《腸の老化を防ぐ習慣》「夜食NG」「座りすぎない」「緑茶の香り」 専門医が教える「腸ケア術」
血管、骨、脳のほか、健康長寿には内臓の機能維持も欠かせない。なかでもとりわけ重要だと言われるのが「腸」だ。全身と密接に繋がる腸を守り、若返らせる方法を専門医に聞いた。
著名人の大腸がん罹患のニュースが相次いでいる。ダウンタウンの松本人志(62)が大腸がん手術を受けたことを番組で告白。株主優待生活で知られる投資家の桐谷広人氏(76)や元神奈川県警のコメンテーター・小川泰平氏(64)も大腸がんを公表した。7月23日には人気作家の東野圭吾氏(享年68)が大腸がんで死去し、衝撃を与えた。
厚生労働省の人口動態統計(2024年)によれば、主な部位別がん死亡数で大腸がんは男性で肺がんに次ぐ2位、女性で1位。男女を合わせた死亡数は大腸がんが最多となっている。
江田クリニック院長で日本消化器病学会専門医の江田証医師が言う。
「腸は肝臓や腎臓、すい臓、胃、肺、心臓など様々な臓器に影響し、健康長寿において極めて重要な役割を担っています。腸の機能を保つことは、大腸がんの予防のみならず、QOL(生活の質)の維持に直結するのです」
腸と老化の関係を端的に示すのが「腸筋相関」という考えだ。
「生物学的年齢の進み方は人によって違いますが、それを決める大きな要素が『筋力』です。筋肉量が少ない人ほど老化が早く寿命が短い。そして筋肉量は実は腸の健康と深く関わっています」(江田医師。以下同)
筋肉量に影響を与えているのが、「酪酸菌」という腸内細菌だ。
「加齢によって筋肉を分解する酵素が働くようになると、筋肉が徐々に細くなり、やがて歩けなくなって寝たきりになってしまう。この酵素を抑える作用があるのが酪酸菌。腸内に酪酸菌が多い人は筋肉量の減少が抑えられるのです」
江田医師がその事例として挙げるのが、100歳以上の高齢者が全国平均の3倍も暮らす京都府京丹後市。調査によると、京丹後市の高齢者は酪酸菌が豊富で「全国平均の3倍」だったという。
「酪酸菌を増やす食べ物は、海藻や大豆など。具材としてわかめや豆腐、油揚げを入れる味噌汁はとても優秀です。突き詰めていくと和食を食べる頻度が高い人ほど酪酸菌が多くなる。京丹後市の高齢者たちもこうした食生活をしていました」
ちょこちょこ動く
腸には全身の免疫細胞の約7割が集まっているため、腸の状態はそのまま全身の健康に影響する。
鍵を握るのは、善玉の腸内細菌が食物繊維などを餌にしてつくる酪酸や酢酸、プロピオン酸などの「短鎖脂肪酸」だ。短鎖脂肪酸は腸の働きを活発にして悪玉菌を抑え、発がん性物質の抑制にも寄与するという。
「短鎖脂肪酸を減らさないために日常生活のなかでできることはたくさんある」と江田医師。そのひとつが「夜食を食べないこと」だ。
「腸にとって空腹時間は貴重な“お掃除タイム”で、この時間に腸内環境を整える収縮運動が活発化します。夕食を夜8時までにすませれば、腸は睡眠中の深夜に掃除を始められます。逆に遅い時間に食べるとその収縮運動が滞り、腸内環境が悪化してしまう」
姿勢では「座りすぎ」に要注意。江田医師によれば、1日平均6時間以上座っていると短鎖脂肪酸が減少することがわかっているという。
「座る時間が長いと胆汁の流れが悪化して細菌が繁殖しやすくなり、腸内の有害物質を増やすリスクがあると考えられています。最低でも1時間に1度は立ち上がるなど、座りっぱなしを避けるようにしてください」
オックスフォード大などがイギリス人43万人を対象に行なった6年間の追跡調査では、1日5時間以上テレビを視聴していた人は、1時間以内の人に比べ、大腸がんに罹患するリスクが35%も高かった。
「テレビの前に座りっぱなしで、動かないことが原因と考えられます。CMの間に立って歩くなど、ちょこちょこ動くことを心がけましょう」
ストレスが腸内環境を悪化させることもわかっている。
「腸と脳には『腸脳相関』と言われる深い関係があります。強いストレスを感じると、脳の視床下部からストレスホルモンが分泌され、腸のバリア機能を弱めて炎症や痛みを誘発するのです」
腸のストレス緩和には、自然に身を委ねる時間が重要だと江田医師。
「外に出て日光を浴びたり、風を感じたりするといいでしょう。緑茶の香りもストレス緩和に効果があります」
また、毎朝トイレに座ることも大切だ。
「出なくても必ずトイレに入ることで排便リズムを習慣化させることができます。便座に座る際のコツは、かかとを上げて前傾姿勢になること。直腸から肛門までが真っ直ぐになるので、便が出やすくなります。ただし体に負担をかけないよう、いきむのは5分以内にしてください。それでも出ない時は、手や顔に水をかける『寒冷刺激』が効果的です。冷たさで自律神経が刺激され、腸の動きが改善されます」
お腹に不快感がある場合は、椅子に浅く腰掛け、背筋を伸ばした状態から上半身を左右にひねる「腸ひねり」のストレッチを実践するといい。
「腸にはくぼみや出っ張りなどの高低差があるため、ねじれてガスだまりができやすい。腸をひねって動かすことが解消に役立ちます」
毎日の腸のケアが、健康長寿につながることを意識したい。
※週刊ポスト2026年8月28日・9月4日号
