難聴を防ぐ”耳にやさしい”生活3つのルールを医師が指南|補聴器の種類と価格もチェック
「ほとんどの難聴には根本的治療法がありません」と話すのは、耳鼻咽喉科専門医の市村恵一さん。そのため大切なのが予防だ。市村さん曰く、毎日使用しているドライヤーの音も耳には負担だという。日常生活の中でできる対策をご紹介する。
1.日常生活で難聴リスクを減らす
2019年にWHO(世界保健機関)は、3月3日の「国際耳の日」に際して、
「12才から35才の若い世代の半数にあたる約11億人がスマートフォンなどの機器で長時間、大音量の音楽を聴くことによる難聴リスクがある」と、警告。各国政府に、音量基準に沿った規制を要請した。それほど、大きな音にさらされ続けることは、耳へのリスクが大きいのだ。
「大きな音による刺激で耳が酷使されると、聴力は落ちていきます。これを騒音性難聴といい、加齢性難聴の進行を早めるとされているので、日常生活の中で、意識的に耳を休める時間をつくることが大切です」(市村さん・以下同)
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WHOが提示した「安全な音」の目安は、大人で80デシベル(走行中の電車の中くらいの騒音)を1週間で最大40時間程度。コロナ禍の在宅勤務でイヤホンを活用する機会が増えた人も多いようだが、やむを得ず使う場合は、時間を決めたり、何も音を聞かずに耳を休ませる時間をつくることがおすすめだ。
朝は問題なく音が聞こえていたのに、夜になるとなんだか聞き取りにくい場合は、耳が疲れている証拠。休ませるサインだ。聞こえにくいからと、ボリュームを上げるのではなく、むしろ音を消すことが大切だ。
また、耳をいたわるには、家電選びにもこだわってほしいと市村さんは言う。たとえば、ドライヤーは、家電の中でも音が大きいものの1つで、騒音レベルは80~100デシベル。しかし、静音を謳ったドライヤーなら50~70デシベル。特に耳の近くで使用するだけに、風量だけでなく静音かどうかもチェックしたい。
2.難聴予防には食生活にも注意を
「難聴の悪化は、糖尿病や高血圧とも関連しているため、生活習慣病の改善や適度な運動も、耳にやさしい生活につながります。食事面では、ビタミンB12を摂るのがおすすめ。これは耳鳴りの治療にも使われる栄養素で、内耳の血流を正常にし、神経の働きを調整してくれます」
ビタミンB12は魚介類や肉、卵などに多く含まれている。このほか、イライラを解消するビタミンB1もおすすめで、豚肉や大豆、ほうれん草などを摂るといいという。
「難聴は、耳の中の毛細血管が収縮することでも起こるので、血管を収縮させる作用がある喫煙も控えた方がいいでしょう」
3.耳掃除する場合はリラックス程度に
耳の健康を保つ方法の1つに“耳掃除”も考えられるが、医師の立場からはおすすめできないという。
「耳の奥を傷つけることで炎症を起こし、それが難聴を引き起こす可能性があります」
ただし、耳をひっぱる、さするといったマッサージや耳つぼへの刺激は、リラックスにつながり、ストレスによる聞こえの悪さや耳鳴りを和らげる効果が期待できるため、気持ちいい程度であればおすすめだという。
「覚えていてほしいのは、一度失われた聴力が戻るということは基本的にない、ということです。ですから、症状が悪化する前に、これらの耳にやさしい生活に切り替えたり、補聴器を活用することをおすすめしています」
聞こえにくいのに無理に集中して聞こうとするのも、耳の酷使やストレスとなり難聴の症状を悪化させる。目が見えにくくなれば、眼鏡をかける。その気軽さで補聴器も活用してほしいという。
補聴器の種類と気になるお値段
知ってるようで意外と知らないのが補聴器の種類と値段。
まず、補聴器の形状は主に3種類あり、耳にひっかける「耳かけ型」と耳の穴に入れる「耳あな型」、補聴器をポケットに入れ、イヤホンを耳にさすタイプの「ポケット型」だ。
「耳かけ型」は、デザイン性に富み、色の種類も豊富。「耳あな型」は、集音性に優れ、装着しているのがわかりにくいのが特徴だ。「ポケット型」は、手元で音量の操作ができ、ほかと比べると安価かつ故障リスクが小さい。
購入は補聴器専門店などでの対面販売が基本で、価格は片耳で3~50万円程度。耐用期間の目安は5年だが、メンテナンスをすることで多少延びる場合も。
また、身体障害者福祉法の適用となると、指定メーカーの補聴器購入の補助金申請ができる。この適用から外れる軽・中度の難聴でも、自治体によっては購入費用が助成される。医師の診療や治療のための費用として認められれば、医療費控除の対象となり、確定申告も可能に。これら助成制度があることを忘れず、各自治体に相談しよう。
教えてくれた人
市村恵一さん/自治医科大学名誉教授・耳鼻咽喉科専門医
取材・文/簗場久美子
※女性セブン2022年3月17日号
https://josei7.com/
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