92歳でチア引退後、K-POPに憧れヒップホップ挑戦中!シニアチアチーム創設者・滝野文恵さんが語る「人は人、自分がしたいことをする」「誰が何と言おうと私の人生」
平均年齢70歳(現在67歳)を超えるシニアチアダンスチーム「ジャパンポンポン」を設立し、28年にわたり代表としてチームを牽引してきた滝野文恵さん(94歳)。92歳でチアダンスの現役を退いた後も、ヒップホップダンスに挑戦したり、スマートフォンを駆使してデジタルイラストを描いたりと、好奇心はとどまることを知らない。「人は人、自分がしたいからする」と言い切る滝野さんに、心身の健康を保つ秘訣や、毎日をポジティブに、自分らしく生きるための考え方を聞いた。【全3回の第3回】
「健康の秘訣は気にしないこと」。コロナ禍から続く毎朝10分の習慣
――健康、元気の秘訣を教えてください。
滝野さん:健康については、あまり意識しないことですね。秘訣なんてありません。何をしているの?とよく聞かれますが、DNAのおかげ、としかお答えできないくらい、特別なことは何もしていません。
ただ、コロナ禍のときに家に缶詰になった時期がありましたよね。そのとき、このままだとだらしない生活になってしまうんじゃないかと心配になりました。そんなときに、お友達が「毎朝NHKで6時25分から10分間、テレビ体操をやっているよ」と教えてくれて。それで始めてから、今も毎日おうちで続けています。あれくらいじゃ運動としては足りないんでしょうけどね。
――食事面で意識されていることはありますか?
滝野さん:ないですね。健康にいいとは言えないビールやコーラが大好きですし。昔は偏食でしたが、今はだいぶ直ってきました。それでも、健康にいいからといって嫌いなものは食べません。ただ、この年齢で何でも食べられるというのは、健康につながっていると思います。実は90歳のときにインプラントの治療をしたんです。そのおかげで、好物の硬いおせんべいもボリボリ食べられます。入れ歯だったらこうはいかなかったでしょうね。
4本のインプラント以外は自分の歯です。歯のケアについても特別なことはしていません。歯医者さんには1日20分は歯を磨けって言われるんですけど、私には5分だって無理。それでも自分の歯でおいしいものを食べられるのは幸せですね。
「他人がどう思うかはシャットアウト」。嫌なことは3日で忘れる
――若々しくエネルギーに満ちていらっしゃいますが、考え方で日頃から意識されていることはありますか?
滝野さん:いろんな意味で「人は人、私は私」と考えています。人がどう思うだろうか、どう見られるかということは、完全にシャットアウトしています。「人が何と思おうと、私がしたいからする」という気持ちがありますね。
――日頃から笑顔を心がけたり、ポジティブでいる工夫はされているのでしょうか。
滝野さん:意識して笑顔を作っているわけではありませんが、「いつも笑っていますね」とよく言われます。笑顔の効力はあると思っていて、自分も楽しくなるし、周囲の反応もよくなる。それに、嫌なことがあったら2日くらいは考えてクヨクヨしますが、3日目になったらうっとうしくなって、すっかり忘れちゃうんです(笑い)。これってボツボツ認知症?
――何かを始めたいけれど、周りからどう思われるかを気にして、一歩を踏み出せないシニアの方も多いと思います。
滝野さん:大体、何かをやろうかなと思っても、人から何て思われるかしら、と気にしてしまうところから始まるんですよね。でも、そんなことを気にしていたら幸せになれないと思います。なるようにしかならないんだから、クヨクヨしても仕方がない。人の噂に煩わされずに、「誰が何と言おうと私の人生でしょ」という心意気でやればいいと思います。だから私もチアもできたし、新しいことにも挑戦し続けられているんだと思います。
チア引退後に「シニア向けヒップホップ」と「デジタルイラスト」に挑戦
――滝野さんは80歳でウクレレ、83歳でエレキギターを始めるなど、新しいことにチャレンジして続けています。長年代表を務められたチアチームを92歳で引退されてからも、新たに始められたことはありますか?
滝野さん:ついこの間から、シニア向けのヒップホップを始めました。実はチアを辞めた年にカントリーダンスもやってみたんですが、趣味で楽しむ集まりだったので、1時間くらい踊ったら皆さんでお菓子を持ち寄ってのおしゃべりが始まってしまって。私はやるならちゃんとやりたいタイプなので、そういうのは合わなかったんです。その後、少し体調を崩してお稽古をお休みしていたら、体力がすごく落ちてしまって。
そんなとき、テレビでK-POPの男の子たちを見ていて、すごくかっこいいなと思ったんです。それで、形だけでもやってみたくてヒップホップを選びました。シニア向けなので、先生も休み休みやってくださいとおっしゃってくださって、月に2回ほどのペースで通っています。非常に疲れますけどね(笑い)。暑い間は夏休みです。
――体を動かすことだけでなく、アートにも挑戦されているとお聞きしました。
滝野さん:カルチャーセンターでイラストを習い始めました。用事を作らないと外に出て歩かないので、何かしら出かける理由が必要だったんです。色鉛筆で描きたかったのですが、先生から「デジタルでやってごらんなさい」とすすめられまして。今はスマホと充電式のデジタル用のペンを使って絵を描いています。最近は、絵のためにiPadを購入しました。
――最後に、新しいことに挑戦したいと思っているシニア世代にアドバイスをお願いします。
滝野さん:何でも、したいことをすればいいと思います。事情があってできない人もいるかもしれませんが、したいと言いつつ、結局しない人がいっぱいいると思うんです。「こんなことしてみたいわ。でも遠いわ、お金がかかるわ、お友達が何て言うかしら」といろんな理由をつけて。
でも、やりようによっては何だってできると思うんです。だから、迷っているならすればいい。シニアのチアグループだって今やたくさんありますから、今からでも決して遅くありません。どんどん挑戦してください。
◆ジャパンポンポン創設者・滝野文恵
たきの・ふみえ/1932年1月15日、広島県生まれ。大学卒業後、アメリカ留学を経て結婚し、一男一女を育てる。53歳で再びアメリカへ渡り、ノーステキサス大学で老年学修士号を取得。帰国後の1996年、63歳でシニアチアダンスチーム「ジャパンポンポン」を設立。代表として28年間にわたりチームを牽引し、各種メディアで注目を集める。2024年3月、92歳で惜しまれつつ現役を引退した。著書に『女53歳からアメリカ留学』(ミネルバ書房)、『85歳のチアリーダー』(扶桑社)などがある。
撮影/小山志麻 取材・文/小山内麗香
