聞こえの悪さ”難聴”を放置すると認知症リスクが高まる?早めの対策が肝心【専門医解説】
「最近ちょっと聞こえづらくなった」という人は、加齢による難聴の疑いがあるかもしれない。さらに、最近の研究では、難聴を放置していると認知症のリスクが高まることがわかってきた。専門医にリスクや対策について詳しい話を伺った。
難聴は認知症のリスクを高める
近年の研究により、難聴が認知症のリスクを高めることがわかってきた(下グラフ参照)。神戸市立医療センター中央市民病院の総合聴覚センター長・内藤泰さんはこう解説する。
「私たちは耳から音声情報が入ると、脳の側頭葉が音声を、前頭葉が言語を処理して言葉を認知します。難聴によって音の情報が脳に入ってこなくなると脳の活動が低下し、それが認知機能の低下につながると考えられるのです」(内藤さん・以下同)
下の画像は高齢重度難聴者の安静時の脳の活動状況を糖代謝によって調べたもの。健常対象(41名 平均年齢59.5才)と比べて、左の青色の部分の活動が低下し、右の赤い部分は活動が増加している部分を示している。上下を比較すると、人工内耳(*)によって聴覚を補助した人の方が脳の活動量の低下が抑えられ、前頭葉の活動が高まっていることがわかる。
*人工内耳とは、音を電気信号に変えて聴神経に伝えるために、手術によって植え込む装置。難聴が高度で補聴器では十分な効果が得られない人が対象。
聞こえの悪さを放置するとさまざまなリスクが
さらに、聞こえが悪くなると相手の言っていることが聞き取れずに何度も聞き返し、話の流れを止めたくないとそのままにしていると会話がうまく成り立たなくなる。聞こえないという困惑した場面を自分で作りたくないからとコミュニケーションをとること自体がおっくうになって人づきあいが減り、家に閉じこもりがちになる…。
「コミュニケーションは脳の働きを活発にしますが、その機会が減ると脳が働かず、認知機能の低下につながります。難聴はうつ病を引き起こす原因にもなると考えられています。聞こえが悪い状態をそのままにしておくと、日々進行していきます。
認知症のリスクを高めるのはもちろん、災害警報や緊急車両の音などを聞き逃してしまうなど、身の危険にもつながります。気になる症状があれば早めに耳鼻咽喉科を受診して医師に相談すること。補聴器を使うこともおすすめします」
教えてくれた人
内藤泰さん/神戸市立医療センター中央市民病院の総合聴覚センター長
取材・文/北武司 撮影/矢口和也
※女性セブン2023年3月2・9日号
https://josei7.com/
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