兄がボケました~認知症と介護と老後と「第92回 大地震や災害があったとき施設はどうなる?」
認知症を患い特別養護老人ホームに入所中の兄のサポート続けているライターのツガエマナミコさん。週一回の面会はかかさず、通院の際の付き添いもマナミコさんが担っています。兄はてんかん発作が起こることが目下の問題。病院で画像検査などを定期的に受け、薬の量を調整してもらわなければいけないのですが、遠くの病院への移動は負担は大きく近くの病院に変更を決めたものの、検査の設備がないことが懸案事項でした。他にも災害時の施設の対応も気になり…。そんなマナミコさんが最近の状況を報告してくれました。
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「懸案の問題が一段落しました」
昨夜の入浴中、ちょっと怖い体験をいたしました。
洗顔のために石鹸を念入りに泡立てて顔に泡をつけて洗い始めたとき、なにげなく口から軽く息を吸ってしまい、モコモコの泡が口いっぱいに入り、一瞬にして喉を塞ぎました。口元にモコモコの泡があるのに口から息をすれば、誰がどう考えたってそうなります。でもそのときのわたくしは、口呼吸をすることにまるで躊躇がありませんでした。慌てて泡を吐き出し、ゲボッ、ゴボッ、ウゲッと不穏な音を立てながら激しく咳をいたしました。咳をするためには息を吸わなければならないので、いくらか肺に泡が入ったのではないかと思いながら、何度も口をすすぎ、咳をして異物感を取り除くことに全力を注ぎ、今に至っております。
63年間生きてまいりまして、口から石鹸の泡を吸い込んだのは初めてでございます。思い切り咳ができる体力があったからよかったものの、吐き出す力がなかったら…と思うと恐ろしい体験でございました。それにも増して恐ろしいのは「そんなことはしないはず」のことをしてしまった自分。顔を洗っている最中に泡を吸い込むなど、我ながらショックで大いに凹んだツガエございます。
今週も兄の面会に行きました。
スタッフさまがおやつを食べさせてくださっているところだったので、交代して引き継ぎました。「マナミコちゃんだよ~」と言って顔を近づけるとニコニコしてくれたので今日も大丈夫だな、とホッといたしました。
柔らかい物しか食べられませんが、むせたり、吐き出したりすることがないので、兄が食べる様子はわたくしの癒し。声掛けに「はい」とか「そうなの?」と短いながらも声が聞こえるとさらに安心でございます。
冷たい兄の手を握って、CDの音楽に合わせて腕を少し動かしたり、足をさすって刺激したり、わたくしがやれることはほとんどございませんが、何か兄の役に立っていると思いたい気持ちで毎週通っております。
と、そんなとき、施設職員さまと施設の看護師さまがいらっしゃり、「病院のことですけど」とお話を切り出されました。
兄のてんかん発作について施設に近い病院で診ていただきたいのに、施設の往診医がなかなか紹介状を書いてくれない問題があり、ずっと宙ぶらりんでございましたが、一応の決着がつきそうだというお話でございました。
なんと来月から往診医が変更になり、近場の総合病院の医師になるというのでございます。「その総合病院には脳神経科もあるのでちょうどよかった。一度、何でもないときにお兄さんに受診してもらっておくと、いざというときも診てもらいやすいと思うので、○○総合病院でいいでしょうか?」というお話でした。施設から車で15分程度とのこと。もちろんわたくしはOKですし、紹介状も看護師さまが往診医にもう一度お願いしてくださるとのことで、やれやれ一段落でございます。「紹介状が手に入ったら受診の日取りを決めましょう」ということになりました。
ついでに、このお話のあと施設職員さまに大地震や災害があった場合のことを伺ってみました。
「我々職員やスタッフには定められた細かいマニュアルがありますが、ご家族様にお願いすることは何もありません。状況を電話でご報告することはあっても、来ていただくことはないですし、ここは一定の人数を受け入れる避難所になっているくらいですから、耐震も一般住宅よりしっかりしています。丘の上なので浸水もありませんし、貯水タンクや自家発電がありますのでひとまずは安心してご自分の身を守ってください」とのことでした。
なんと心強いお言葉でございましょう。
ずっと気になっていたこちらの問題も一段落してスッキリいたしました。
ただ、わたくしに万が一のことがあった場合のために、第2連絡先を提出してほしいと言われました。そういえば入所する際にも言われたような気がいたします。
高齢の叔母たちをあてにするわけにはいかないので、いとこの誰かに担ってもらわなければなりません。「え~?無理~」と言われたらどうしましょう。これはまさに己の人望が問われるリトマス試験紙。洗顔中に泡を吸い込んでしまうような小ボケ老人のわたくしですが、どうか「いいよ」と言ってくれますように……。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性63才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現67才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。
