「ドリフのコントは黄金のパターンがあった」高木ブーが解き明かす“ドリフの笑いの肝”
「絶対的なリーダーの長さんが最後にやり込められる。それがドリフの黄金パターンだった」――。11月18日の武道館ライブに向けて、ますます忙しい日々を送っている高木ブーさん。9月末に放送された特番をきっかけに、若い世代にもドリフのコントへの注目が集まっている。ブーさんに「ドリフの笑い」の秘密と魅力を聞いた。(聞き手・石原壮一郎)
武道館ライブでは新作のコント&雷様にも挑戦します
ビートルズ日本公演の前座で出て以来だから、55年ぶりかな。まさかまた日本武道館の舞台に立てるとは思わなかった。11月18日の「『ドリフ&ももクロ ライブフェス』~コントもあるョ!全員集合」に向けて、内容を詰めたりリハーサルを始めたりしてます。
あのときにベースを弾いて「逃げろー」と叫んだ長さん(いかりや長介)と、ギターは抱えてたけどじつは音は出ていなかった荒井(注)さんはいないけど、ドラムの加藤(茶)とボーカルの仲本(工事)とはいっしょに出られる。まだ決まってないけど、また『Long Tall sally』がやれるといいな。どんな気持ちになるのかな。
武道館ライブをやるきっかけになったニコニコ生放送の番組『もリフのじかんチャンネル ~ももいろクローバーZ×ザ・ドリフターズ~』も、10月9日の放送で4回目になった。毎回スタジオに行くのが楽しみです。世代がぜんぜん違うから話が合わないんじゃないかと心配だったんだけど、ももクロの4人や司会の飯塚悟志君(東京03)が「違い」を面白がってくれるから、僕らのほうも張り切って楽しく話せる。
ただ、コントと違って言うセリフが決まっているわけじゃなくて、質問されてその場で答えなきゃいけない。新鮮な感覚を味わえてすごくいいんだけど、話そうと思ってたことを先に加藤や仲本に言われちゃって、内心すごく焦ったりなんてこともある。でもまあ、そういうのも含めて生のトークの面白さだよね。
ライブに向けての僕の最初の仕事は、みんなの似顔絵を描くことだった。自分と加藤と仲本は何度も描いてるからどうってことないし、飯塚君はまあ男性だからそんなに気にしなくていい。でも、女性の似顔絵はやっぱり気をつかっちゃう。似てないとダメなんだけど、似せるだけじゃなくて本人のかわいさが出てないと失礼じゃない。まあまあ納得できる仕上がりになったし、本人たちも喜んでくれて、すごくホッとした。
今、加藤や飯塚君たちが、武道館でやるコントを考えてくれてる。ももクロの4人と飯塚君、それとかが屋のふたりも出てくれることになった。みんなでやるコントもあるし、雷様のコントもあるみたい。僕と仲本と、あとももクロの誰かが雷様になってくれるらしいよ。雷様のかわいい女の子が出てくる漫画があったけど、あんな感じになるのかな。
「加藤と志村のコンビは唯一無二だな」
このあいだの『ドリフに大挑戦スペシャル』(フジテレビ系 9/26放送)は、ドリフ世代だけじゃなくて、若い人たちも喜んでくれたみたいだね。僕も懐かしいコントをあらためて見て、やっぱりよくできてるなとか、加藤と志村(けん)のコンビは唯一無二だなと感心したりした。
ドリフのコントの肝は「繰り返し」にあるんじゃないかなと、僕は思ってる。長さんっていう絶対的なリーダーがいて、ほかの4人のメンバーは押さえつけられてて頭が上がらない。テレビの前の視聴者は、その力関係がわかってる。教室コントにしても探検隊コントにしても母ちゃんコントにしても、押さえつけられている4人が知恵を絞って、最後は怖くて強い長さんがやり返されちゃう。それがドリフの黄金パターンになってる。
加藤の「ちょっとだけよ」や志村の「東村山音頭」なんかも同じ。長さんが「やめろやめろ」と止めても、それを聞かずにやっちゃう。当時は「マンネリ」っていう批判もあったけど、ちょっと違うんだよね。5人の関係性があって、見る側も「繰り返し」を期待して、そのとおりの展開を喜んでくれる。毎週の生放送を長く続けてきたドリフだから生み出せた、図々しく言っちゃうとドリフにしかできない笑いだったんじゃないかな。
『ドリフ大爆笑』の「威勢のいい風呂屋」も、まさに「強い長さん」が前提にあるコントだよね。銭湯に来た長さんをハッピを着たメンバーが取り囲んで、威勢よく服を脱がせたり湯船に突き落としたりする。あれは僕たちも、長さんへの日頃の“恨み”を思いっ切り晴らすことができて、やってて気持ちよかったな。
このあいだの『ドリフに大挑戦スペシャル』では、カンニングの竹山君が長さんの役をやってくれた。コントの最初で道端で遊んでいる子どもやカップルに悪態をつく場面があったんだけど、町内の嫌われ者ってことを強調しておかないと、ひどい目にあっている理由がわからない。あの場面は、打ち合わせのときに加藤が提案して、入れることになったんだよね。さすがだよ。あの流れだったからこそ、楽しく笑えるコントになった。
武道館ライブまで、あと約1か月。お世話になってるトレーナーの先生と相談しながら、当日に向けての体力づくりに励んでます。さすがに、途中で寝ちゃうわけにいかないもんね。でも自信ないな。高木ブーが無事に最後まで起きていられるかどうか、そこもお楽しみに。
ブーさんからのひと言
「ドリフのコントは、毎週の生放送を長く続けてきたからこそ生み出せたものだったんだよね。さて、今度の武道館ライブではどんなコントを披露できるか、楽しみにしていてください」
高木ブー(たかぎ・ぶー)
1933年東京生まれ。中央大学経済学部卒。いくつかのバンドを経て、1964年にザ・ドリフターズに加入。超人気テレビ番組『8時だョ!全員集合』などで、国民的な人気者となる。1990年代後半以降はウクレレ奏者として活躍し、日本にウクレレブーム、ハワイアンブームをもたらした。CD『Hawaiian Christmas』『美女とYABOO!~ハワイアンサウンドによる昭和歌謡名曲集~』『Life is Boo-tiful ~高木ブーベストコレクション』など多数。著書に『第5の男 どこにでもいる僕』(朝日新聞社)など。YouTube「【Aloha】高木ブー家を覗いてみよう」(イザワオフィス公式チャンネル内)も大好評。6月に初めての画集『高木ブー画集 ドリフターズとともに』(ワニ・プラス)を上梓。毎月1回土曜日20時からニコニコ生放送で、ドリフの3人とももクロらが共演する『もリフのじかんチャンネル ~ももいろクローバーZ×ザ・ドリフターズ~』が放送中。11月18日開催の『ドリフ&ももクロ ライブフェス』~コントもあるョ!全員集合」は、e+(イープラス)でチケット好評発売中!
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」が好評発売中。この連載ではブーさんの言葉を通じて、高齢者が幸せに暮らすためのヒントを探求している。