高齢者の移動手段《シニアカー》誰でも乗れる?介護保険でレンタルできるのはどんな人?購入前の注意ポイントを社会福祉士が解説
「シニアカー」(ハンドル形電動車いす)は高齢者の移動手段として普及しつつある。便利な一方で、電動車いすによる事故件数は年々増加しているため、警視庁が注意を呼びかけてもいる。シニアカーの基本ルールや、購入・レンタル方法、家族が注意すべきポイントなどについて、社会福祉士の渋澤和世さんに解説いただいた。
※警視庁「電動車いすの交通事故」最近の交通事故の実態より
https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku13/shi_04jikojittai.pdf
この記事を執筆した専門家/渋澤和世さん
在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)、監修『親と私の老後とお金完全読本』(宝島社)などがある。
高齢者に便利なシニアカーだが課題点も
公共交通機関が少なく移動距離が長くなりがちな地域では、シニアカー(ハンドル形電動車いす)に乗る高齢者を見かけることがよくあります。都心部(東京23区や主要都市中心部)でも少しずつ増えてきたような印象です。
高齢者にとってシニアカーは、移動範囲も広がって外出や交流の機会も増え、自立した生活を送るのに役立つものといえます。一方で、安全性や操作の難しさなどいくつかの問題もありそうです。
そこでシニアカーを利用するときの基本的なルールをはじめ、介護保険を使って利用する方法、家族が知っておきたいポイントなどを解説していきます。
シニアカーは誰でも乗っていい?「運転免許」は必要?
シニアカーに乗るためには、運転免許は必要ありません。道路交通法上、シニアカーは歩行者として扱われます。高齢になり運転免許を自主返納した後でも、自動車の運転経験がなくても、シニアカーに乗ることができます。ただし、安全に利用するためには、いくつかのポイントがあります。以下で確認しておきましょう。
シニアカーに乗れる人はどんな人?
・基本的な操作方法を理解し、実行できること
(ハンドルを握る・離す、レバーで進む・止まるなどの基本操作)
・周囲の状況を目で見て正しく判断できること
(歩行者や障害物、段差などに気づいてスピードを落としたり避けたりできる認知能力)
・座席に安定した姿勢で座り続けられること
なお、シニアカーは歩行者扱いになるため、公道では原則、歩道を走ること。車道を走ることは禁止されています。歩道がない道路では、歩行者と同じように道路の右側の端を通行します。
参考/警視庁「電動車いすの安全利用について」
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/e_wheelchair.html
介護保険でレンタルする場合の条件や方法
シニアカーは、購入するとなると10万円台後半~40万円前後ですが、介護保険を利用して月々数千円でレンタルすることも可能です。レンタルする際の条件について、重要なポイントをまとめました。
対象となる要介護度
原則:要介護2以上
シニアカーは介護保険の種目では「車いす」に分類されるため、原則として要介護2以上の人が対象となります。
要支援1、2・要介護1は基本対象外ですが、歩行が著しく困難、主治医が必要性を認めているなどの理由があり、かつ自治体が許可すればレンタルできる場合があります。
レンタル利用のプロセス
ケアマネジャーに相談し、ケアプラン(居宅サービス計画)にシニアカーのレンタルを組み込んでもらう必要があります。その際、安全に公道を走行できるだけの操作能力や認知機能・判断力があるかが重視されます。なお、事故のリスクが高いと判断された場合、見送られることもあります。
対象となるシニアカーの条件
介護保険の対象となるのは、「TAISコード(福祉用具情報システム登録番号)」が取得されている、安全基準を満たした公道走行用のモデルに限られます。
介護保険が適用された場合、自己負担は1〜3割(目安は月額2,000円〜4,000円程度)となります。
シニアカーの購入・利用前に知っておきたい3つのポイント
購入や利用の前に本人とご家族が知っておいたほうがいいポイントをご紹介します。
【1】自治体の補助金制度をチェックしておこう
前述の通り、シニアカーを介護保険でレンタルする場合、要介護2以上(自己負担1〜3割)」が原則です。しかし実際のところ、シニアカーを必要とするのは「足腰は弱ってきたけれど、要介護認定を受けるほどではない」アクティブシニア世代が多いのではないでしょうか。
そこで検討したいのが、自治体の補助金制度です。高齢者移動支援や運転免許自主返納支援の一環として、シニアカーの購入金額の1/3〜1/2(上限10万〜15万円程度)を補助する制度を設けている自治体もあります。まずはお住まいの自治体の高齢者福祉課等で、補助金制度がないかを確認しておきましょう。
【2】事故を防ぐための対策を確認しておこう
シニアカーは歩行者扱い(最高時速6km/h)のため、歩道を走るのが原則ですが、歩道がない生活道路を走らざるを得ないケースが多々あります。令和8年9月1日から生活道路における自動車の法定速度が60km/hから30km/hに引き下げとなります。
自動車が住宅街でスピードを落とすことに加え、シニアカー(時速6km)や自転車も通るとなると、生活道路の混雑や危険性も増えます。シニアカーに乗る場合、他人から見つけてもらいやすいように高輝度リフレクターの装着を考えたほうが良さそうです。
参考/警察庁「生活道路における自動車の法定速度が引き下げられます!!」https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/seikatsudouro/seikatsudoro.html
【3】購入前に生活動線や駐車スペースの確認を
シニアカーに乗りたいと思った場合、機種のスペックや価格、制度などに意識が向きますが、最初に確認しておきたいのは「生活動線」です。実際に都心部のマンション住まいのかたが購入後、駐車スペースに入らない、停めておいたら隣家とトラブルになったなどのケースも。購入・レンタル契約の前に、管理組合への確認と、エレベーターや玄関ドアの採寸だけはしておくのが賢明です。
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シニアカーは、買い物が楽になり、外出も増えるなど利用者側のメリットはありますが、周囲の人はスピードや接触に不安を感じているという声も聞かれます。これからシニアカーを検討するシニア世代は、加害者にならないように慎重な操作と周囲への気配りをしながらアクティブライフを楽しみたいものです。
