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【桐島洋子さんインタビュー】迷える50代へのメッセージ

 50代を迎え、ふと、これからの生き方をどうしようかと考えることはありませんか? 

 波乱万丈の人生を力強く生きてきた60才以上の先輩に、迷える50代を過ごす上で知っておきたいことをアドバイスしてもらいました。

50代とは「自由になる年代」である

 幼児期を上海で過ごして、終戦直後に帰国。ルポライターとして世界を巡遊し、海外で出会ったアメリカ人と恋に落ちて未婚のまま出産。シングルマザーとして、長女かれんさん、次女ノエルさん、長男ローランドさんを育て上げた。

「50代は、やっと自由になった嬉しい年代でした。子供たちは巣立ったし、経済的にゆとりもできた。大人の自由を獲得できたから、楽しかったな。経済的に安定すると冒険しなくなるし、意識したというよりも、自然に穏やかな毎日が訪れたってことね。1年の3分の1をカナダのバンクーバーで、本を読んだり、友達と過ごしたりしました」

 そこに至るまでは激動だった。20才から文藝春秋の記者として走り続けていた桐島さんは、長女の妊娠を隠したまま、27才の時にほとんど休暇を取らずに出産した。

「みんな驚くけど、お腹は目立たなかったし、大したことじゃないです。ただ、次女の時は休みが取れなくて、退社することになりました。子供の頃から文藝春秋を読んでいて、『子供文春』って雑誌を勝手に作っていたんです。目次だけだけど(笑い)。編集長になる夢がついえたのは残念ね」

 仕事に奔走した桐島さんは、長女のかれんさんとは4才まで一緒に暮らしていない。

他人にとやかく言われる筋合いはない

「子供と会う時間が少なくても、見てくれる人を雇うお金はできました。『子供たちがかわいそう』なんて言う人がいるかもしれないけど、自分で面倒を見ないことが悪いとは思いません。いまだに幼い子供を保育園に入れる母親を悪し様に言う人もいるそうですが、子供たちとの接し方が人様と違うだけで、それをとやかく言われる筋合いはないはずです。

 40才を前に、1年間休暇を取って、ニューヨーク・イーストハンプトンで家族と過ごしました。子供たちに毎日食事を作って、大自然の中で過ごしたの。日本に帰ろうと言うと、子供たちは『半年残る』と言ったんです。彼らが母を必要としなくなったと実感して、淋しくも嬉しい思いでした。その後、子供たちと世界一周旅行をして、子育てを卒業しました。

 どういう風の吹き回しか、45才で初めて結婚しました(笑い)。私から、捺印を押した離婚届をお互いに持っていようと提案したんです。『離婚したい』とか『離婚を迫られた』とか、悩んでいる人たちを見ていたら、どちらかが離婚したいと思った時にすぐ役所に届けられた方がサバサバしていいと思ったの。結局、離婚したけれど、彼が難病で亡くなったので、私が最期を看取りました。今後ですか? 相手がいないので、機会があればまた恋をしたいですね(笑い)」

桐島洋子さんからのメッセージ

「肩の力を抜いて、そろそろ自由に生きてもいいんじゃないですか。」

桐島洋子さん

1937年7月6日生まれ。文藝春秋に9年間勤務の後、フリージャーナリストに。1970年『渚と澪と舵』で作家デビュー。1972年滞米記録『淋しいアメリカ人』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『聡明な女は料理がうまい』『50歳からの聡明な生き方〜しなやかに人生を楽しむ37章』など、著書多数。

専門家に聞いた50代の生き方

『55歳からの後悔しない人生』などの著書がある作家の山﨑武也さんに、50代の生き方を聞いた。

「真っ先にやるべきことは、自分が今、どんな位置にいるのかを見極めること。仕事、家族、友人、地域社会などの中で、自分の立場を客観的に見ると、これから何をするべきか、わかるはずです」

 たとえば家族関係の見直し。共働きで、仕事に追われて家族を放ったらかしにしていた場合、そのままでは熟年離婚の危険も。

「一生懸命に働いているんだから家族はわかってくれる、と思うかもしれないけど、それは都合のいい思い込みです。コミュニケーションが取れていないから、いつの間にか、家族がバラバラになっている。50代のうちに修復しておかないと手遅れになります」

幸せは、見つけるもの

 新しい趣味や、人間関係を広げるのもいい。しかし、50代に入ってからは、若い頃のようにがむしゃらに走り回るのではなく、自分にとっての幸せがどこにあるのか、見極めることが重要だという。

「幸せは求めるものではなく、見つけるものです。自分の人生の中に、幸せはたくさんあります。若い頃は、それを見つける暇がなかなかない。

 水に潜ったら、改めて空気のありがたみがわかります。今の生活も、“これがなかったら”と考えればいい。毎日食事ができるのは幸せだし、面倒でも仕事がなければ暮らしていけません。働くことは幸せなんです。誰のものでもない、自分だけの人生を、大事に生きてください」

※女性セブン8月23・30日号

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この記事へのみんなのコメント

  • みみ

    桐島洋子さん 久しぶりのお姿拝見させていただきました。 憧れていた方。 変わらず凛々しい。

  • ミランダ

    うわ~桐島さんカッコイイ!!私もこんな風に生きたいと思いました。

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