猫が母になつきません 第461話「しょうめいしゃしん」
写真がキライです。スマホでの自撮りもしないし、「みんなで撮ろうよ」なんていうのもできればお断りしたい。それでも証明写真というのは避けられないもので、必要に迫られてカメラ屋さんで撮ってもらうことにしました。証明写真ボックスでひとりでちゃんと撮れる自信はなく、失敗して何度もやり直すくらいなら少し高くても人に撮ってもらったほうがいいと思いました。プリクラ世代ならボックスにも慣れているのでしょうね。
カメラ屋さんの証明写真はコースがいくつかありましたが、迷わず「美肌コースで」。よくわからないけど「美肌」と言われるとつい…。お店によっては仕上げに「印象アップ」とか「こだわり仕上げ」とか「プロ仕上げ」とか、段階によって料金も変わる。もうスペシャルとかデラックスとかミラクルとかあってもおかしくない。思えば今の時代、社員証やマイナンバーなど、証明写真は以前より日常的なものになっているので、毎日みるなら満足できる写真にしたい気持ちはわかります。
家に帰ってから出来上がった写真をおそるおそる見ると、美肌ではあるものの生気がないくたびれた老人が写っていました。ひどい…ひどすぎる…こんな顔だったんだ…まあ誰のせいでもないというか、自分のせいだけど。カメラ屋さんではできあがった証明写真と一緒に、撮影したデータが入ったCDをくれました。焼き増し用ということらしい。普通の人ならCDを読むこむメディアがないので、それをカメラ屋さんに持って行って焼いてもらうという使い方ですが、私はデザイナーなのでパソコンにデータを読み込んで自分でレタッチすることにしました。今こそこのスキルを使う時!今使わずしていつ使う!!
CDに入っていたのは「美肌」に加工する前の撮影データでした。レタッチするといっても不自然だったり、誰?ってならないのがプロなので、ベースはそのままでメイクとライトをパソコン上でたしていく感じの作業です。年相応にほうれい線とかは残します。あえてシミそばかすや毛穴も消さずに。生気がない感じなのは美肌加工で全体がのっぺりしすぎてしまったせいのような気がしました。年齢とつるつるの美肌が合わないんですね。まあ、お店では短時間でちょこちょこっと加工するので仕方ありません。自分でやるなら時間はかけられます。というわけで、年相応&ちょい盛りの証明写真になりました。
「年相応」って難しいな、と思います。振る舞いにしても見た目にしても「人それぞれ」と言ってしまえばそれまで。現在、自分なりのいい感じの「年相応」を模索中ですが、今回の証明写真でとりあえず「過剰な美肌は似合わない」ことが証明されました。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母と暮らすため地元に帰る。ゴミ屋敷を片付け、野良の母猫に託された猫二匹(わび♀、さび♀)も一緒に暮らしていたが、帰って12年目に母が亡くなる。猫も今はさびだけ。実家を売却後60年近く前に建てられた海が見える平屋に引越し、草ボーボーの庭を楽園に変えようと奮闘中(←賃貸なので制限あり)。
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