猫が母になつきません 第294話「えらぶ」
今は図書館も閉館中。ときどき母のためにネットで本を買うようになりました。本を選んでいると高齢者の方が書かれた本が気になり、いつしか選ぶ基準が「母より歳上の人が書いた本」に。さすが高齢化社会、そんなのいくらでも見つかるのです。母は認知症が進んできてさっきのことも忘れてしまうようになってからよく「歳はとりたくないわね」と言うようになりました。私が「80歳すぎたらそんなの普通だよ」と言っても、そんな言葉は母に響きません。母の不安、イライラ、被害妄想…実際私には理屈では理解できても実感はできないですし。それで「先輩」の言葉やライフスタイルに触れれば、答えではなくてもヒントくらいは見つかるのではないかと思いました。読み物だけでなく写真の多い本も混ぜて渡すと、母はとっかえひっかえ繰り返し本をめくっています。最近はポストに届いた本の封を開ける前から「なに?なに?」と食いつきがすごい。このごろあまりしなくなった針仕事の本も買ってみようかな。本を探していると「人生100年」という言葉をたくさん目にします。リアルに100年生きることを考える時代が来ている。100歳までの時間をどう過ごすかを考えると、母より自分のことが心配になってきました(ノ_・。)
●母に買った本の一部です。(Amazonリンクは編集部が挿入)
・九十歳。何がめでたい (小学館文庫)佐藤愛子
・一〇三歳になってわかったこと 人生は一人でも面白い (幻冬舎文庫) 篠田桃紅
・桃紅一〇五歳 好きなものと生きる(世界文化社)篠田桃紅
・100歳の精神科医が見つけた こころの匙加減(飛鳥新社)髙橋幸枝
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。