介護保険”外”サービス事業者がタッグを組み新たな協会発足へ「利用者にはどんなメリットがある?」介護中のR60記者が協会の代表理事を直撃!
90代の母を通いで介護している記者。母の生活支援には、介護保険サービスだけでは足りないことがあり、「介護保険外サービス」も併用している。こうした介護保険外サービスを提供する事業者が協力し、新たに「介護関連サービス事業協会」が設立された。利用者や介護する家族にどんなメリットがあるのだろうか。
介護保険外サービスの新たな協会ができた背景
記者の母(90代)の場合、介護保険サービスを利用して掃除や買い物などの生活支援をヘルパーさんにお願いしている。しかし、ヘルパーさんの訪問時間が限られていたり、サービス内容に細かい制約があったり、掃除はリビングやトイレ、浴室など限られた場所のみ。窓やベランダの掃除には介護保険は使えないので自費でヘルパーさんを依頼している。
また、介護保険サービスの通院介助は、「原則的に病院の外まで」とケアマネジャーに言われ、記者が母の通院に付き添えないときにも自費でヘルパーさんを依頼している。
このように介護保険サービスだけでは思うようにいかないこともあり、介護保険外サービスにも頼っているのが現状だ。
そんな中、介護保険外サービスを提供する事業者が提携し、新たな協会が設立されたと聞き、どんなものなのか協会・代表理事に話を伺った。
介護保険外サービスの認知度を高めたい
新たに発足した「介護関連サービス事業協会」の代表理事を務めるのは、ヘルパー手配などの介護サービスを提供するイチロウの代表・水野友喜さんだ。
「協会設立の目的は、介護保険外サービス産業の発展を通じて、介護者の負担軽減や高齢者の健康寿命を延ばすこと。
生活支援サービスや配食サービスなど介護に関連する様々なサービスを提供する事業者が協力し、業界のガイドラインを策定していきます。
また、認証制度を導入し、行政機関や研究機関とも連携することで、安心して介護保険外サービスを使っていただける枠組みを作っていく予定です」(協会代表理事・水野友喜さん、以下同)
協会に参画する企業は、イチロウ、配食サービスのワタミ、家事代行のダスキンなど計10社。高齢者や要介護者らの日常生活をサポートするために必要なサービスを提供している大手企業が名乗りを上げている。
介護関連サービス事業協会参画企業
イチロウ、クラウドケア、シニアライフクリエイト、シルバーライフ、SOMPOケア、ダスキン、チェンジウェーブグループ、ツクイ、やさしい手、ワタミ(五十音順、アルファベット順で表記)
そもそも介護保険外サービスとは?
介護保険サービスを使うには、要介護認定を受ける必要がある。介護度(要支援1~要介護5の7段階)に応じて、自己負担額が異なる。ケアマネが負担額の範囲内でケアプランを作成することで、介護サービスを利用できるようになる。
「一方、介護保険外サービスは、介護保険では賄えない多様なサービスに対応しています。国の補助がないため利用料はすべて自費負担となりますが、病院内での付き添いや保険内ではできない生活支援などにも対応し、自由度の高さが特長です」
介護保険サービス・介護保険外サービスの主な違い
■介護保険サービス
特徴:介護保険制度に基づいた公的な介護サービス
対象:介護保険認定を受けた本人
提供時間:ケアプランにより時間制限あり
サービス内容:介護保険制度内の範囲の決められた内容 基本的にはカスタマイズ可。追加料金は必要
料金:1~3割負担(介護度と収入により変わる)
■介護保険外サービス
特徴:民間の事業者などによる介護保険外サービス
対象:介護認定を受けていない本人や家族も利用可
提供時間:事業者と利用者の合意の上で延長可能
サービス内容:基本的にはカスタマイズ可。追加料金は必要
料金:事業者ごとに異なる。全額自費
水野さんによれば、「介護保険外のサービスは、介護保険内サービスともちろん併用できるので、必要なときに必要なサービスをうまく補完し合いながら使ってほしい」とのこと。
協会の認証制度によって事業者選びの指標に
「実際、介護するご家族にとって、どんな事業者を選べば良いか不安というお声が上がっています。また、ケアマネジャーから介護保険外サービスの活用提案を受けることができないというお悩みもあるようです。
認証を取得した信頼できる事業者を明示化することで、安心して介護サービスを依頼できるようになると考えています。
すべての介護にかかわる人材が介護保険外サービスを認識しやすくなることで、在宅介護のカギを握るケアマネさんからもご依頼が増えるのではないでしょうか。
これまで介護保険内だけでは足りなかった部分を補えることができれば、在宅介護はもっと楽にすることができると思うのです」
介護を受ける人のメリットは?
「介護保険サービスだけでは在宅介護が立ち行かなくなった場合、要介護者も家族も望まない形での施設入居へと繋がっているケースも多く見受けられます。
介護保険と保険外サービスを組み合わせたケアを受けることで、少しでも在宅で長く過ごせるようになる。さらに、細かいところまでフォローできる質の高いサービスを活用いただくことで、QOL向上に繋がる支援を今まで以上に受けやすくなります」
すべて自費となる保険外サービスについてはやはり利用料が気になるが、今後どうなっていくのだろうか。
「自治体や企業と連携を進めていきたいと思っています 。たとえば会社の福利厚生として無料で使えたり、市区町村の補助金などを活用したりすることで、自己負担を抑え、サービスを安価で利用できるような枠組みを整えていきたいです。
私自身、介護福祉士として特別養護老人ホームや有料老人ホームの管理者として、長年介護業界に身を置いてきましたが、介護保険サービスだけで在宅介護のすべてをサポートすることは難しいと感じたこともありました。
介護保険外サービスを上手に活用いただき、利用者様たちの選択肢のひとつとして当たり前になってほしいと願っています」
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介護保険外サービスも利用している記者としては、「コストはかかっても臨機応変に対応してくれるのはありがたい」と実感している。安心できる事業者やヘルパーさんと出会い、良いサービスはリピートしたいもの。信頼できる事業者を選ぶためにも、同協会の取り組みは利用者にとって心強い存在になるのではないだろうか。
■介護関連サービス事業協会 https://csba.jp/association/
■イチロウ https://corp.ichirou.co.jp/
取材・文/本上夕貴