「ブルセラ症」って?獣医師も感染した動物由来の病気を解説
今年3月、千葉県に住む50代の男性獣医師が、ブルセラ症に感染したとの発表があった。
ブルセラ症とは、ブルセラ属の細菌に感染している動物の汚物や死体に触れると感染する“動物由来感染症”の1つだ。人に感染すると、発熱や頭痛などの症状を起こし、重症化すれば脳炎、髄膜炎、骨髄炎などを引き起こす。
動物自身に症状がなくて、人に感染する場合もある
「動物自身に症状が出ていなくても、人に感染する病原体を持っていることは多々あります。動物に触れたら必ず手洗いを心掛けて」
と言うのは、白金高輪動物病院・中央アニマルクリニック顧問の佐藤貴紀さんだ。さらに、動物の糞尿や嘔吐物にも、直接触れてはいけないと指摘する。
「糞尿や嘔吐物にも感染物が存在する場合があります。処理をする際は、ゴム手袋などを使うこと」(佐藤さん)
オウム病のように、乾燥した糞尿を吸い込むことで感染するものもあるため、糞尿はなるべく早く処理することも大切だ。
キタキツネの糞や、それに汚染された水を飲むことで感染するエキノコックス症。重症化すると、肝臓切除に及ぶことも(写真/Getty Images)
感染ルートは「直接伝播」と「間接伝播」
動物由来感染症の感染ルートは、感染源である動物から直接人間にうつる“直接伝播”と、感染源の動物と人間との間になんらかの媒介物が存在する“間接伝播”に分けられる。
直接伝播は、キス、かまれる、ひっかかれるなどの直接的な接触のほか、前述のように空中を浮遊している菌を吸い込むことで発症する場合もある。また、動物のせきやくしゃみを直接受けると、それも感染ルートになる。
一方の間接伝播は、デング熱のように、蚊などを介して感染するものや、レプトスピラ症のように、感染した犬やネズミの尿に汚染された水を飲むことで感染するケースもある。
野良猫、野生動物と接触した時は体調の変化に気をつけて
動物由来感染症に感染しても、風邪やインフルエンザに似た症状が出る場合が多く、感染の発見が遅れることもある。
前出の50代獣医師も、最初は発熱を訴えて病院を受診している。抗菌薬などをのんで一旦回復したが、その後両手のしびれや足のふらつきなどの症状が出たため入院。血液検査の結果、ブルセラ症に感染していたことが判明した。
このケースでは、重症化したので動物由来感染症に感染していたことがわかったが、軽い症状で終わったり、無症状の場合もあるので、飼い主が知らないうちに感染していたというケースも少なくない。
野良猫など、野生の動物と接触した場合は、その後の体調の変化に敏感になった方がいい。特に、子供や高齢者は発病すると重症化しやすいので、異変を感じたらすぐ医療機関へ。その際、動物との接触について医師に伝えた方が、その後の診断もスムーズだ。
教えてくれた人/獣医師・佐藤貴紀さん
麻布大学獣医学部卒業後、勤務医を経て独立し白金高輪動物病院を設立。院長として勤務後、JVCC二次動物医療センター目黒病院センター長を務める。現在、目黒アニマルメディカルセンター顧問(https://mamec.wolves-tokyo.com/)。専門は「循環器」。全国に100人しかいない「獣医循環器学会認定医」。「SuperDoctors 〜名医のいる相談室〜」(https://www.youtube.com/channel/UCUxW…)にて配信中。
※女性セブン2018年7月5日号
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