シニアに人気の資格「介護職員初任者研修」3つの必勝法を人気スクール講師が指南
介護の資格の中でもとくにシニア世代が目指しやすく人気なのが「介護職員初任者研修」だ。どんな資格なのか、資格の勉強法や合格必勝法について、介護資格の専門学校カイゴジョブアカデミーの講師・佐藤絵美里さんに話を聞いた。
シニアにおすすめ「介護職員初任者研修」
介護施設などで働く職員のうち、60才以上の人は16%、訪問介護員は38.4%と、シニア世代が多く活躍している(厚生労働省平成31年発表「介護分野の現状等について」より)。介護業界は慢性的な人材不足で、60才を過ぎても働き手としてニーズがありそうだ。
「介護の資格を取ることで、介護現場で自信を持って働くことができますよ」
こう話すのは、カイゴジョブアカデミーなどで講師を勤める佐藤絵美里さんだ。
しかし、60才を過ぎてから資格が取れるか不安だという声も…。
「介護の資格の勉強に年齢は関係ないと思います。私が講師を務める講座にもシニアの生徒さんが多数いて、みなさんしっかり資格を取得されていますよ。介護職に興味を持っているなら、年齢で二の足を踏まずにぜひ挑戦してほしいです」
介護の仕事に初めて触れる人には、介護の基本から学べる「介護職員初任者研修」が取りやすく、おすすめだという。
「介護職員初任者研修」は、2013年4月からの介護資格制度変更により「ホームヘルパー2級」から移行された資格。研修の修了者は、介護を必要とする人の自宅や介護施設内で、食事のサポート、身体介助などのサービスを提供できる。
研修の受講料はスクールによりさまざまだが、カイゴジョブアカデミーの場合3万1900円から(税・テキスト代含む)となっている。
「この資格を持っていると、介護・福祉の仕事に就くときに、採用で有利になることも。介護施設で働きたい人のほか、ご家族の介護をしている方にもノウハウがいかせます」(佐藤さん、以下同)
資格取得のために覚えておきたい3つのポイント
介護職員初任者研修は、都道府県または都道府県知事が指定した事業所で実施。事業所が運営するスクールなどで「理論や介護技術」(合計130時間)を学び、筆記試験に合格後、高齢者施設などでの見学・実習を受けることが必須となっている。
「若い頃と比べて記憶力も衰えているし…」と不安を感じているシニア世代でも、合格できるのだろうか?
「国家試験ではないのでそれほど難易度は高くないんですよ。全講義のあと理解度を確認する修了試験がありますが、講義やテキストの内容を把握していれば合格できる人がほとんど。当校の場合は、授業をしっかり聞いて真面目に取り組んでいただければ、心配ありませんよ」
カイゴジョブアカデミーの場合、合格率はほぼ100%だという。そこで、資格取得のための必勝ポイントを伺った。
1.自宅や職場に近く通いやすいスクール選びを
「介護職員初任者研修」の講座を開講している学校・通信講座の中で、自分の生活スケジュールに合ったものを探そう。主婦の人は、平日の昼間開講しているスクールを、平日仕事の人は、土・日開講や夜学があるスクールや通信講座がおすすめとのこと。通信講座受講の場合でも、介助演習は通学の必要があるので、通いやすい場所を選ぶのがいいだろう。
「講習カリキュラムは講義と介助演習を合わせて130時間です。スクールやコースによって異なりますが、約1か月〜3か月かかるので、自宅や通勤先などに近いところを選びましょう。シニア世代の学習には、自分の体に無理をさせないことも大切です」
2.研修内容の把握に「テキストの太字箇所は要チェック!」
講師は「介護福祉士」などの現場を経たベテランが多い。現場の生の声も聞けることは貴重だという。
「研修中に講師から『チェックしておくように』といわれたポイントやテキストの太字箇所を重点的に復習してください。提出したレポートや課題と同じ内容が試験に出る場合もあるので、それらの復習も大事ですね」
介護関連の制度については大枠を理解できれば、詳細や年号は覚えなくてもOKとのこと。
3.介助演習は繰り返し練習を
通信講座を受講していても、資格取得に必須の技術演習は、通学する必要がある。
修得すべき技術演習はおもに以下のようなものがある。
・衣服の着脱と身だしなみの介助方法
・ベッドからの移乗や、車いすの扱い
・食事や睡眠に関する介助方法
・入浴や排せつに等清潔に関する知識や介助方法
「介助では利用者にとって何が安心かということをよく考え、危険を回避しながらサポートすることが大切です。もし心配なら、無理のない範囲でご家族や友人などの協力を得て、自宅で練習してみてください。安全に介助するためには、正しい方法を知り繰り返し練習し、慣れることが一番です」
普段の食事や入浴など自分の日常生活と照らし合わせて、介護される人にとっての危険なこと安全なことを見極めていくことが大事という。
介助演習の修得度は演習ごとに判断されるが、スクールによっては補習を受けられることも。
また、介助演習にはスエットのような動きやすい服装で臨むといいそうだ。
合格ラインは修了試験の70点以上
全科目の修了後に、筆記試験(1時間)で修了評価を実施。研修で学習した内容がほぼそのまま修了試験の内容になる。
合格ラインは都道府県によって決まっていて東京都など多くは70点以上、埼玉県では75点以上。合格すると修了認定の資格者となり、修了証がもらえる。
「介護職員初任者研修」の試験問題は学校が作成するため、内容は若干異なるが、行政により評価の基準が定められているので、大きな差異はないとのこと。
「1回で合格できなくても、補習の講義や再試験が受けられるので、あきらめずに挑戦してください。この資格はシニアからでも真面目に授業を受けて、内容を理解し覚えれば、比較的容易に取れる資格です。
そして、介護施設などの面談の際、資格保有者の証として修了証を提示してください。60才からでも正社員として働けるチャンスにもつながります」
「初任者研修」に合格すればシニア世代でも働ける?
「多くのシニア世代の人がこの資格を取得していきいきと働いていますよ。介助や介護の仕事をすると、腰を痛めるのではないかと不安に感じる方もいますが、『初任者研修』では腰を痛めないように介助をする正しい方法も学べます。
介護の仕事は、相手の『生活のすべてを助ける』と思い込んでいる人もいますが、そうではなく、介助される人に残された能力はいかしながら、できない部分をサポートするということ。自分の体力と相談しながらできるように指導しています。
私自身は、一度も腰を痛めたことがないんですよ。介助・介護の仕事は、強い力や腕力がない人でもコツさえつかめば大丈夫。力まかせに動くとかえって危険なこともあるんですよ。
介護職=体がキツイという先入観は持たないでほしいです。研修で専門知識や正しい介助方法を知ることで、介護する側の負担は軽減できます」
最後に、資格取得の勉強のための心構えを聞いた。
「これまで働いてきた社会経験、家事や育児など人生経験豊富なシニア世代には、介護の仕事は向いていると思います。
とはいえ、介護の資格の勉強に初めて挑戦する人は、介護に関する知識や介助方法など知らないことも多いかもしれません。授業や介助演習でわからないことがあったらそのままにせず、恥ずかしがらずに講師へ積極的に質問してくださいね」
2021年10月に厚生労働省から「介護職員処遇改善可算」の概要も発表され、介護職員の賃金アップも期待される。資格取得のために学び、介護現場で働くための第一歩を踏み出してみてはどうだろう。
教えてくれた人
介護スクール講師・佐藤絵美里さん
デイサービス・特別養護老人ホームや訪問介護など、さまざまな介護現場を経験した介護福祉士。「カイゴジョブアカデミー」をはじめ多くの介護スクールの人気講師として活躍している。https://kaigojob-academy.com/
取材・文/本上夕貴