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猛暑に克つ!最強の肉ランキング|夏バテ予防に鶏胸肉 疲労解消に豚ヒレ【専門家回答】

 せっかく自由に外出できるような日常がやって来たのに、ステイホームでなまった体が酷暑に堪えられず、結局家にこもってしまう…。そんなあなたに、心身ともにパワーチャージしてくれる肉のランキングを送ります。体に元気をくれるのは鶏胸肉か牛ヒレか──夏に向けて心身ともに強い体を作ろう!

 新型コロナの感染爆発が落ち着いてステイホームから少しずつ元の生活に戻りつつあり、心も体も元気を取り戻せるはずが、かえって不調を感じる人は少なくない。

 秋葉原駅クリニックの内科医・佐々木欧さんが言う。

「コロナ禍での家ごもり生活で足腰が弱っていることに加え、食生活の乱れや食欲の減退が原因でたんぱく質の摂取量が減り、体の不調を訴える人が増えています。特に肉や魚は足腰を支える強い筋肉のもととなる良質なたんぱく質を多く含むうえ、含有する脂やアミノ酸にメンタルの不調を整える効果もある。心身の健康のためには、肉と魚からしっかりエネルギーを得ることが肝要です」

 体への影響はもちろん、近年さまざまな研究によって肉や魚とメンタルの相関関係が明らかになってきている。オーストラリアに住む9113人の女性を対象に実施された研究では、「自傷する人の割合は日常的に肉を食べない人の方が3倍高い」との結果が示され、アメリカで行われた4746人の青少年を対象にした研究でも、「自殺をはかった人の割合は菜食主義者の方が2倍以上も高い」という結果が発表されている。

 種類や部位など肉も魚も、そのラインアップは多岐にわたる。何をどう食べるべきなのか。

最強の肉ランキング1~12位|総合力の鶏、疲労回復の豚、幸せホルモンの牛…

 以下、20人の「食と健康の専門家」に「心身を元気にする肉」をそれぞれ挙げてもらい、1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として集計。5点以上を獲得した食品を掲載した。

専門家のみなさん

石原新菜さん(イシハラクリニック副院長)、磯村優貴恵さん(管理栄養士)、長田絢さん(料理研究家)、近藤千種さん(ちくさ病院医師)、佐々木欧さん(内科医)、佐野こころさん(医学博士)、柴亜伊子さん(皮膚科医)、清水加奈子さん(管理栄養士)、髙橋怜奈さん(東邦大学医療センター大橋病院医師)、田中亜希子さん(あきこクリニック院長)、田中裕幸さん(ニコークリニック名誉院長)、田中優子さん(田中病院院長)、中沢るみさん(管理栄養士)、浜本千恵さん(管理栄養士)、平柳要さん(医学博士)、藤岡智子さん(フードライター/栄養士)、堀知佐子さん(管理栄養士)、松田リエさん(保健師/ダイエットコーチ)、望月理恵子さん(健康検定協会/管理栄養士)、渡辺信幸さん(こくらクリニック院長)

《順位(点数)/肉の種類/コメント》

12位(5点):鶏皮

「脳内で作られる“幸せホルモン”のもとになる動物性脂肪のアラキドン酸を多く含有。精神の安定に加え、鶏の良質な脂には肌ツヤを上げる効果も」(渡辺さん)

12位(5点):砂ぎも

「そしゃく回数を増やすことで脳内のセロトニン分泌が増える。砂ぎもは噛み応えがバッチリ。少量でも満腹になるのも推奨ポイント」(渡辺さん)

12位(5点):牛もも

「鉄や亜鉛といったミネラルをバランスよく配合しているのが魅力。おすすめメニューはローストビーフ。作り置きしてサンドイッチやパスタの具として用いるのもいい」(磯村さん)

11位(6点):豚ロース

「キメが細かく、柔らかい人気の部位。ビタミンB1が100gで約0.8mgとたっぷり含まれているのもうれしい」(佐野さん)、「“幸せホルモン”のセロトニンに変化する成分であるトリプトファンが豊富。朝に摂取すれば日中、脳内でセロトニンが生成され、一日快適に過ごすことができる」(望月さん)

10位(7点):鶏もも肉

「鉄分やビタミンB群、『ビタミンE』など多岐にわたる栄養素が含まれており、それぞれ貧血予防、疲労回復効果、老化予防効果が期待できる。皮の部分に豊富なコラーゲンは肌や骨、関節の健康維持に役立つ」(佐々木さん)、「旨み成分の『グルタミン酸』や『イノシン酸』が豊富。食欲低下しがちな梅雨の時期におすすめ」(渡辺さん)

9位(11点):豚レバー

「ビタミンB群の一種で、ストレスに対抗する副腎皮質ホルモンの分泌を補助する『パントテン酸』が豊富。気圧の変動などでストレスがたまっている人こそ積極的に摂ってほしい」(中沢さん)、「貧血を予防・改善する『ヘム鉄』含有量がトップクラス。『ビタミンC』によって吸収率が上がるため、パプリカやブロッコリーを合わせるのがおすすめ」(長田さん)

8位(12点):豚もも

「豊富な『ナイアシン』が血管を拡張し、高血圧予防に」(田中亜希子さん)、「疲労回復効果のあるビタミンB1がたっぷり。吸収率を高めるねぎ類と一緒にどうぞ」(堀さん)

6位(13点):牛ヒレ

「必須脂肪酸の1つであり、脳内で幸福感や高揚感を生み出す『アナンダマイド』と呼ばれる神経伝達物質に変化する『アラキドン酸』が豊富」(石原さん)、「鉄分やビタミンB群などをバランスよく含有し、貧血予防や疲労回復、皮膚や粘膜の健康維持など幅広い効果が期待できる」(佐々木さん)

6位(13点):鶏レバー

「粘膜を保護し、眼精疲労の改善作用や美肌効果がある『ビタミンA』を豊富に含有。強い抗酸化作用も持つため、紫外線が強いこの時期には必須の食品」(石原さん)、「鉄分が豊富で、貧血予防に効果的。鶏レバーは牛や豚に比べて食べやすいあっさりした風味であることも推奨ポイント」(藤岡さん)

5位(14点):鶏ささ身

ざるに乗せた鶏ささ身

「高たんぱくで低脂肪。アミノ酸の一種で血管拡張効果のある『ナイアシン』が豊富で、気圧の変動などによる片頭痛や精神の落ち込みに効果が」(中沢さん)、「低カロリーでダイエット中にはうってつけの部位。豊富に含有するイミダゾールジペプチドは肉体的な疲労に特に効果を発揮するため、運動後に積極的に食べてほしい」(石原さん)、「睡眠の質を上げる“幸せホルモン”である『セロトニン』の原料となる『トリプトファン』を豊富に含有。夕食に食べるのもおすすめ」(田中亜希子さん)

4位(18点):馬肉

「疲労回復効果や集中力を向上させる『グリコーゲン』が牛肉の3倍、豚肉の5倍含まれている」(近藤さん)、「生食が可能なため、良質な脂やたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの成分を取りこぼすことなく摂取できる。さっぱりとした口当たりもおすすめポイント」(柴さん)、「鉄分量が肉類のなかでも群を抜いて高く、顔の血色の改善をはじめとして体の内外に働きかけてくれる」(磯村さん)

3位(26点):羊肉

「高い脂肪燃焼効果を持つ『L-カルニチン』が豊富」(髙橋さん)、「特におすすめは生後1年以上経った羊肉の『マトン』。L-カルニチン含有量がラムの2.6倍に」(平柳さん)、「質のよいたんぱく質を含みながら、コレステロール値が低い。食欲を抑える効果を持つアミノ酸『フェニルアラニン』も多く含有し、ダイエットにおすすめ」(田中優子さん)

2位(45点):豚ヒレ

「この時期特有のだるさや疲労感を解消するには、『ビタミンB1』が豊富な豚肉の赤身がおすすめ。吸収を促進するために、玉ねぎやにんにくなど香味成分『アリシン』を含有する野菜と一緒にどうぞ」(浜本さん)、「ビタミンB1の含有量は、牛肉や鶏肉に比べて5~10倍。体内の脂肪をエネルギーに変換させる際に必要な『カルニチン』も多く含まれる」(松田さん)、「ビタミンB1は糖質やアルコールの代謝にも必要なビタミン。お酒を飲みすぎた後や炭水化物をたっぷり摂った日は積極的に食べるべし」(石原さん)、「動脈硬化などを促す『リノール酸』や『オレイン酸』が少ない良質なたんぱく源」(田中裕幸さん)

1位(48点):鶏胸肉

たんぱく質の代謝をサポートする『ビタミンB6』を多く含むうえ、渡り鳥の持久力の源とされる『イミダゾールジペプチド』も豊富に含有。抗酸化作用や疲労回復効果が期待できる。夏バテ予防にもぴったり」(近藤さん)、「イミダゾールジペプチドには認知症予防効果も」(堀さん)、「イミダゾールジペプチドは水溶性のため、スープやホイル蒸し、レンジ調理などがおすすめ」(望月さん)、「肝機能を強化し、肝臓についた脂肪を燃焼させる効果を持つ『メチオニン』もたっぷり」(松田さん)、「イミダゾールジペプチドは継続的に摂ることで効果が高まる。日常的に食卓へ。ただし、加熱しすぎるとたんぱく質が変容して体に悪影響になる場合もあるため、要注意」(清水さん)

 スタミナをつけるために必須な肉類のなかでも、「いまこそ食べるべき」とこくらクリニック院長の渡辺信幸さんが強く推すのが鶏肉だ。

「鶏の脂が体にもたらすエネルギーは、炭水化物の約2倍といわれているうえ、糖質はほとんど含まれておらず体脂肪になりにくい。旨み成分の『グルタミン酸』もたっぷりで、食欲増進にも役立ちます」

 実際に鶏肉はさまざまな部位がランクインしており、1位を獲得した「鶏胸肉」は、その“バランスのよさ”に票が集まった。保健師の松田リエさんが解説する。

「高たんぱく低脂質なうえ、たんぱく質の代謝に欠かせない『ビタミンB6』が豊富。代謝を上げて疲労回復を促す『イミダゾールジペプチド』と呼ばれる成分も多く含みます。値段もお手頃で、日常遣いしやすいのも推奨ポイントです」(松田さん)

 管理栄養士の中沢るみさんは、梅雨時の不調改善効果を理由に「ささ身」に一票を投じた。

「胸肉同様、高たんぱく低脂質であることに加え、ビタミンB群の一種で血管拡張効果のある『ナイアシン』が多く含まれており、梅雨時に増える片頭痛や精神的な落ち込み、倦怠感を和らげる働きが期待できます」(中沢さん)

 ジューシーな食感で適度な脂肪を含む「鶏もも肉」も10位にランクイン。

「『脂肪が多いから』と敬遠する人もいますが、もも肉の脂は血中コレステロールを抑え、血栓予防効果のある良質な『不飽和脂肪酸』です。ほかの部位に比べて鉄分が多いことも推奨する理由の1つです。おすすめの食べ方はもも肉のジューシーさをめいっぱい堪能できる唐揚げ。レモンをかけると、果汁に含まれる『エリオシトリン』が脂肪吸収を抑えてくれるため、カロリーが気になる人はセットでどうぞ」(あきこクリニック院長・田中亜希子さん)

 鶏肉はほかにも、鶏レバーや砂ぎも、鶏皮など多彩な部位が複数ランクインしているところからもその人気ぶりがうかがえる。日替わりでバランスよく食卓にのせてほしい。

覚えておきたい肉の部位と名称

●鶏…牛や豚と比べ、脂が少なくあっさりした風味を持つ鶏肉。とりわけささ身は最も高たんぱくで脂肪が少ない部位。反対に手羽は脂肪やゼラチンを多く含む。

●牛…“幸せホルモン”のもとを多く含む牛肉。ランクによって分けられているが、必ずしも高価なものが健康効果が高いわけではないことを覚えておきたい。

●豚…肉質が柔らかいのが豚肉の特徴。ロースは脂質が多いため摂りすぎに注意したい。

牛肉から「幸せホルモン」が

 鶏肉に次いで専門家たちから多くの支持を得たのは豚肉。なかでも「豚ヒレ」は鶏胸肉とわずか3ポイント差で2位につけた。一票を投じた管理栄養士の望月理恵子さんがその理由を解説する。

「強い疲労回復効果を持つ『ビタミンB1』の含有量がダントツに多い。その量は鶏肉や牛肉などほかの肉類と比べて5~10倍といわれています。ただしビタミンB1は水溶性のため、スープに入れるなど、溶け出した分もしっかり摂れるような方法で調理するのがおすすめ。玉ねぎやにんにく、にらなど香味成分の『アリシン』が多い食品と一緒に調理すると、吸収率がより高まります」(望月さん)

 料理研究家の長田絢さんは「特に女性は積極的に食べるべし」と「豚レバー」を推奨する。

「鉄分が不足して慢性的な貧血状態に陥ることで倦怠感を感じる女性は非常に多い。豚レバーは『ヘム鉄』の含有量がトップクラスです。『ビタミンC』と一緒に摂ることで鉄分の吸収率が上がるため、パプリカやブロッコリーなど緑黄色野菜を合わせるとさらに効果的です」(長田さん)

 得票数では鶏肉と豚肉に及ばなかったものの、牛肉も「ヒレ」と「もも」がランクイン。

「牛肉は必須脂肪酸の『アラキドン酸』が豊富です。アラキドン酸は摂取すると脳内で『アナンダマイド』と呼ばれる神経伝達物質に変化しますが、この物質には脳の快感中枢を刺激する働きがあり、『至福の物質』と呼ばれるほどの幸福感をもたらしてくれます」(田中病院院長の田中優子さん)

 牛肉を食べて幸せを感じるのは、ただ「ぜいたくをした」という快感からだけではないようだ。

 鶏・豚・牛の“王道”がランキングの大半を占める中で健闘が光ったのが3位の「羊肉」と4位の「馬肉」だ。

「羊肉が含有するたんぱく質の量は牛肉よりも多く、亜鉛や鉄分などのミネラルも豊富です。特に亜鉛は、病気や老化を防ぎ、免疫力を上げる抗酸化酵素のもとになる大切なもの。さらに『L-カルニチン』と呼ばれる羊肉独自のアミノ酸には体を温める作用もあるため、冷房による“夏冷え”に悩む人にもおすすめです」(管理栄養士の堀知佐子さん)

 馬肉を真っ先に挙げた管理栄養士の磯村優貴恵さんはその利点をこう説明する。

「羊肉同様、馬肉にはたんぱく質や亜鉛、鉄分がたっぷり。特に鉄分量は肉類のなかでも群を抜いて高く、顔の血色の改善をはじめとして体の内外に働きかけてくれます。馬肉は冷凍で販売されていることが多いため、半解凍の状態のうちに包丁で切っておくことで食べる頃にはちょうどいい温度になります」(磯村さん)

 しょうがやにんにく、ねぎなど体を温める薬味を添えて一緒に食べれば冷えに悩む心配もない。肉が持つたんぱく質とスタミナでこれからの時期を乗り切っていこう。

※女性セブン2022年7月7・14日号
https://josei7.com/

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