兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第154回 またもやキッチンオシ事件】
若年性認知症の兄と暮らすライターのツガエマナミコさんが、2人の日常を綴る連載エッセイ。進行している兄の症状。中でもマナミコさんを悩ませているのは排泄のトラブルで、トイレではないところで用を足してしまうこと。前回は、大きい方の話でしたが、今回は“お尿さま”、それもキッチンで…。マナミコさんが怒り、落胆する気持ちを正直に明かします。
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「忘れる能力」が羨ましい
また兄にやられてしまいました。
一瞬の隙をついてのキッチンオシ(キッチンでオシッコ)。不確かなものを含めると、これで通算5回目だと思います。キッチンの流し台でお尿さまをするという暴挙は、どんな慈悲深い菩薩さまでもお許しになりますまい。何が何でも阻止しなければわたくしの精神は崩壊してしまいます。
でも言葉でどう言っても「記憶力ゼロ」の前には歯が立ちません。やろうとする兄に対して、させない工夫が必要なのです。
ということで、わたくしは少しの間でも流し台を離れるときは、大小複数の障害物を並べて、キッチンオシできないようにしてまいりました。少なくともここ1か月はこまめに頑張っておりましたのに、今朝、キッチンでお花の水を換えてからうっかりそのまま掃除機をかけはじめてしまったのです。がら空きのゴール、いや、無防備な流し台を兄は決して見