7月から節電要請スタート 夏の節電対策の注意ポイントと電気代節約メソッド7選
政府が7月1日から節電要請を発令。経済産業省は、数値目標は定めず「終日無理のない範囲で」節電を呼び掛けている。電気料金の値上げもじわじわと続いており、猛暑の中、どう節電してくべきなのか――。節約・家事アドバイザーの矢野きくのさんに節電対策を教えてもらった。
7月から発令した夏の節電要請
例年になく早い梅雨明け、それとともにやってきた連日の酷暑。7月1日から3か月間は、7年ぶりに政府から全国的に節電要請が出され、それに対して構えていたところ、東京電力管内では6月27日から30日までの4日間「電力需給ひっ迫注意報」が発令されるという事態になりました。
節電というと、使っていない家電のコンセントを抜くとか、エアコンを使わない、もしくは設定温度を上げるということに意識がいく人が多くいます。
とくに高齢の方の場合、「政府の要請」となると、全力で受け止めて節電をされ、エアコンを使わない等で熱中症になってしまう危険も考えられます。
今回は、この夏の節電要請とは何なのか。それに対して私たちは何をすればいいのか。高齢の方は何に気をつければいいのかをご紹介します。
節電要請に対する節電は時間帯を意識して
7月1日から3か月の政府からの節電要請※、その間にもしかすると発令されるかもしれない「電力需給ひっ迫注意報」や「電力需給ひっ迫警報」は、電力の需要に対して供給が足らなくなるという事態を回避するためのものです。
そのため、需給バランスが崩れそうになる時間帯というのはある程度予測されており、その時間帯に消費する電力を減らせばいいのです。消費電力の高い家電はその時間を避けて使うようにすればよいことで、何がなんでも1日中節電しなければいけないというものではありません。
※参考/経済産業省 資源エネルギー庁「夏季の省エネ・節電にご協力ください」より。
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/shoene_setsuden/
節電要請とは?
節電をお願いしたい期間:7月1日(金)から9月30日(金)まで
終日、無理のない範囲で、節電へのご協力をお願いいたします。(数値目標は設けない)
※太陽光発電の出力が減少し、電力需給が厳しくなる傾向にある点灯帯(17:00-20:00頃)には特に節電へのご協力をお願いいたします。
※緊急時には、政府が発信する情報も踏まえながらより一層の節電へのご協力をお願いいたします。
消費電力の高い家電は17:00-20:00の使用を避ける
消費電力の高い家電とは、湯沸かしポットや、炊飯器、電子レンジ、ホットプレート、アイロン、ドライヤー、コードがついた掃除機、洗濯乾燥機などです。これらの家電を供給電力に余裕がある時間帯に使うようにすれば問題ありません。
一例ですが、夕飯のための炊飯をしたいとき、電力に余裕がある時間帯に炊いておき、数時間だけ保温機能を使っておくとか、炊飯が完了したら一度停止させ、食べる直前に電子レンジで加熱するという方法でも節電になります。
前述の消費電力が大きい家電の中に電子レンジを入れていますが、炊飯器で数十分かけて炊飯するよりも、2~3分で再加熱するほうが消費電力は少なくなるのです。
このように、政府の節電要請に対する節電に関しては、時間帯と使うアイテムを変えることで対応することができます。
電気代の値上げ続く 前年比3割増!
政府の節電要請に対する節電は時間帯を意識して家電を使えば良いと前述しましたが、6月に発表された8月の東京電力管内の電気代は、一般的な世帯で7月比は約250円高い9120円前後。12か月連続で値上がりしていて、前年比で約3割増加しています。シニアに限らずですが、家計を考えると電気代の節約は意識したいところです。
節電・節約のための家電活用メソッド7選
まずは消費電力の大きな家電の節電を心がけること。そして、消費電力はさほど大きくないけれど、日々の使い方を変えることで継続して節電できる体質に変えていくようにすることが大切です。
毎日24時間1年365日働き続けている冷蔵庫。年間で平均すると家庭で一番電力を消費しているのが、冷蔵庫。その分、正しい使い方をすれば節電効果が大きいのも冷蔵庫です。まずは、冷蔵庫の節電方法から見ていきましょう。
1.冷蔵庫は適切な温度設定にする
冷蔵庫を冷やしすぎると無駄に電力を消費してしまいます。できれば冷蔵庫用に温度計を1つ用意し、常に庫内の温度を確認するようにするといいでしょう。
冷蔵庫の庫内別の適切な温度の目安は以下のとおりです。
・冷蔵室:2℃~5℃
・野菜室:3℃~7℃
・チルド室:0℃
・冷凍室:-20℃~-18℃
2.冷蔵庫の扉を開ける回数を少なく、開ける時間を短くする
冷蔵庫は扉を開けて、中の冷気が逃げて温かい空気が入ってしまうと、それを冷やすために電力を消費します。そのため、開ける回数を少なく、時間を短くするのが節電ポイント。
冷蔵庫の中を整理しておき、扉を開ける前にどこになにがあるか分かるような状態にしておきましょう。同じ用途のものをグループ分けして、1つのカゴに入れておくのもおすすめです。カゴでサッと取り出し、カゴで戻すようにすれば開けている時間も短くなります。
3.冷蔵室は空間に余裕を持って収納を
冷蔵室は冷気が周りやすいほうが節電になるため、庫内に物を詰め込みすぎると無駄な電力を消費してしまいます。空間の余裕を持って物を入れるようにしましょう。
4.冷凍室はギュウギュウのほうが効率よく冷える
一方、冷凍室はキツキツに入れておくと食材同士が保冷剤の役割をして、冷えやすいため、庫内にいっぱいに入れておくようにします。冷凍室に入れておくのは食材だけでなく、保冷剤や冷凍用のペットボトルに水を入れたものを常に冷凍しておくのもおすすめです。
夏から秋はとくに落雷や台風などで停電になりやすい季節。万が一、停電になった場合でも冷凍室に保冷剤など入れて半日程度開けないでおけば庫内の温度はさほど上がらずに保つことができます。
また、真夏に停電になってしまった場合、心配なのがエアコンを使えないために起こる熱中症です。体温が上がってしまったときなどには、保冷剤があれば、タオルなどを巻いて低温やけどに注意しながら、体に当てるなどして対処することもできるでしょう。
5.その日の飲み物は水筒に入れて室内においておく
シニアの方はとくに熱中症にならないためにも水分補給が大切です。前述の通り冷蔵庫の開ける回数を減らすためにも、飲み物は1日分を水筒に入れてテーブルの上などにおいておくのが理想的です。
手に届くところに置いておくことで、「飲まなきゃ」という気持ちにもなりやすく、水筒の中身が減っていないと「水分が足りていない」と目で見て分かるようになるので、シニアの方の場合はとくに水筒をおすすめします。
6.保温電気ポットはコンセントを抜く
お湯を沸かして保温することができる電気ポットは、保温時間にも電力を消費し続けます。お湯を沸かしたあとは、保温性の高いステンレス製の水筒にお湯を移し替えて、電気ポットのコンセントを抜いておくと節電になります。
ただし近年、電気ポットの使用時に、離れて暮らす家族に通知するという機能がついたものもありますので、その場合は電気ポットのコンセントは抜かないようにご注意くださいね。
7.掃除機の使い方を工夫する
掃除機の電気代を節約するには、まず使う時間を短くすることを考えます。そのために必要なのは、部屋が片付いていること。散らかった部屋で荷物の間をぬうように掃除機をかけていくと電気代がかかってしまいます。
また、毎回掃除機でなくても、そのうちの数回はほうきやフローリングワイパーなど、電気を使わない掃除道具に換えるのもおすすめです。
節電要請とはいえ、無理せず、知恵と工夫で節約も楽しんでみてはいかがでしょうか。
執筆
家事・節約アドバイザー・矢野きくのさん
家事の効率化、家庭の省エネを中心にテレビ・講演・連載などで活動。NHK『ごごナマ』準レギュラー他テレビ出演多数。新聞での連載のほか自動車メーカー、家電メーカーなどの企業サイトでコラムの執筆経験も。近年は中高年層の家事アドバイスや家庭でできるSDGsについての講演、SNSでの情報発信でも活動している。著書『シンプルライフの節約リスト』、『「節電女子」の野菜レシピ!』など。https://yanokikuno.jp/
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