《頻尿や尿もれに》避けたい“尿をもらしやすい服”、「心因性の頻尿」にできる対策を泌尿器科の専門医が解説
頻尿や尿もれは骨盤底筋トレーニングで改善することが見込まれるものの、効果が感じられるようになるには2〜3か月は続けて様子を見る必要がある。しかし、意識を少し変えることで生活の中での不安を和らげることができる方法があるという。『頻尿・尿もれ 自力でできるリセット法』(アスコム)の著者で泌尿器科の専門医・高橋悟さんに知っておくと役立つ、尿意・尿もれ対策について聞いた。
教えてくれた人
日本大学医学部泌尿器科学系泌尿器科学分野主任教授・高橋悟さん
たかはし さとる。1985年、 群馬大学医学部卒業。 米国メイヨークリニック・フェロー、 東京大学医学部泌尿器科助教授、 日本大学医学部附属板橋病院病院長などを経て現職。2003年、 天皇陛下(現上皇陛下) が入院された際の担当医師団を務める。 日本排尿機能学会理事長、 日本老年泌尿器科学会理事長などの要職を務める一方、テレビ出演などを通して、 尿トラブルの啓蒙に力を入れている。
突然の尿意に困らないためのヒント
急な尿意や尿もれで日々の生活やイベントを心から楽しめないという人のために、”今日のトラブル”が回避できる方法があるという。知っているだけで気持ちが軽くなる「とりあえずその場をやり過ごす」方法について教えてもらった。
体を締めつける服は着ない
高橋さんによると、「尿をもらしやすい服」があるという。
「腹部をキュッと締めつけるようなスカートやズボン、ガードルや補整下着などは、常に腹圧をかけて膀胱を圧迫しているようなもの。避けるほうがいいでしょう」(高橋さん・以下同)
また、男性はトイレの後に、下着やズボンにシミがついてしまう「排尿後尿滴下(はいにょうごにょうてきか)」に困っている人もいるだろう。これは、尿道の曲がったところにたまった尿が後でもれてくることが原因だ。これもぴっちりしたズボンを履いていることで、起こりやすくなる。
「そういう人は、ファスナーを十分に下ろせる、ゆったりしたズボンを履くほうがいいでしょう。きついベルトを締めるのもすすめません。あるいは、ぴっちりしたズボンを履いているときは、個室に入って排尿するのも効果的です」
冷えもトイレが近くなる原因のため、女性のショーツはへそまで隠れるタイプを選ぶのがおすすめ。
「男女とも冬場は特に、服も暖かいものにして、冷えを避けてください」
お腹に力が入る行動に注意
「お腹に力が入るともれてしまう人は、腹圧のかかる動作を知って、それを避けることで生活の不便や不快を減らすことができます」と高橋さん。
腹圧がかかる動作は、以下のようなものがある。
・くしゃみ、咳をする
・笑う
・「よっこらしょ」と立ち上がる
・走る
・重い荷物を持つ
・思いきりハッと息を吸い込む
・なにかを思いきり引っ張ったり押したりする
・歌う、管楽器を吹く
・腹筋運動をする
これらの動作は避けることができない場合もあるが、下半身に注意を向けることでも、ふとした瞬間のもれのリスクを回避することができる。
「くしゃみや咳を我慢するのは、なかなか難しいかもしれませんが、『ハックショーン!!』とダイナミックにするのではなく『くしゅっ』と控えめにするだけでも違います。 心がけてみてください」
緊張したら、まずは大きく深呼吸
緊張でトイレが近くなる場合、泌尿器の問題ではなく、心理的な問題があると考えられる。
例えば、「人前で話す場面の前にトイレに行きたくなる」「交通渋滞に巻き込まれるとトイレに行きたくなる」といった状況だ。
「精神的なストレスがあると、まだ膀胱に尿がたまっていなくても、脳の中にある“排尿中枢が刺激されてしまうことがあります。脳はとてもデリケートなのです。仕事のプレッシャーや、「外出先でトイレがなかったらどうしよう」などという不安による“心因性の頻尿”もあるのです」
高橋さんは、「心因性の頻尿かも」と思う事態に遭遇したら、まずは、大きく深呼吸をすることを推奨している。また、テレビやスマホなどに集中するのも、心因性の尿意には有効だという。
「心因性の頻尿は体質でも病気でもありません。 そもそも、本当に膀胱に尿がたまっているわけではないのです。どうか、安心してください」
トレーニングなど根本的に解決するための取り組みに加え、どんなシーンで尿意や尿もれが起こりそうなのか自分の傾向を知って、対策をすることができるということが生活の中での不安を軽減することにつながる。