心配と不安でいっぱいなのに、「あなたは幸せだ」と言われても、ピンと来ないかもしれない。人間にとって「死」は、早いか遅いかの違いはあっても、絶対に避けることができない運命だ。もちろん俺だって、彼が治って元気になることを及ばずながら祈っているけど、それでもいつかは彼もあなたもこの世を去る。
そのときに悔いが残らないように、できることを精一杯やって、彼にも自分にも精一杯やさしくしてあげてほしい。ただ、考えてみたら今は健康な人だって、やがては大切な人より先に逝ったり大切な人を見送ったりすることになる。悔いが残らないように毎日を過ごさなきゃいけないのは、誰しも同じなんだよな。
そういうことをきちんと考えられるっていう点でも、あなたは幸せなんだ。ちょっと無理があるかもしれないけど、無理でも何でもいいから「自分は幸せだ」と言い聞かせて、ダメージを受けている自分をねぎらってやってくれ。あなたも彼も、くれぐれもお大事に。
毒蝮さんに、あなたの悩みや困ったこと、相談したいことをお寄せください。
※今後の記事中で、毒蝮さんがご相談にズバリ!アドバイスします。なお、ご相談内容、すべてにお答えすることはできませんことを、予めご了承ください。
毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』内で毎月最終土曜日の10時台に放送中。86歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。2021年暮れには、自らが創作してラジオでも語り続けている童話『こなくてよかったサンタクロース』が、絵本になって発売された(絵・塚本やすし、ニコモ刊)。「マムちゃん寄席」の3年ぶりの開催が決定! 詳細は後日発表。
YouTube「マムちゃんねる【公式】」(https://www.youtube.com/channel/UCGbaeaUO1ve8ldOXX2Ti8DQ)も、毎回多彩なゲストのとのぶっちゃけトークが大好評! 毎月1日、15日に新しい動画を配信中。