独身の義母と男友達の関係に悩む女性にマムシさんは「恋をしましょう~」
「親のプライベートにどこまで干渉するか」は、子どもにとっては悩ましい問題だ。遠くに離れて住む高齢の義母には、頻繁に会っているボーイフレンドがいる。お互いに独身ではあるが、先方の息子さん家族が交際を快く思っていないようだ。引き離すわけにもいかないし……と、夫婦で悩んでいるという。マムシさんの回答やいかに。(聞き手・石原壮一郎)
今回のお悩み:「独身の義母とボーイフレンドとの複雑な関係」
寒くなってきたけど、風邪なんかひいてないだろうな。このごろは調子が悪くても気軽に病院に行けないんだから、毎日いっぱい食べてたっぷり寝て、体調管理にはくれぐれも気を付けてくれ。俺も毎日せっせとエアロバイクや斜め腕立てをやってるよ。
今回は、離れて住んでいるお姑さんに悩まされている57歳女性からの相談だ。
「夫の母は、82歳。私たち夫婦は東京、義母は栃木に住んでいます。早くに義父が亡くなり、ずっと一人暮らしです。近所にボーイフレンドがいて、その人は義母より10歳ほど若いらいしく、息子さん家族と同居、奥様は亡くなったそうです。
その人のお宅に週に2~3回は遊びに行っていると聞いてはいたのですが、男女関係ということでもないし、義母の張り合いになればと、夫も私も干渉してきませんでした。
先日、義母に癌が見つかって体調を崩したのですが、コロナ禍で私たちはなかなか訪ねていけません。そんな中、ボーイフレンドがいろいろと力になってくれたようです。ところが、その方の息子さん家族が、義母のことを快く思っていないらしいことがわかりました。
義母には、やんわりと、あまり他人様に面倒をかけないように、介護サービスなど公的な支援を受けようと話をしているのですが、義母にとっては、いちばん気を許せる相手はそのボーイフレンドのようで、結局、連絡を取ってしまうのです。無理やり連絡を禁止することもできず、夫も困っています。どうしたらいいでしょうか?」
回答:「世間体が気になるだろうけど、いいじゃないの。お姑さんの張り合いになってるよ」
あなたも実の息子である旦那も、まあ気を揉む状況だよな。でも、ボーイフレンドがいるというのは、とってもいいことだよ。体調を崩したお義母さんの力になってくれたなんて、いいボーイフレンドじゃないの。遠くの身内より近くのボーイフレンドだ。あなたが言うように、お義母さんにとっては彼との付き合いが張り合いになってるんだろうね。
ただし、金銭的なことがからんでなければの話だ。高齢者に新しいボーイフレンドやガールフレンドができると、そういう心配が出てくる。お金を無心したりされたりしてるんじゃないかとか、遺産をかっさらわれるんじゃないかとか。まあ、お金の心配をするのは本人よりも子どものほうだけどね。
メールを読んだ限りでは、そういう心配はなさそうだ。ボーイフレンドの息子さんが嫌な顔をするっていうのは、世間体を気にしてのことだろうな。向こうも世間体を気にして、こっちはこっちで直接文句を言われたわけでもないのに、空気を読んで「何とかしたほうがいいんじゃないか」と心配している。それだって世間体ってことだよな。
「近頃は隣近所のつながりが薄れた」なんて嘆く声がある。たしかに寂しい一面もあるけど、逆に言えば世間体を気にしなくてもいい時代になった。昔の隣近所の付き合いには、面倒なこともいっぱいあったからね。その点は、今のほうがありがたいんじゃないかな。しかも、お姑さんは遠くに住んでるんだから、もともと近所の目は関係ない。
ずいぶん前だけど、ウチの親父もおふくろが死んだあと、彼女ができたから一緒に暮らしたいって言い出した。その時に住んでた家も、いつの間にか売っちゃってた。俺は親父を引き取るつもりで部屋も用意してたんだけど、本人がそうしたいって言うもんは仕方ない。ほんの数年だったけど、その人と暮らしてたよ。俺もカミさんも周囲からいろいろ言われたけど、世間体を気にして無理に止めなくてよかったと思ってる。
あなたの場合も、お互いにとって大事な相手になっているみたいだから、「いい年してみっともない」という理由で仲を引き裂くのは、あまりにも残酷だ。人生の終盤を楽しく過ごせそうだったのに、一気に寂しい毎日になる。そんなことしたら寿命を縮めちゃうよ。
ただ、お金に関するモヤモヤはスッキリさせておきたい。どういうつもりで付き合っているのか、お義母さんにそれとなく聞いてみるといいんじゃないかな。「再婚しようと言われてる」なんて話が出てきたら、全力で止めたほうがいいだろうね。
いちばん大事なのは、あなたたち夫婦がもっと頻繁に顔を見せに行くことだ。一時期より県外への移動もしやすくなったことだしね。言ってしまえば、病気で心細い状態なのに子どもがアテにならなくて、その分、ボーイフレンドを頼るようになったんだから。
顔を見る機会が少なくてコミュニケーションが足りないと、心配ばっかりふくらんでしまう。俺としては、お二人が楽しく交際を続けられることを祈ってるよ。恋をしましょう恋をして~だ!
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毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』内で毎月最終土曜日の10時台に放送中。85歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。このほど、自らが創作してラジオでも語り続けている童話『こなくてよかったサンタクロース』が、絵本になって発売された(絵・塚本やすし、ニコモ刊)。公開中の映画『老後の資金がありません!』では、元警察官の頑固ジジイ役で名演技を見せている。
YouTubeでスタートした「マムちゃんねる【公式】」(https://www.youtube.com/channel/UCGbaeaUO1ve8ldOXX2Ti8DQ)も、たちまち絶好調! 毎月1日、11日、21日に新しい動画を配信中。
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊は「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」。この連載では蝮さんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。