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健康

紫外線量は年々増加中!シニア世代の紫外線対策最新事情「PA、SPFが高ければいいわけではない」

 連日、猛烈な暑さにやけどするほどの強い日射しが続く今年の夏。日焼け対策は欠かせないが、日焼け止めさえ塗っておけばバッチリ……と思いきや、シニア世代の肌には、その“完全対策”がマイナスに働くこともあるのだ。肌トラブルには、「最新知識」を備えて対抗しよう。

シニア世代は日焼けにご用心

「地球沸騰化の時代が到来した」

 国連のグテーレス事務総長は7月27日、温暖化が続く地球の危機的状況についてそう警告した。

 だが、上昇しているのは気温だけではない。気象庁によれば、1990年以降、地表にまで届く紫外線量は増加を続け、増加率は10年あたり4.1%に達するという。

 紫外線から肌を守るために必須なのが日焼け対策だ。特に60才以上の人は、日焼けに対してより用心深くなる必要があるという。

『やさしい美容皮膚科・皮膚科 秋葉原院』院長の宇井千穂氏が言う。

「皮膚には、紫外線などの外部からの刺激や、ウイルス・細菌などの侵入を防ぐ重要なバリア機能があります。しかし、加齢とともにそのバリア機能が低下します。紫外線をはねのける力が弱くなってしまうのです」

 加齢による肌の変化は、バリア機能の低下にとどまらない。『水道橋ひふ科クリニック』院長の神島輪氏が続ける。

「肌のハリや弾力が次第に失われ、特に60代以降は乾燥肌になりやすくなります。肌が乾燥すると、ますます日焼けのダメージを受けやすくなり、肌トラブルの負のスパイラルに陥ってしまいます。新陳代謝が落ちてくる年齢でもあるので、一度肌トラブルが起きるとなかなか元には戻りません。肌トラブルそのものが起きないように気をつける必要があります」

 そもそも、日焼けはなぜ起きるのか。

「日焼けとは、紫外線によって皮膚が起こす炎症反応で、そのために皮膚が赤くなったり黒くなったりします。紫外線にさらされる期間が長く続くとシミやシワ、たるみが生じ、さらには長年蓄積されることで、皮膚がんの原因にもなります」(前出・宇井氏)

→なぜ額より頬の方がシミが増えるのか 紫外線だけじゃないシミの原因は「刺激」「温度差ストレス」

オーバー60は肌の変化に合わせた対策が必要

 シミやシワはもちろん、皮膚がんを防ぐためにも、日焼け対策は超重要。さらに言えば、オーバー60世代には、「いままで通り」の対策を続けるのではなく、加齢とともに変化していく肌に合わせた日焼け対策が必要だ。

「ポイントは、60才以上の肌の変化に合わせた日焼け止め選びです。配合成分や塗り方、塗るタイミングに気をつけて、日焼け止めを正しく使うことが大切です」(前出・神島氏)

 日焼け止めを選ぶ際に、まず目に留まるのが、パッケージに書かれている「PA」、「SPF」の数値だ。

「紫外線にはUVA、UVB、UVCがあり、波長の長さが異なります。このうちUVCはオゾン層で吸収され、地表にはほとんど届きません。UVAは波長がもっとも長く、皮膚の奥まで届いてシワやたるみの原因になります。UVBは、肌表面の細胞を傷つけ、シミやそばかすにつながります」(前出・宇井氏)

「PA」と「SPF」が高ければいいわけではない

 そこで重要になるのが「PA」と「SPF」だ。「PA」はUVAに対する防止効果を示し、「PA+」~「PA++++」までの4段階で表示される。「+」が多いほどシワやたるみを防ぐ効果が高い。一方、「SPF」はUVBに対する防止力を示すもので、数値が大きいほどシミやそばかすを防ぐ効果が高い。

 いずれも数値が上がるにつれ防止力が高まることには違いないが、60才以上にとってはその強い防止力自体が、肌トラブルの原因になることも。

「端的に言えば、PA値やSPF値は、高ければ高いほど肌への負担が大きいのです。加齢とともに肌が乾燥してくると、肌への余計な負担がかかってしまいます。選び方の目安としては、普段使いするなら、『PA+++』程度、『SPF30』程度のもので充分です。海外旅行をするときなど、紫外線の強い地域に出かける際にはSPF50を選ぶなど、目的に合わせて使うといいでしょう」(前出・宇井氏)

配合成分のチェックとこまめな塗り直しを

 肌への負担軽減のために、配合されている成分もしっかりチェックしたい。

「シニア世代の肌が乾燥気味であることを考えると、保湿効果が期待できる商品を選ぶのも重要です。保湿効果を求めるなら、セラミドやアミノ酸といった成分が入っているかをチェックしましょう」(前出・神島氏)

 外出前に「べったり塗り」をするのではなく、「こまめな塗り直し」を前提に、適量を塗るのが大切だという。

「汗で落ちたりしたら、そのつど塗り直しましょう。目安はだいたい2~3時間おき。用法用量を守って、適量を塗ることでより効果が期待できます。高価な日焼け止めを選んで、“もったいないから”と塗り直しをためらう人もいますが、それでは本末転倒です。安価でも気軽に塗れるものがおすすめです。

 クリームやジェル、ローションなどさまざまあるタイプの中で、塗り直しに適しているのはスプレータイプ。ただ、手軽に塗ることができる分、ムラが出やすいのでしっかりまんべんなく塗るよう心がけましょう」(前出・神島氏)

日焼け止めはその日のうちに落とし、充分な保湿を

 アフターケアも忘れてはいけない。

「日焼け止めはその日のうちにちゃんと落とすこと。そのうえで充分な保湿をして、日焼けの影響をできるだけ残さないようにしてください」(前出・宇井氏)

“飲む日焼け止め”として、サプリメントを活用するのもいい。

→【最新】シミができるメカニズム!肌にダメージを与えるのは太陽光の「紫外線」「ブルーライト」「赤外線」

肌にいい食べ物やサプリの摂取を

「サプリメントには日焼けによる肌への影響を早く元に戻す効果があります。日焼け止めでしっかり対策をしつつ、サプリメントで疲れた肌をいたわってあげましょう」(前出・神島氏)

 栄養バランスを意識し、日焼けに強い肌の状態を保っておくことも大切だ。

「ビタミンCは肌が黒くなる原因となるメラニン色素の合成を抑えることに加え、肌のハリや弾力を保つコラーゲンの生成に必要な栄養素です。ブロッコリーやピーマンなどの緑黄色野菜、レモンやいちごなどの果物に多く含まれています。肌のターンオーバーを促進してくれるLシステインは、赤身の肉や卵、大豆に含まれている。肌にいい食べ物も積極的に摂るといいですね」(前出・宇井氏)

 神島さんは、日焼けによる弊害をこう強調する。

「日焼けは軽いやけどです。肌のトラブルだけではなく、疲労感やストレスにより、別の不調を引き起こしてしまうこともある。私の患者さんのなかには、登山に行ってすごく日焼けして帰った後、疲れが取れず、その後ヘルペスを発症した人がいます。日焼けした後は充分に休息し、しっかり睡眠を取ることを心がけてください。質のよい睡眠は成長ホルモンの分泌を促し、疲れを取るとともに新陳代謝を高めて、日焼けの影響を早く戻すことにつながります」

 肌の不調を抱えがちで、新陳代謝や抵抗力が落ちてくる60才以上だからこそ、ますます「日焼けケア」が必要になる。紫外線のピークはまだまだ続く。特に60才以上の人は、熱中症対策だけでなく、正しい日焼け対策でこの夏を乗り切りたい。

→猛暑でハゲる!? 怖いのは紫外線だけじゃない、汗で頭皮にカビも【役立ち記事再掲載】

教えてくれた人

宇井千穂さん/『やさしい美容皮膚科・皮膚科 秋葉原院』院長
神島輪さん/『水道橋ひふ科クリニック』院長

※女性セブン2023年8月17・24日号
https://josei7.com/

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