『はぁって言うゲーム』を手掛けたゲーム作家が選ぶ 家族で遊びたいボードゲーム傑作5選
さようなら2021年。こんにちは2022年。コロナ禍の不安の中で、ステイホームの遊びに最適なボードゲームの注目が高まった1年でした。歳の晩、お正月休みのゆったりとした時間に、家族と、友人と、気軽にのんびり楽しめるボードゲームの新作から、ヒットゲーム『はぁって言うゲーム』を手掛けたゲーム作家の米光一成さんが、5つ紹介します。
1:『あいうえバトル』ドキドキ!ことばの当てっこゲーム
最初に、米光一成がデザインした『あいうえバトル』を紹介。ことばの当てっこゲームだ。
お題を決めたら、かわいいキャラクター「ちょっかんくん」の裏側に言葉を書いて、それを1文字ずつ当てっこする。
たとえば、お題が「飲み物」なら「ジンジャエール」とか「ホットココア」とか、なんでもいい。思いついたものを書き込んで隠す。順番に「あいうえボード」の五十音の文字どれかにチップを置いて攻撃。その文字があったら当たり。ちょっかんくんを裏返していく。
じわじわと開いていく文字を見て、何の言葉を書いたのか推理しながら、すべての「ちょっかんくん」を開いたら勝利だ。
1文字ずつ当てていくスリルと、案外当てられないドキドキと、終盤に大逆転が起きやすい仕組みで、盛り上がる。ルールはすぐに理解できるし、2人〜6人、誰でも楽しい。家族で遊べるゲームです。
【データ】
『あいうえバトル』(作:米光一成 アートワーク:クボナオ/Anaguma)
対象年齢:10才~
プレイ人数:2~6人
プレイ時間:15分
2:『ミクロマクロクライムシティ』絵本『ウォーリーを探せ!』みたいな推理ゲーム
2021年「ドイツ年間ゲーム大賞」の大賞受賞作『ミクロマクロクライムシティ』は、協力型の探偵ゲームだ。
75×110cmの巨大な町の地図が、このゲームの舞台クライムシティ。ビルの下には死体が転がってるし、窓ガラスを割ってるヤツもいる。ピアノの下敷きになってる人もいるし、喧嘩してる人もいる。犯罪だらけの町の地図だ。
16の事件を追うためのカードがある。最初のカードを見ると、事件発生の様子とイラストが描いてある。さっそく地図上で犯行現場を探す。
やってることは『ウォーリーを探せ!』に近い。だが、この地図のすごいところは、ここからだ。事件発生の数分前の状況も同じ地図に描かれているのだ。だから倒れている死体が、数分前に歩いている姿が犯行現場の付近で見つかる。それどころか、そいつに襲いかかろうとしている人物の姿を見つけることもできる。さらにその男がどこからやってきたかを見つけることもできる。異なる時間がひとつの絵として重ね描かれている地図から、次々と事件の経緯が読み解けてしまうのだ。
大判の地図をみんなで凝視して「見つけた!」「ここにいた!」と宝探し的なシンプルなゲーム性と、そこから生み出される物語性の融合が新しい体験を生み出した。
イラストはキュートなタッチだけど、ヤバい事件もけっこうある。事件の数は16、たっぷり遊べる。
第二弾の『ミクロマクロ:クライムシティ フルハウス』も発売された。こちらは、事件ごとに対象年齢に関するアイコン表示つき。
【データ】
『ミクロマクロクライムシティ』(System:Johannes Sich Art:Daniel Goll/ホビージャパン)
対象年齢:8才~
プレイ人数:1~4人
プレイ時間:15~45分
3:『そういうお前はどうなんだ?』キャラを演じながら相手を追い詰める
大喜利系探偵ゲーム『そういうお前はどうなんだ?』も楽しい。「裸の散歩者殺人事件」「仮面の芸術殺人事件」「地獄の牛鬼殺人事件」等、奇々怪々の事件カードから1枚めくって、事件が決まる。プレイヤーが演じる人物は、キャラクター設定カードとキャラクターカードで作られる。たとえば「記憶喪失」の「記者」、「金の亡者」の「館の主人」、「甘えんぼう」の「芸術家」などなど。
キャラを演じながら、めくった暴露カードで相手を追い詰め、めくられた暴露カードの言い訳を必死に主張して、「そういうお前はどうなんだ?」と、犯人のなすりつけあいを繰り広げるのだ。
暴露カードは、怪しさ満点のものばかりなので、言いわけするのも難しい。自分の部屋から爆弾が見つかったり、隠し撮り写真が出てきたり、バールのようなものが出てきたり、隠し扉が見つかったり。どう言いわけしても疑われてしまうんだけど、それは全員そうなので、もう怪しい人だらけが集まった館になってしまう。
最後は、全員「3、2、1」の合図で拘束したい人物を指差し。投票で決定して、エンディングカードをめくって、事件は解決。
まあ、バカバカしい展開になったり、不思議に端正な展開になったりと、バラエティあふれるミステリー劇が発生するゲームになっている。わいわい楽しもう。
【データ】
『そういうお前はどうなんだ?』(作:黒田尚吾 イラスト:ちゅぱみ、松田ミア/グループSNE)
対象年齢:12才~
プレイ人数:3~6人
プレイ時間:20分
4:『ザ・イニシアティブ』全14章をたっぷりと
じっくり遊べる『ザ・イニシアティブ』は、「物語と戦略と暗号解読の協力ゲーム」だ。
マニュアルを開くとマンガだ。「ザ・キー」という謎のボードゲームを見つけた1994年のティーンエイジャーたち。プレイヤーは、彼/彼女になって、人生の重要な一幕を手助けすることになる。
「ザ・キー」は、自分のコマを動かしながら、手札をうまく操って、マップ上にある手がかりチップを開いていくゲーム。手がかりチップを開いてキーフレーズを解明していく。
このゲームのすごいところは、プレイヤーが「ザ・キー」というゲームをプレイすると、マンガの中のティーンエイジャーも「ザ・キー」をクリアして、そこで奇怪な事件が起こっていくという二重構造。プレイヤーは「ザ・キー」というゲームをプレイしながら、マンガに出てくる謎や暗号も解き明かさなければならないのだ。
1章はゆっくりプレイすれば60分ぐらいで、全14章ある。たっぷり楽しめる。
ネタバレになるので詳しく書けないのだが、謎と暗号と物語、そしてゲーム内ゲームである「ザ・キー」もしっかり面白くてオススメ。
【データ】
『ザ・イニシアティブ』(System:Corey Konieczka Cover Artwork:Chan Chau Comic Artwork:Andrew Rust-Mills/ホビージャパン)
対象年齢:15才~
プレイ人数:1~4人
プレイ時間:約30~60分
5:『変顔マッチ』100均で買える全世代向け新福笑い
最後に、もうひとつ米光一成デザインのゲーム『変顔マッチ』を紹介。100円ショップのダイソーで買えるゲームだから、税込み110円、激安。
まずオレンジのカードをみんなが見えるように並べる。へなちょこなイラストで変顔が描いてある。それと同じ変顔が描かれてる青いカードを1枚、自分は見ずにおでこに当てて「変顔マッチ!」と言えば、みんなはその変顔を必死で顔で表現する。みんなの変顔を見て、どのカードの変顔をしているのか見つけて取るゲーム。
ようするに変顔をしてカードを当てるだけのシンプルゲーム。カードには文字もないので、3歳ぐらいの子供でも遊べちゃう。
発売以来、小さい子を持つ親に大好評。おばあちゃんが孫と遊んで、がんばって変顔をする孫のようすを堪能して楽しかったという感想をいただいたりした。
年末年始、新しい福笑いとして遊んでみてください。
【データ】
「変顔マッチ」(作:米光一成/ダイソー)
対象年齢:6才~
プレイ人数:2~10人
プレイ時間:5~10分
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構成・執筆・撮影/米光一成(よねみつ・かずなり)
ゲーム作家。代表作『ぷよぷよ』『BAROQUE』『はぁって言うゲーム』『記憶交換ノ儀式』など。デジタルハリウッド大学教授。池袋コミュニティ・カレッジ「表現道場」の道場主。