介護生活にハーブを!<11>~疲れた胃腸と肝臓のケア
私たちの暮らしにおいて、様々な形で利用されているハーブ。西洋だけでなく、日本でも昔から健康のために、ハーブの力が生かされてきました。
介護生活にもぜひともハーブを活用してほしいと、写真家でハーバルセラピストの資格を持つ飯田裕子さんが、介護する人・受ける人へ、ハーブで健かな暮らしを送るヒントを提案するシリーズ。今回は、疲れた内臓のケアに役立つハーブの紹介です。
ハーブを賢く利用して、介護生活にホッとする安らぎを。
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食欲の秋こそ、内臓のケアを
秋は食欲の季節でもありますが、心身の疲労が内臓の不調となって現れやすい時期でもあります。介護する方もされる方も、早めのケアをしながら過ごすことができるといいですね。
心身の疲労が一番現れやすい臓器といえば胃腸。そして、疲労物質を体内から排泄するには肝臓の働きが健やかであることも大切です。
今回は胃腸と肝臓のケアで役に立つハーブをご紹介したいと思います。
胃腸は休むことなく働いています。そして胃腸が疲れると栄養がなかなか摂りにくいという問題が生じやすいので、早め、早めのケアを心がけたいもの。
美味しいものがたくさん出回る秋は、つい食べ過ぎて胃腸への負担も増えます。
また、悲しみや緊張など、精神的な変化があると、ダイレクトに胃腸のバランスが崩れ、消化不良や便秘などが起こりがちです。
精神的なストレスを解放するために、カフェインやアルコールなど嗜好品を楽しむことは、そう簡単に変えられるわけでもありませんよね。かくいう私自身もそういう人間の一人です。
そこで、疲労が溜まったな、と感じた時には、是非、ハーブティーを1杯飲んだり、ハーブのサプリメントを数日摂ったりすることをオススメします。
それだけで、疲労の回復を早め、体調のバランスを整えることができれば嬉しいですね。
疲労した胃腸にオススメのハーブティー
胃腸が疲労している感じる時にオススメのハーブ、「ペパーミント」と「リコリス(甘草)」をご紹介します。
ペパーミントは日本ではガムや歯磨き粉の中の清涼剤としては昔から馴染みはあると思います。
爽やかな香りとともに鎮静効果もあるミントですが、胃腸だけでなく、肝臓や胆嚢の働きも促す効果も期待できます。
私はトルコに行った時に飲んだ、小さなガラスの茶器で食後に出されるペパーミントのお茶を時々思い出すのですが、脂も肉も多く用いるトルコ料理の後、口中と胃がスッキリしたのを覚えています。
ペパーミントはシソ科の植物で、和名で西洋ハッカといいます。ドイツの小児科医では胃の不調にミントを処方しているそうです。
そのペパーミントと相性の良いハーブがリコリスです。
リコリスはマメ科の植物で、ハーブとしては根の部分を使い、和名では甘草(カンゾウ)といいます。その名の由来となっているように、砂糖の50倍もの甘味を持つ成分があり、その正体は根の中に含まれるグリチルリチン(トリテルペン系サポニン)という化学物質です。
また、イソフラボンやフラボノイド、クマリンなどの成分も含み、アンチエイジングや抗ウイルスも期待できます。
中国では喉の痛みや喘息などにも漢方薬として甘草が用いられています。喉や胃などの粘膜の刺激を和らげてくれます。
(※甘草の禁忌として、高血圧の方や甲状腺の疾患のある方には向かないとされていますので注意してください)
甘草はペパーミントとの相性が良いので、この二つがブレンドされたお茶を、食べ過ぎたと感じた時などに摂ることがオススメです。オーガニックのティーバッグが市販されていますので、それを利用すると手軽です。
肝臓のケアにオススメのハーブは「ミルクシスル」
もう一つ、疲労回復には、肝臓のケアもお忘れなく。肝臓のケアをするハーブといえば「ミルクシスル」です。
ミルクシスルの和名はマリアアザミ。ミルクシスルという植物の存在を、私が知ったのはメディカルハーブを学んでからでした。地中海沿岸に栄えた国々では、古代ギリシャ時代からその種子が肝臓病に用いられた史実があります。その効用を知るにつけ、もっと知名度が上がっても良いのでは、と思っています。
ミルクシスルの種子には肝臓の細胞を修復する化学物質シリマリン(3つのフラボノリグナンの混合物)が含まれているそうです。『メディカルハーブの事典』(林真一郎編 東京堂出版)には「シリマリンの有効性に関する研究論文は300以上にのぼり、慢性肝炎やアルコール性肝炎、脂肪肝、肝硬変などに対する効果が報告されています」と記されています。
ミルクシスルの摂取は、巨大なアザミの花の種子の中身がサプリメントになっていますので、そちらの利用がオススメです。
サプリメント摂取する際は、含有成分である、シリマリマリンを1日に200mg~400mgを目安にするのがいいと言われています。
個人差はありますが、3日から1週間くらい続けてサポートしてみてはいかがでしょうか?
私自身は、疲労が著しい時期に1週間ほど集中的に摂取しています。また薬を毎日飲まれている方も、肝臓への負担を考慮すると時々ケアをすると良いかもしれません。
ミルクシスルはメディカルハーブの安全性ハンドブックには「適切な使用において安全」とされているハーブですが、肝臓疾患など医師で処方されている方は医師へのご相談をしてから摂取してください。
また、先にご紹介したミントとの相性も良いので、ミント、リコリスティーとミルクシスルサプリを併用すると、疲労回復に相乗効果も期待できます。
【オススメの市販品】
●『pukka(パッカ) ペパーミント&リコリス有機ハーブティー』
写真・文/飯田裕子
飯田裕子(いいだ・ゆうこ)
1960年東京生まれ。写真家・ハーバリスト。30代の後半にストレスと過労で体調を崩すも、医療行為を受けながらハーブと出会い回復。メディカル的なハーブに興味を持ち、取材を始める。英国在住のハーバリスト、リエコ大島バークレー女史と出会い「ハーブの薬箱:文化出版」の企画、撮影に携わる。その後、日本メディカルハーブ協会のハーバルセラピストの資格を獲得。ハーブの知恵を生かすべくガーデンスタジオJP(https://www.facebook.com/gardenstudiojp/?pnref=lhc)として活動を始める。85歳になる元医師の父と母の遠距離プレ介護が始まったばかり。