総胆管結石の治療|内視鏡は時間が短く負担が少ないが膵炎の発症に注意
成人の約10人に1人が持っていると推計される胆石。胆のうにある胆石は症状がなければ治療の必要はない。しかし、胆管に移動した結石が発見されたら、即治療となる。例えば十二指腸の出口に結石がはまると胆管炎を起こし、最悪の場合は敗血症で死に至ることもある。
現在、内視鏡で総胆管結石を除去する治療が導入されており、治療時間は10分から40分程度で負担が少ない。
消化液である胆汁は肝臓で作られ、途中の胆のうで貯蔵されて胆管を通り、十二指腸に運ばれる。胆のうの中では胆汁が10倍程度に濃縮され、コレステロールや色素などの成分が凝縮して結石となる。
食生活の洋風化で結石を持つ人の割合が増え、約10人に1人が胆石を持っていると推計されている。胆石を持つ人で、腹痛や黄疸などの症状が出るのは10〜20%だ。悪さをしない(無症状)うちは治療はいらない。しかし、胆石が胆管に出てくる総胆管結石は発見されたら、なるべく早い治療が必要である。
胆管炎を起こし、最悪の場合死に至ることも
NTT東日本関東病院消化器内科藤田祐司医師に聞く。
「胆汁は1日500ccほど作られ、胆管を流れています。胆管の結石が十二指腸の出口に詰まると胆汁がうっ滞し、胆管が膨張して黄疸が出ます。そこに十二指腸側から、細菌が侵入すると胆管炎になり、さらに肝臓の血管から、全身に菌が回ると敗血症となって最悪の場合は死亡することもあります」
総胆管結石は結石が小さかったり、結石の構成成分によってはレントゲンに映らなかったりするとCTやMRIでも診断できないケースもある。そのような場合、確定診断は超音波内視鏡(EUS)で行なう。EUSは先端に超音波発生装置が付いたもので、十二指腸の粘膜に押し当てて胆管内の結石を見つける。
また十二指腸の出口に結石が詰まると痛み、黄疸が出るため、内視鏡による緊急治療を実施する。横にカメラが付いた特殊な内視鏡の側視鏡を使い、結石が詰まっている出口から、約2ミリの太さのステントを胆管に挿入し、胆汁の流れを回復させる。その後、点滴での抗生物質による治療を行なう。炎症が収まったところで、再度内視鏡を用いて結石を除去する。
内視鏡治療で膵炎を刺激し、膵炎を発症する場合もある
「十二指腸と胆管の接続部は括約筋になっていて、胆汁が流れるタイミングで開閉しますので、十二指腸から胆管にワイヤーを入れるのは技術的に難しいです。さらに括約筋の途中では膵管も開口しており、胆管にワイヤーを入れようとして、膵管に入ることもあります。膵臓の中を胆管が通っているため、総胆管結石の治療では必ず膵臓を刺激し、治療により膵炎を発症することがあります。当院では膵炎の発症率が低くなるよう丁寧に慎重を心掛け治療しています」(藤田医師)
内視鏡による結石治療後の膵炎は一般的に約5%発生するが、NTT東日本関東病院では約2%に留まっている。
結石治療に際し、まず胆管の出口を電気メスで切り、出口を確保する。その後、結石付近にバルーンを膨らませ、胆管を広げて結石を流したり、バスケットゴールのような器具を使い、結石をキャッチし、引っ張り出す。
総胆管結石の治療には内視鏡をミリ単位で操作する技術の高さが求められている。そのため、治療の経験値が高い医療機関の選択が不可欠だ。
※週刊ポスト2019年3月15日号