年金生活者支援給付金【どんな人が、いくら支給される?申請方法は?】FPが解説!「送り忘れや還付金詐欺にはご注意を」
年金生活の高齢者にとって、昨今の物価高は悩みの種。家計にじわじわと響いているのではないだろうか。そこで注目したいのが「年金生活者支援給付金」だ。いくら給付されるのか、対象となるのはどんな人なのか、ファイナンシャルプランナーで行政書士の河村修一さんに解説いただいた。
この記事を執筆した専門家
河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士
CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、認知症サポーター。兵庫県立神戸商科大学卒業後、内外資系の生命保険会社に勤務。親の遠距離介護の経験をいかし、2011年に介護者専門の事務所を設立。2018年東京・杉並区に「カワムラ行政書士事務所」を開業し、介護から相続手続きまでワンストップで対応。多くのメディアや講演会などで活躍する。https://www.kawamura-fp.com/
年金生活者支援給付金とは?
年金生活者支援給付金は2019年(令和元年)10月から始まった「年金に上乗せして支給される給付金」の制度です。
消費税率が8%から10%に引き上げられた際に、公的年金等の収入金額やその他の所得が一定基準額以下の方を対象として、生活の支援を目的に創設されました。
年金生活者支援給付金には、「老齢年金生活者支援給付金」、「障害年金生活者支援給付金」、「遺族年金生活者支援給付金」の3種類があります。それぞれ解説していきましょう。
老齢年金生活者支援給付金とは
65才以上で老齢基礎年金を受給しており、世帯全員が市町村民税非課税であり、かつ前年の「公的年金等収入額とその他の所得の合計」が一定額以下である場合に支給されます。
<所得の合計>
・69才以下(昭和31年4月2日以降生まれ)の方:90万9千円以下
・70才以上(昭和31年4月1日以前生まれ)の方:90万6,700円以下
給付額は月額5,450円を基準とし、実際の支給額は保険料の納付期間と免除期間に応じて計算され、次の(1)と(2)の合計額になります。
(1)保険料納付期間に基づく月額:5,450円 ×保険料納付済期間 ÷480月
(2)保険料免除期間に基づく月額:11,551円 ×保険料免除期間 ÷ 480月
たとえば、40年間(480月)すべて保険料を納付している場合は、月額5,450円を受給できます。
なお、前年の年金収入とその他の所得の合計が、
・69才以下(昭和31年4月2日以後生まれ)の方は80万9千円を超え90万9千円以下
・70才以上(昭和31年4月1日以前生まれ)の方は80万6700円を超え90万6700円以下の場合には、保険料納付済期間に応じた額に一定割合をかけた「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
障害年金生活者支援給付金
障害基礎年金を受給しており、前年の所得が479万4千円以下の場合に支給されます。なお、所得要件については扶養親族の数に応じて増減があります。
給付額は障害等級により異なり、障害等級2級は月額5,450円、障害等級1級は月額6,813円となっています。
遺族年金生活者支援給付金
遺族基礎年金を受給しており、前年の所得が479万4千円以下の場合に支給されます。所得要件は扶養親族の数に応じて増減します。
給付額は月額5,450円ですが、子どもが2人以上いる場合には、この金額を人数で割った額がそれぞれに支給されます。例えば、子が2人の場合は1人当たり月額2,725円(5,450円÷2)です。なお、50銭未満は切り捨て、50銭以上1円未満は切り上げて計算します。
※厚生労働省 年金生活者支援給付金
https://www.mhlw.go.jp/nenkinkyuufukin
受給するための手続きを確認
年金生活者支援給付金を新たに受け取ることができるかたには、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が、毎年9月の第1営業日以降に順次送付されます。
封筒が届いたら、中のはがきに氏名など必要事項を3か所記入し、返送するだけです。その後、日本年金機構で審査が行われ、要件を満たしていれば支給が始まります。
ただし、請求書の提出期限には注意をする必要があります。もし請求を忘れ、令和8年1月5日までに提出しなかった場合、それ以前の分は受け取れません。請求した月の翌月分からの支給となり、令和7年10月から令和8年1月分はさかのぼって受け取れなくなります。
支給は原則、偶数月の15日です。その日が休日の場合は直前の営業日となります。給付金は年金とは別に支払われますが、支給日は年金と同じサイクルです。なお、請求は郵送のほか電子申請でも可能で、詳しくは日本年金機構のホームページで確認できます。
※日本年金機構 年金生活者支援給付金手続きのご案内リーフレット
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/sonota-kyufu/shienkyufukin/seikyu/ta.files/leaflet.pdf
年金生活者支援給付金をかたる詐欺にご注意
年金生活者にとって、年金生活者支援給付金は生活を支える大切な制度ですが、これに便乗した詐欺に注意するよう呼びかけが行われています。
日本年金機構や厚生労働省が、電話で家族構成や銀行口座番号・暗証番号を尋ねることはなく、また「手数料が必要」などと金銭を求めることもありません。
実際の手口の例として「還付金詐欺」があります。役所の担当者を名乗って電話をかけ、「お金が返ってくる」と説明し、手続きを装って個人情報を聞き出そうとします。その後、金融機関の職員を名乗る人物から電話がかかるなど、複数の人物が登場する「劇場型勧誘」に発展するケースも確認されています。
「お金を返すために必要」などと言われても、名前や住所、銀行名、口座番号などの個人情報を決して伝えてはいけません。不安を感じた場合は、すぐに家族や知人、警察、または最寄りの消費生活センターに相談しましょう。
※国民生活センター 還付金詐欺が増加しています!-ATMだけじゃない!ネットバンキングを使う手口にも注意-(2023年7月26日公表)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20230726_2.html
年金生活者支援給付金【まとめ】
年金生活者支援給付金は、初めて対象となる方には日本年金機構から封筒が届きます。封筒の中にはがきが同封されていますので、必要事項を記入し、忘れずに返送しましょう。高齢者にとっては、わずかでも生活を支える大切な支援となるはずです。
一方で、この制度をかたる詐欺への注意喚起も行われています。電話で個人情報や口座番号、暗証番号を聞かれることはありませんので、決して答えないようにしてください。また、請求などで不安や疑問がある場合は、給付金専用ダイヤル(0570-05-4092)に問い合わせることができます。困ったときは一人で抱え込まず相談しましょう。