認知症の親が保険に入っているか知りたいときの「生命保険契約照会制度」をFPが解説
「認知能力が低下した」「死亡した」など思いがけない事情で、家族の生命保険契約の有無がわからなくなったときは、どうすればいいのだろうか? そんなときは、保険の内容を照会できる「生命保険契約照会制度」を活用する手があるという。ファイナンシャルプランナーの大堀貴子さんに解説いただいた。
親の生命保険の契約を把握している?
家族が加入している生命保険について、かつて家族まとめて保険会社の営業担当にお任せで、その担当者がすべてを把握していたという時代もあった。
しかし最近では、ネット専業保険や損保会社系列の生命保険会社、外資系保険会社など保険の種類が多様化し、さらには加入窓口も生命保険会社だけでなく、銀行や証券会社などの保険会社以外の金融機関、独立系FP、保険相談窓口など幅が広がっている。
そんな中、家族が死亡時または認知症等認知能力が低下すると、その家族が契約している保険契約の有無、内容等が分からず、請求できた保険も受け取れないという事態が起きる可能性がある。
保険会社では以下のような形で、本人に契約内容の確認を行っている。
【1】郵送で契約内容を通知(メール通知希望をしている場合はメールやweb上で確認)【年1回】
【2】加入保険会社が相互会社で契約している場合(剰余金の分配がある保険に加入)に、総代会での議決権行使に係る書類【年1回】
【3】保険料を支払っている場合には、保険料控除のお知らせ【年1回10~11月頃】
【4】保険外交員の訪問や連絡による保険内容の確認。会社によっては行っていない場合もある。
ただし、郵送によるお知らせを紛失してしまったり、遠方に住んでいて訪問できないかったりすることも。また、突然の死亡で保険の契約自体どうなっていたかわからないということもある。
「生命保険契約照会制度」とは
生命保険契約照会制度とは、生命保険協会が行っている制度だ。この制度を利用すると、死亡や認知症等で家族の保険契約の有無が分からなくなったとき、生命保険協会に加盟するすべての会社から、対象者が契約者または被保険者となっている生命保険契約の有無を知らせてくれる。
生命保険協会には、外資系も含め国内で営業する全ての生命保険会社が加盟しているので、国内で加入した保険はすべて照会ができる。
この場合、知らせてくれるのは、契約の有無のみとなる。契約の内容については、契約保険会社に個別に問い合わせる必要がある。問い合わせするときは、「生命保険協会の生命保険契約照会制度を利用した」と伝えるとスムーズだ。
問い合わせ先
「一般社団法人生命保険協会」のウェブサイト内、「生命保険相談所のご案内」の問い合わせ電話番号に連絡を。
対象者
・認知判断能力が低下している方
→成年後見制度を利用している場合は法定代理人、任意後見制度を利用している場合は任意代理人、後見制度を利用していない場合は任意代理人、3親等以内の親族(またはその任意代理人)が利用可能。
・死亡した方
→法定相続人、法定相続人の法定代理人または任意代理人(弁護士、司法書士等)が照会可能。
・災害時に死亡または行方不明となった方
→被災された方の家族(配偶者、親、子、兄弟姉妹)が原則利用可能。
料金
1回あたり3000円(税込)
※災害による死亡または行方不明の場合は無料
照会に必要な書類
・申請書類(web申請も可能)
・照会者の本人確書類(コピー)
【認知機能低下時】
・法定代理人の確認書類または任意代理権の確認書類または指定の診断書と照会者と照会対象者の続柄がわかる住民票等
【死亡時】
・法定相続情報一覧図または相続人と被相続人の関係を示す戸籍等(コピー)
(本籍地、従前戸籍、新本籍を黒塗りの上、提出)
・死亡診断書
・法定代理人または任意代理人の場合は法定代理権の確認書類または任意代理権の確認書類
※災害等による照会は直接電話にて必要書類や手続を問い合わせが必要。
まずは郵便物等で確認しよう
被災等で自宅に保管しているものがすべてなくなってしまった場合には、「生命保険契約照会制度」を早めに利用して、保険請求手続を迅速に行うべきだろう。
一方、被災以外での死亡または認知能力の低下であれば、まず自宅で保管している郵便物、口座振替履歴、クレジットカードの明細、保険証券などで確認するのが先決だ。
それでも把握できていない保険がある可能性もあるので、「生命保険契約照会制度」を活用し、保険金の給付請求もれを防ぐとよいだろう。
文/大堀貴子さん
ファイナンシャルプランナー おおほりFP事務所代表。夫の海外赴任を機に大手証券会社を退職し、タイで2児を出産。帰国後3人目を出産し、現在ファイナンシャルプランナーとして活動。子育てや暮らし、介護などお金の悩みをテーマに多くのメディアで執筆している。