びわで11人搬送も!アレルギー症状が出やすい危険な食べ物リスト
けたたましくサイレンを鳴らし小学校に向かう救急車に、地域住民は戦慄したはずだ。
6月6日午後1時半ごろ、東京・大田区の区立松仙小学校で、昼食を終えた1年生から6年生の男女30人ほどの児童が体のかゆみや腹痛などを訴えて、そのうち11人が病院に救急搬送された。
当日は校内の調理室が工事中で児童は弁当を持参していた。“犯人”は意外な食べ物だった。
「実はこの日、学校は昼食時にびわと牛乳を配っていました。大田区教育委員会は、びわを食べたことでアレルギー症状が出たとみています」(全国紙社会部記者)
びわアレルギーは口腔内や皮膚にも症状が
聞き慣れないびわのアレルギーについて、アレルギー問題に詳しい東京慈恵会医科大学附属病院中央検査部診療部長の海渡健医師が解説する。
「びわに含まれる成分(アレルゲン)により、唇やのどがイガイガしたり、腫れるなどの症状が出る『口腔アレルギー症候群(OAS)』が発症したと考えられます。一部の児童は口腔内だけでなく、皮膚にもアレルギー症状のかゆみなどが出た可能性があります」
それほど多くの児童に症状が出たことで、びわの衛生状態を疑う声もあるが、「農薬などの化学物質が原因であれば、発症の比率はもっと高いはず」(海渡さん)だという。たしかに、松仙小学校の全校児童数約800人に対し、発症の割合は小さい。
食物アレルギーと花粉症の関係性
注意したいのは、このアレルギーが「花粉症」と深く関連することだ。
「果物には、花粉症のアレルゲンと似た構造のアレルゲンが多く含まれるものがあります。このため、花粉症の人が果物を食べると、アレルギーを起こす事例がよくみられます」(海渡さん)
どの果物を食べるとアレルギーが起こるかは、花粉症の種類によって異なる。
びわはバラ科の果物だ。『食物アレルギーの診療の手引き2017』(国立病院機構相模原病院臨床研究センター)などによると、シラカンバやハンノキの花粉症を持つ人が、びわ、りんごなどバラ科の果物を食べると、アレルギー症状が起こりやすい。ほかにも花粉症と食べ物の「危険な組み合わせ」は多岐にわたる。
花粉症の人にアレルギー症状が出やすい食べ物
【花粉症の例】ハンノキ、シラカンバ
・バラ科:びわ、りんご、もも、さくらんぼなど
・マメ科:大豆、ピーナッツ
【花粉症の例】イネ科、ブタクサ
・ウリ科:メロン、スイカなど
【花粉症の例】ヨモギ
・セリ科:セロリ、にんじんなど
子供の果物アレルギーが増加
近年はこのタイプの果物アレルギーが、子供の世代で増えているという。厚生労働省による食物アレルギーの全国調査(2011年)では、原因となる食べ物を年齢別に並べたところ、4~6才で果物が全体の16.5%を占め、第1位。7~19才では第2位だった。
また、シラカンバなどの花粉症患者の約2割で、バラ科の果物にアレルギーがみられたとの報告もある。
果物によるアレルギーの多くは口の中の症状など軽症で済むが、油断は禁物だ。
「子供だけでなく大人でも、ごくまれに全身に症状が出るアナフィラキシーが発生して重症化することがあります。果物のアレルギーはあまり意識されないので、疑わしい症状が出たら摂取をやめて受診すべき。特に、シラカンバ、ハンノキなどの花粉症は、スギやヒノキといった代表的な花粉の飛散時期と重なるため、自覚されづらい。自分がどの果物を食べてはいけないのかを知るためにもアレルギーの検査を受けることをおすすめします」(海渡さん)
禁断の果実は身近にあるかもしれない。
※女性セブン2019年6月27日号
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