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健康

「お尻」は健康のバロメーター!ヒップアップがもたらす4つの効果を専門家が解説

 自分では、なかなか見ることができない(見たくない)お尻。それゆえ、たれたことにも気づきづらいが、たれたお尻は老けて見えるだけではなく、健康にも大きな影響を及ぼすという。お尻がたれることで起こるリスクと、お尻がもたらす健康効果について、専門家に解説してもらった。

お尻を制するもの健康を制す

 コロナ禍で座る機会が多くなり、お尻に負担がかかっている人が増加。そんな中、いつまでも若くてきれいな人は、きちんとお尻に意識を向けていた!?

「加齢によるお尻の形の変化には、ある一定の法則があるんです」

 そう言うのは、ワコールPRの高橋優果さん。「ヒップラインがキュッと上がっている状態をステップ0とすると、その状態から、ステップ1はたわむ、ステップ2は下がる、ステップ3はそげる・内側にお尻のお肉が流れる、といった段階を経て変化していきます」(高橋さん・以下同)

加齢によるヒップの変化ステップ

ステップ0 横から見て、半円形でたれていない。

ステップ1 ヒップ下部がたわむ。

ステップ2 ウエスト周辺のメリハリがなくなり、四角い形になる。ヒップの頂点が下がる。

ステップ3 股関節付近がそげて、ヒップが内側に流れる。

年齢別お尻の状態

年代|ステップ0|ステップ1|ステップ2|ステップ3|

20代|54%|36%|10%

30代|27%|49%|20%|4%

40代|5%|39%|47%|9%

50代|20%|50%|30%

出典:ワコール人間科学研究開発センター

変化のスピードはお尻の筋肉の状態で決まる

 加齢とともに脂肪がつくことでこのように変化すると思いがちだが、それ以外にも大きな原因がある。

「お尻は、筋肉と脂肪の間にある筋膜、結合組織が支えています。筋肉の衰えや加齢により、筋膜が薄くなり、結合組織の結合力が弱くなると、お尻の脂肪を支えきれなくなり、お尻全体がずり下がって、変形します。この状態になると、小走りをしただけでもお尻全体が大きく揺れるようになり、さらにゆるみやたれ具合が加速する可能性もあります」

 20代はステップ0の割合が半数以上を占めるが、50代以上になるとステップ0の割合はほぼ0%になり、80%以上の人が、ステップ2からステップ3へ変化していくという。

「加齢によって変化する順序はみな同じですが、そのスピードには個人差があります。40代でもステップ0の人や、50代でステップ1をキープしている人も少なからずいます」

 変化のスピードはお尻の筋肉の状態で決まる。

「若いときの体形を維持している人は、筋肉もほどよくついており、脂肪が少ない。彼女たちの生活習慣の特徴としては、バランスのよい食事をしている、運動習慣がある、そして、自分の体に合う下着を着用していることがわかっています」

お尻がたれると運動不足でさらに加速!? 転倒、認知症のリスクも

 お尻の形が変化し、たれてくると老けた印象を与えるが、弊害はそれだけではない。

「お尻まわりが弱まり、たれることで、健康リスクが高まります」と言うのは、理学療法士の早川祐平さんだ。

「人間は骨盤で体を支えることで、バランスよく立つことができ、歩くこともできます。この骨盤を支えているのがお尻まわりの筋肉です。ここが弱まると上半身がうまく支えられなくなるため、肩が丸まり、猫背になります。また、筋肉が衰えるとそのまわりの関節も動きにくくなります。特にお尻の近くにある股関節の動きが硬くなると、うまく歩くことができなくなり、転倒のリスクも高くなるのです」(早川さん・以下同)

 この状態のまま高齢者になり転倒すれば、骨折する可能性が高くなり、そのまま寝たきりになるおそれもある。

「お尻の神経と脳はつながっているため、お尻がうまく機能していないと、脳はそれをキャッチし、不具合とみなして痛みやこりを引き起こします。それが肩こりや腰痛、冷え症にもつながっていくのです。お尻の筋肉は体の中でいちばん大きいので、ここが冷えると体全体も冷えてしまう。すると血流が悪くなり、さらに不調を引き起こすことにつながります。脳の血流にも悪影響を及ぼして、認知症の要因になることもあるのです」

 それを防ぐためには、体を動かし、お尻まわりの筋肉を整えることが必要だ。

「筋肉はいくつになっても鍛えることができます。お尻全体に筋肉がつき、正しく機能するようになると、肩こりや腰痛、ひざの痛みが解消され、ダイエット効果にもつながります。さらに、血流がよくなったことで、以前に比べて物忘れが改善されたという声もあるほどです」

お尻がもたらす4つの健康効果

【1】認知症予防にも

お尻が整い、血流がよくなると脳への刺激が活発になる。

「体全体が正しく動くようになるため脳も正常に働くようになり、物忘れ防止になるといわれています。実際、私がこれまで診てきた高齢者施設の患者さんのリハビリでも、お尻の筋肉を柔らかくすることで、人の名前が思い出しやすくなった人がいるほどです」(早川さん・以下同)。

【2】ダイエット効果アップ

お尻が引き締まっているとボディーラインも美しく見えるが、それ以外にもうれしい効果がある。

「血流がよくなると代謝も上がり、脂肪燃焼にもつながります。また、お尻の筋肉と筋膜が整い、骨盤が正常な位置にくると、内臓もそれぞれ正しい位置に収まるため、ぽっこりお腹も解消されます」。

【3】肩こり・腰痛が軽減

 肩こりや腰痛を改善するためには、姿勢を正すこと。

「体を支えるお尻の筋肉を動かして鍛えると骨盤の位置が安定し、正しい姿勢になります。これで肩や腰まわりの筋肉がうまく使われるようになり、こりや痛みが軽減されます」。

【4】冷え症改善

 お尻には、体の中でいちばん大きな筋肉があり、ここが冷えると血流が悪くなる。

「太ももの付け根である鼠径部(そけいぶ)には動脈、静脈、リンパ管などがあり、お尻の血流がよくなると体全体に血液が行き渡るようになり、冷え症も改善されます」。

教えてくれた人

早川祐平さん/理学療法士、心寄整体院院長。著書に『肩こり、ひざの痛みはお尻ぐるぐるで消える!』(主婦の友社)がある。

ワコール/下着を中心とした衣料メーカー。ワコール人間科学研究開発センターでは1964年の設立以来、人体計測を続けている。

取材・文/廉屋友美乃 イラスト/鈴木みゆき 写真/PIXTA

※女性セブン2022年11月10・17日号
https://josei7.com/

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