「補聴器」機能も見た目も大進化!使うと耳が悪くなるは誤解
以前から楽しみにしていた母とのランチ。だが、東京在住の会社員、平井美緒さん(42才、仮名)が時計を覗き込むと、すでに午後1時半。もう30分も待ちぼうけだ。
「ちゃんと1時って伝えたはずなのにどうしたんだろう」
母に何度電話してもつながらない。事故にでも遭ったのかと心配したが、結局、2時間待った末に帰宅。すると、連絡が来た。
「ごめんごめん、電話に出られなかったの。食事前にきれいにしようと思って、美容院に行ってたのよ。約束通り7時でいいわよね?」
「えっ? 1時って言ったじゃない」
「いや、美緒は7時って言ってたわよ。でも、せっかく美容院も行ったんだし、今日はもちろん行くわよね!?」
「夜は子供の夕飯を作らなきゃならないから、もう無理よ」
すると母は逆ギレして、大声で怒鳴った。
「じゃあ、美容院代払ってよ!」
平井さんは、母が1時と7時を聞き間違えた今回の件をきっかけに、母の耳が老化していることを自覚した。話せばけんかになってしまうため、あの日以来、連絡を絶っていた平井さんだったが、耳の老化による難聴を放っておくと認知症のリスクが高まることを知り、母に補聴器をプレゼントすることに。補聴器販売会社エイドの認定補聴器技能者の江間広敏さんが話す。
「日本は今人口の25%以上が高齢者。難聴者が増えているにもかかわらず、比較すると補聴器の利用者が少ないですね。“耳に機械をつける”ということに抵抗がある層がまだまだ多いようです」
イヤホンとさほど変わらない…スマートな補聴器
“補聴器を使うと耳が悪くなる”そんな噂を信じている人も多いという。
「それは大きな誤解です。暗いトンネルから外に出るとまぶしく目が弱った感じがしますが、すぐに慣れますよね。補聴器をつけた場合もその感覚に似ています。補聴器に慣れたころに補聴器を外すと、つける前より聞こえづらくなったように感じてしまうんです。
しかし、実際に測定するとそんなことはない。むしろ、補聴器を使って脳に適度な刺激を与えた方が、脳の情動的な活動が盛んになるなど、いいことが多くあるのです」(江間さん)
実際に補聴器を手に入れるには、どういう段階を踏んでいくのだろうか。第1段階は、耳鼻科専門医あるいは補聴器相談医への相談だ。そこで問診や検査を経て、補聴器が必要と判断されれば紹介状をもらい補聴器外来や補聴器店を訪ねよう。
「自分の生活スタイルを伝え、耳に関する悩みや疑問点をしっかりまとめておくことが大事です。その後のトラブルを防止するためにも、補聴器選びは慎重に、そして自分の希望を充分に伝えましょう」(江間さん)
実際に試すときには、きちんと聞こえているか、音が大きすぎないか、耳にフィットするかなどを確認しよう。合った補聴器を見つけたら、お試し期間がスタートだ。補聴器店では、基本的に1~3か月は無料の試用期間が設けられている。
「補聴器に慣れるまでには、ある程度の時間が必要です。それまで聞こえていなかった音が急に聞こえるようになるので、最初はうるさく感じられるかもしれませんが、徐々に慣れていきます」(江間さん)
デザイン、機能が日進月歩で進化している補聴器
最近の補聴器は、デザインはもちろん、機能性も日進月歩で優れモノが多い。
「耳の穴全体をふさがないで、少し隙間をあけてつけるオープンフィッティングというタイプは、音が自然に聞こえ、軽度の難聴の人でもつけやすい。
人気があるのは、スピーカーが内耳路に入っているレシーバーインザカナル。これは、レシーバー(スピーカー)の部品を耳の中に入れるタイプ。耳にかける部分が小さく、海外では主流になっています」(江間さん)
最近ではワイヤレスのイヤホンも浸透していることもあり、小さく、スマートな補聴器は、つけていてもまるで音楽を楽しんでいるようにしか見えないものばかりだ。
「値段は一般的に、20万~50万円。安い『集音器』を使っている人もいますが、似て非なるものなので要注意。医療用具の認可やJIS認定(日本工業規格に適合認定されたもの)を受けている補聴器は、機能的で安全面も優れています」(江間さん)
値は張るが、信頼できる補聴器を体の一部のように使いこなせば、毎日の生活が豊かになること請け合いだ。
冒頭で登場した平井さんの母が補聴器をつけ始め、しばらくたったある日、平井さんは久しぶりに母を食事に誘ってみることにした。
「お母さん、来週の予定はどう?」
「最近ね、耳がよく聞こえるものだから、友達と話すのが楽しくて楽しくて。来週は毎日のように“女子会”なのよ」
そう話す母の表情は以前よりずいぶんと明るく、平井さんを安心させた。
おすすめ!最新補聴器はコレ!
R4シリーズ/パナソニック
丸みのあるスタイリッシュなデザインが好評。5つのカラーから選ぶことができる。置くだけで充電でき、スマホでリモコン操作や補聴器探索も可能。両耳39万8000円~、片耳22万5000円〜。
リオネットシリーズ/リオネット補聴器
“より自然な聞こえ”を追求し開発され、明瞭な音声を耳に届けてくれる。言葉の聞き取りに影響する残響音も低減。両耳44万2000円〜、片耳26万円〜。
シグニアNx/シーメンス・シグニア補聴器
補聴器を着けていることを忘れてしまうほどの自然な聞こえ。「思わず話したくなる」、そんな聞こえを独自のテクノロジーで実現した。両耳54万円~、片耳27万円~。
Muse iQ IIC/スターキー
音楽モードに切り換えずとも、コンサートやカラオケ、遊園地などで臨場感のあるサウンドを体感できる。極小耳あな型タイプ。両耳50万円~、片耳25万円~。
※価格は全て税別です。
※女性セブン2018年4月19日号
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