なぜ額より頬の方がシミが増えるのか 紫外線だけじゃないシミの原因は「刺激」「温度差ストレス」
気が付くと増えているシミ。シミが増える原因には、「刺激」や「温度差」が関係しているという。長年、肌について研究しているメーカーの専門家にそのメカニズムについて聞いた。新たなるシミの発生を少なくできるかもしれませんよ!
刺激を与えるとシミが増える
顔の中で最も紫外線が当たる場所は「額」だが、シミが特にできやすいのは「頬」。
「それはなぜか?原因は紫外線だけではないはずと考え、皮膚の内部を検証した結果、『神経』が関係していることがわかりました」
そう語るのは、ポーラ化成工業研究所の中山和紀さん。
「皮膚の真皮上層部分を詳しく見ていくと、シミのできやすい頬には神経が多いのですが、額やあごには神経が少ないことがわかりました。さらにシミと神経の関係の検証を進めていくと、シミの部位ではメラニンを作るメラノサイトと神経の接触が増加していることもわかったんです」(中山さん・以下同)
メラノサイトと神経を一緒に培養したところ、メラニンが増え、色も濃くなったという。
「今回の研究結果から、肌の奥に張り巡らされている神経がメラノサイトに向かって伸び、直接メラノサイトに刺激を与えることでシミができると考えられます。レーザー治療などを施してもシミが再発しやすかったのは、神経の作用が影響している可能性もあります」
神経は肌への刺激やダメージが引き金になって伸びてくるといわれる。つまり、肌をこすったり、痛みを感じるほど強い力でパッティングをしたり、ごしごしとマッサージをするのは、神経が伸びてきてシミを増やすリスクになるということ。このシミ発生のメカニズムを作動させないためには、刺激を極力抑えることが大切になってくる。
刺激を抑えるというのは、いわば消極的なケア方法だが、神経からの影響を抑制する成分を利用して、シミを抑える方法もある。
「ヒメフウロという植物から抽出したエキスには神経からの影響を抑制して、メラノサイトの活性化を抑える効果があることがわかっています。肌の奥からシミの原因を効果的に抑制できるので、シミ予防だけでなく、すでにできてしまったシミが濃くなるのを抑え、繰り返し作られる“シミループ”からの脱却も期待されます」
ヒメフウロエキスを配合した化粧品はすでに市販されており、シミにアプローチする美白美容液をはじめ、化粧水や保湿クリームなどもある。成分表示の中に、「ヒメフウロエキス」と記されているものをチェックしてみよう。
◆神経がメラノサイトに接触した場所でシミができる
頬の真皮部分には、神経が多く存在するが、頬以外には少ない。神経がメラノサイトに触れることで、シミが作り出されていたのだ。(ポーラ化成工業 研究所調べ)
温度差ストレスもシミの原因に
肌へのストレスといえば、紫外線や摩擦がまず思い浮かぶが、室内外の温度差が招くストレスも忘れてはいけない。
特に夏の冷房が効いた環境では、顔の皮膚温度は25℃前後、屋外にいると皮膚温度が38℃に達するなど、10℃以上もの温度差になることがある。ポーラ化成工業の研究では、肌の温度が一定している場合より、夏に室内外を行き来した場合や、マスクの着脱時のように異なる温度にさらされた場合、メラノサイトを刺激し、メラニンの産生が増えることを発見した。
「研究を進めると、温度差ストレスを受けた表皮細胞は、受けていないものに比べ、炎症性因子の一種である『IL-6』という遺伝子が、約160%も増加していることがわかりました。このことから、温度差ストレスによって皮膚の炎症が起こりやすく、肌荒れや、シミの発生につながることが考えられます」(ポーラ化成工業研究所・斉藤優子さん)
肌荒れには、温度差ストレスだけでなく乾燥も大きく影響してくる。皮膚科医の日比野佐和子さんが解説する。
「お肌の状態だけでなく、のどが渇く、ドライアイなどの症状があれば、体全体が乾いているということ。汗で潤っているように感じるかもしれませんが、肌の奥ではどんどん乾燥が進んでいます。環境に合わせて保湿ケアを心がければ、肌荒れもシミも防げます」(日比野さん)
◆夏の屋外環境における皮膚表面の温度 環境温38℃と25℃の比較
この写真は、異なる環境温度における皮膚表面の温度をサーモグラフで測定したもの(ポーラ化成工業 研究所調べ)。この温度差がシミを招く。
◆温度差による肌荒れへの影響
肌荒れによる炎症は、炎症後色素沈着の原因に。(ポーラ化成工業調べ)
教えてくれた人
ポーラ化成工業研究所・中山和紀さん、ポーラ化成工業研究所・斉藤優子さん、皮膚科医・日比野佐和子さん
取材・文/山下和恵 イラスト/上田惣子
※女性セブン2023年6月15日号
https://josei7.com/