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健康

年間30万人以上が発症「脊髄圧迫骨折」通称”いつのまにか骨折”を防ぐ予防策を医師が解説 

  骨粗しょう症による脊髄圧迫骨折、通称「いつのまにか骨折」の患者が年間約30万人以上もいるという。痛みを感じないなども珍しくなく、自覚なく折れている場合も。もしかしたら自分も知らない間に骨折しているかも知れない…。まずは圧迫骨折セルフチェックで当てはまるものがあるか確認してみよう。専門医に骨粗しょう症にならないための予防策も伺ったので、是非参考にして欲しい。

年間約30万人以上に発症「脊椎(せきつい)圧迫骨折」

「背骨は、1回骨折すると2回目を起こしやすい。まさに、一度折れると次々折れる“骨折ドミノ”が起きるのです」

 と話すのは、井尻整形外科院長の井尻慎一郎さん。

「最も厄介なのが、“いつのまにか骨折”のパターン。咳をしただけで折れ、痛みを感じないなども珍しくない」(井尻さん)

 次々に骨折する“骨折ドミノ”の入り口に立っている自覚がないため、リスクを冒しやすくなる。この“いつのまにか骨折”とは、骨粗しょう症により背骨の椎体が潰れる「脊椎(せきつい)圧迫骨折」が多く、年間約30万人以上に発症しているという。

 日本骨粗鬆症学会によれば、国内の患者数は1280万人(2015年)。さらに、男性が300万人しかいないのに対し、女性が980万人と圧倒的に多いのも特徴だ。骨折を繰り返したり、自覚なく折れている場合はこの症状である可能性が高い。

どんな人がなりやすいのか?

 井尻さんによれば、たばこを吸う人、お酒を多く飲む人のほかステロイド系の薬を服用している人、運動不足の人などが骨粗しょう症になりやすいという。

 また、女性で閉経後の高齢者であること、骨密度が低い人ほど骨折を起こしやすい因子となる。過度なダイエットも要注意だ。

 すでに1度目を経験していると、2度目が起きやすい。骨折ドミノを避けるためにも、自分が無自覚の骨折をしているかどうかは知っておきたいところ。そう思ったらすぐにできるセルフチェック法がある。

 近畿大学名誉教授で、骨粗しょう症と骨折予防のための研究をする医学博士の伊木雅之さんが指摘する。

「壁に背中や尻、かかとをつけて真っすぐに立つ。そのときに後頭部が壁につくかどうか。圧迫骨折をしていると背中が曲がってくるので、壁に後頭部がつかなくなる。また、体重が減っているわけでもないのに上着の前がたるむようになった、などの場合も圧迫骨折が疑われます」

脊椎圧迫骨折「セルフチェック」 

 伊木先生の取材をもとに作成された「壁立ちテスト」をチェックしてみよう。

【○】

・後頭部と壁が無理なくつく

・肩と壁が無理なくつく

・腰と壁の間は手のひら1枚分あく

・お尻と壁が無理なくつく

・ひざを伸ばす

・両足をそろえる

・かかとと壁が無理なくつく

【×】

・後頭部がつかない

・肩がつかない

・腰と壁にすき間ができない

・ひざが伸びない

・かかとがつかないこともある

食生活や予防法「毎日納豆を食べる人は発症率が低い」

 知らないうちに骨が折れ、自分で下着もつけられなくなる―なんとも恐ろしい症状だが、どのようにしたら防ぐことができるのだろう。

 前出の伊木さんが話す。

「カルシウム、ビタミンD、ビタミンK、動物性たんぱく質は骨を丈夫にします。まず、カルシウムは牛乳や乳製品、小魚、大豆製品に含まれる。特に大豆は植物性エストロゲンも含み、たんぱく質も豊富。同じ大豆でも納豆はビタミンKを含み、骨形成を促進してくれるのでさらにいい。

 毎日納豆を食べている人は食べていない人より骨折の発生率が低いことも判明しています。ビタミンDはカルシウムの吸収を促進し、カルシウムを骨まで運ぶ働きがある。魚、きのこなどに豊富なほか、日光を浴びることで体内でビタミンDが形成されるので日焼け止めの使いすぎは禁物です。

 魚はうなぎ、鮭など脂が多い魚種がいい。加熱しても失われないので、加熱調理もOK。ビタミンKは緑黄色野菜に豊富に含まれる。動物性たんぱく質は骨を作るための材料なので、積極的に食べてほしいですね」

運動で予防も「少し早歩きとかかと落とし」

 栄養を摂ったら、運動も重要だと伊木さんが言う。

「圧力や衝撃がかかると骨は強くなる。健全な骨を維持するうえで運動は非常に重要です。とはいっても難しいことをする必要はない。例えばウオーキング。歩くことで骨に衝撃がかかるため骨を強くする効果が期待できます。できれば少し早歩きをするといいでしょう」

 それが難しいようなら、下半身の筋肉の強化から始めるのも手だ。

「スクワットや片足でのバランス立ちがおすすめ。そのほか、椅子やテーブルに手を置いて支えながらつま先立ちをし、10秒ほど維持した後、かかとをストンと落とす運動も効果的。つま先立ちをすると、ふくらはぎの筋肉の強化になり、かかとを落とすことで骨に衝撃が走るので骨が強くなります」(伊木さん)
 
 また、重症化を防ぐためには、何より2回目以降の骨折を起こさないようにすることだ。

「もし1度骨折したら、骨粗しょう症の治療をすることです。医師と相談して服薬治療を始めましょう」(井尻さん)

 骨折を起こさないためにも予防は重要。いますぐ始めよう。

教えてくれた人

井尻慎一郎さん/井尻整形外科・院長 伊木雅之さん/近畿大学名誉教授・医学博士

イラスト/勝山英幸

※女性セブン2023年2月16日号
https://josei7.com/

●毎日1分「骨たたき」で体が変わる! 女性に多い骨粗しょう症を予防【医師監修】

●70才で骨折する人と80才で走れる人の違いは?86才現役マラソンランナーに学ぶ健脚の作り方

●高齢者の転倒が危険|樹木希林さんも…大腿骨骨折や寝たきりを防ぐリハビリとは【動画あり】

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