熱中症・脳梗塞を防ぐ 猛暑から命を守るカンタン即効健康術
猛暑対策は数あれど、以下に挙げたものは、今日から始められる手軽なものばかり。しかし、今年の夏は、ちゃんと始めないと「命が危ない」と覚悟せよ。“いいとこどり”の体調管理術を厳選した。
猛暑でまず恐れるべきなのは「熱中症」だ。体内のミネラルが汗とともに大量に放出されてしまうことで起き、自律神経の変調や体温調節機能の低下が起き、死に至ることもある。一般的には長時間の屋外活動を控え、スポーツドリンクなどで汗とともに、失われたミネラルを補給することが推奨されている。
夜寝る前と朝起きた時に「1杯の常温の水」
盲点となるのが睡眠中の水分補給だ。山野医療専門学校副校長で医学博士の中原英臣さんは、こう指摘する。
「睡眠時でも体内から水分は放出され、不足すると血液がドロドロになってしまう。熱帯夜は特にそうです。すると血栓ができやすくなり、脳梗塞や、不整脈の一種である心房細動を引き起こす可能性が高まります」
管理栄養士の望月理恵子さんは、寝る前と起床時にコップ1杯の水を飲むことでこれらを予防できると話す。
「一晩寝るだけで200~400mlの水分が汗として排出されますから、朝は“隠れ脱水”の状
態。ですから朝起きてすぐ1杯の水を飲むのがいい。体温に近く、体になじみやすい常温の水をゆっくり飲みましょう。トイレが気になって、寝る前の水分を控えている人も多いと思いますが、夏場だけは飲むようにした方がいいです」
「手の甲をつねる」「爪を押す」熱中症のお手軽診断
熱中症で怖いのは、自覚症状を伴わない場合があることだ。とくに体温調節機能が弱まる高齢者に多いというが、それ以外の人も注意するに越したことはない。”
隠れ脱水”の自己チェック法を、医療ライターの大場真代さんが伝授する。
「手の甲を軽くつねって、元に戻るまでに3秒以上かかれば水分が不足している状態です。同じ要領で、親指の爪の表面をグッと押してみて白くなった状態が3秒以上持続するようなら水分不足のシグナルなので要注意です」
今年の夏だけは「減塩食品」をやめて、あえて「梅干し」
水分だけでなく、汗とともに失われるミネラルを補給する必要がある。ミネラルといえば「塩」だ。前出の望月さんはこんな提案をする。
「高血圧などの病気がない人の場合、夏場だけは『減塩みそ』『減塩しょうゆ』を、通常のものに替えてはどうでしょうか。汗によって失われた塩分を補充することができます。日頃、減塩を意識することはいいことですが、猛暑で大汗をかいた時には塩分を多めに摂取したいものです。加えておすすめしたいのは梅干し。ご飯に1粒添えるだけで効率的にミネラルが補給できます」
最強野菜は「すいか」「きゅうり」などのウリ科
不足しがちなミネラルの代表格が「カリウム」だ。これが足りなくなると細胞内が脱水状態になり、熱中症になりやすくなる。芝大門いまづクリニック院長の今津嘉宏さんの指摘。
「夏の定番・すいかは、水分が多いのに加え、カリウムが多く含まれ、さらにその利尿作用によって体温を下げてくれます。すいかやきゅうりなどのウリ科植物は、水分補給と排熱の効果がある優れた食品として、古来から特に夏に好まれてきました」
その効果的な食べ方を前出の望月さんはこうアドバイスする。
「カリウムの効果を最大限享受するためには、生の状態で食べるのが望ましいです。そうめんや冷やし中華のトッピングとしてや、すりおろして利用するのも効果的でしょう」
「ビールで水分補給」はやってはいけない
これだけ暑いと、水分補給と称して冷えたビールを飲みたくなる時もある。だが、それは逆効果だと指摘するのは前出の大場さん。
「ビールをはじめとするアルコール類は非常に利尿作用が高く、すぐに尿として出て行ってしまう。脱水の状態でアルコール飲料を大量に飲むと最悪の場合、脳梗塞や心房細動を引き起こすことさえあります。水やミネラルをしっかり摂って、喉を潤してからにしましょう」
「キムチ納豆」で「腸内熱中症」を防ぐ
つい冷たいドリンクをガブガブと飲みすぎて、胃腸が弱りがち。そんな腸内環境の悪化が熱中症を引き起こすことがあるという。
「腸内環境の悪化により生成される毒素が熱中症を引き起こすという説があるのです。腸内環境は乳酸菌や食物繊維の摂取で整えられるので、発酵食品の代表格であるキムチと納豆を両方摂ることのできるキムチ納豆は効果的な一品です」(前出・望月さん)
「麻婆豆腐」と「トムヤムクン」で汗をかく
熱中症は、自律神経の低下によって汗が出ず、適切な体温管理ができない状況で起きる。人は汗をかいて、熱を放出することによって、体温を下げる。汗をかきにくい高齢者が倒れやすい理由だ。前出の今津さんが言う。
「辛み成分は、温かく感じたり、涼しく感じたりするセンサーである人体の『TRPチャネル』というところを刺激します。インドやタイなど暑い地方で唐辛子を使う料理が食べられていることからもわかりますが、辛いものは発汗作用が強い。気化熱が体を冷やしてくれるんです」
前出の望月さんも同意見だ。
「唐辛子を使った料理は確かに発汗を促して涼しくなる。この夏はあえて麻婆豆腐やトムヤムクンなど香辛料の多い料理を食べるのもいいでしょう」
「高温浴」「ウォーキング後の牛乳」で発汗トレーニング
「適度な運動は乱れた自律神経の調整に役立ち、汗腺を開いて、汗をかきやすくします。夏の時期は日が高くない早朝のウオーキングがおすすめ。秘訣は終了後1時間以内に1杯の牛乳を飲むこと。動かした筋肉にたんぱく質などの栄養が届き、血液量の増加に寄与します。汗はそもそも血液なので、血液が増えると汗をかきやすくなり、熱の排出がスムーズになります。
少し熱めのお風呂につかり汗腺を意図的に刺激して発汗のトレーニングを促すのもいいでしょう」(前出・大場さん)
現代版・夏バテ「冷房病」には「ココア」と「タンドリーチキン」
現代は熱中症だけではなく、冷房による”冷えすぎ”で起きる夏バテが深刻だ。涼しい室内と暑い屋外の移動を繰り返すことで血管の収縮が通常とは違う状況になり、自律神経を弱らせる。手足の異常な冷えや、だるさ、便秘、不眠などがその典型的な症状。体質改善で効率よく発汗できる状態を整え、自律神経を強化したい。
「暑いこの時期ですが、あえてホットココアを飲むのがいい。アメリカではホットチョコレートと呼ばれているように、カカオが豊富に含まれています。ポリフェノールが血流を促進し、冷えの解消につながる。また、香辛料のきいたタンドリーチキンは塩分が控えめでかつ調味料として使われているターメリックという香辛料の効果もあり、体を温める効果が期待できます」(前出・望月さん)
万能ドリンク「甘酒」で疲労回復
冷えの夏バテには、特効薬的な食品がある。
「甘酒には疲労回復効果のあるビタミンB群と人体に必要な必須アミノ酸、食物繊維がたっぷり入っており”飲む点滴”といわれるほどの実力があります。古くから甘酒は夏バテに効くことが知られてきました。暑さによる“伝統的な夏バテ”だけでなく、冷房で冷えた体の抵抗力を上げてくれます」(前出・今津さん)
炎天下に出る時は「真っ白な長袖・長ズボン」
これから長い夏休みがやってくる。家族での旅行や帰省など、外出する機会は多いはず。熱中症になるリスクをどうしても避けられないなら、どんな服装が体を守ってくれるのだろうか。
「そんな時は白を基調とした服がおすすめ。黒よりも白い衣服の方が太陽光からの輻射熱を減少させるという実験結果があるばかりか、水泳パンツ1枚でいるよりも白い長袖・長ズボンの方が皮膚温度の上昇を抑えたというデータもあります」(前出・大場さん)
さらに材質も重要だ。綿製生地は発汗時に湿気を吸収し、心地よさをもたらすといわれる。ポリエステルも通気性がいいとされているので綿とポリエステルの混紡素材の衣服を選ぶのがベストだ。
「エアコンの室外機」への現代版内水で部屋を冷やす
毎日フル稼働のエアコンには感謝だが、気になるのは電気代。フィルター掃除や扇風機の併用などで部屋を効率的に冷やすこともできるが、忘れがちなところにひと工夫すると、さらに冷却効率が改善できる。全国的に打ち水キャンペーンを展開している「日本水フォーラム・打ち水大作戦本部」の家元・浅井重範さんが言う。
「できればお風呂の水などを二次利用し、エアコンの室外機周辺に打ち水をしてみてください。気化熱で周りの温度が下がり、室外機の内部にある熱交換器の冷房効率を上げることが期待できます」
毎日繰り返せば電気代の節約にもつながりそうだ。古くから伝わる伝統の知恵と最新の知見をバランスよく取り入れて、未曽有の猛暑に打ち克ちたい。
※女性セブン2018年8月9日号
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