不調を招く”内蔵冷え”チェック「深部体温が1度下がると免疫力30%低下」【専門医監修】
梅雨入りを前に、30℃以上の真夏日を記録する地域も出て、例年以上に早く熱中症対策が叫ばれる季節が近づいてきている。だが、気温が高くなったからこそ暑さ対策と同等か、むしろそれ以上に「冷え対策」を怠ってはいけない。初夏の冷えが招く体の不調と対策について、専門医に聞いた。
暑くなる季節にこそ注意すべき「冷え」
「暑い時期こそ、体の中では“冷え”がつくられていく」
と話すのは、全国冷え症研究所所長で理学博士の山口勝利さんだ。
「そうめんや冷たい飲み物など、夏に口にするものは、体を冷やしやすい。加えて、夏は屋外と屋内の気温差が大きいことで自律神経が乱れやすくなります。その結果、血管の拡張と収縮がうまくいかなくなり、一度体が冷えるとなかなか温まらなくなってしまうのです」(山口さん)
夏の冷えは、実は秋や冬よりも深刻なのだ。イシハラクリニック副院長の石原新菜さんも声を揃える。
「秋冬は厚着をしたり温かい食事を摂るなど、意識的に体が冷えないようにするので、寒さは感じても、体の中は冷えにくいのです。一方、夏は冷えに対して無防備になりやすい。冷房が効いている寒い部屋の中にいて、さらに薄着で冷たいものを口にするから、秋冬以上に体は冷えにさらされているのです」
体温計ではわからない“内臓冷え”が増えている!
初夏以降の冷えで恐ろしいのは、内臓の温度である「深部体温」が下がることだ。
「深部体温は本来、体の表面の温度より1、2℃高い37.2~38℃くらいが理想です。わきの下などで測る一般的な体温計でわかるのは表面の温度で、深部体温はわかりません。つまり、体温計で測る体温が高くても、深部体温は低い可能性があるのです」(山口さん・以下同)
正確な深部体温を測るには専用の体温計を使う必要があるが、自分でも内臓が冷えているかどうか判断することはできると山口さんは言う。
「朝・昼・夕・晩の4回、家庭用の体温計で体温を測ってください。4回とも36.5~36.8℃の範囲で、時間帯による体温の差が少なければ、内臓は冷えていないと考えられます。一方、朝の体温が低く、時間が経つにつれて上がっていく人は、内臓が冷えている可能性が高い。4回の体温の差が大きければ大きいほど、内臓の冷えはひどいとみていいでしょう」
内臓が冷えているということは、臓器の血行が悪くなり、働きが落ちているということだ。昔の夏バテの症状といえば暑さによる食欲不振だったが、いまは内臓が冷えることによる“冷えバテ”が増えているという。
「深部体温が下がると、胃もたれや食欲不振、便秘、下痢、むくみなどが起きやすい。子宮や卵巣などの働きにも影響するため、生理痛や生理不順が起きたり、肌の調子が悪くなる人もいます。臓器の働きが滞れば、それを動かす役割を担っている自律神経も疲弊し、不眠やうつの症状が出ることも少なくありません」(石原さん)
初夏から真夏にかけて体にたまった冷えによる不調は10月頃まで続くと、石原さんは言う。恐ろしいのは、長期的に体がむしばまれる可能性だ。
「深部体温が1℃下がるだけで、免疫力は30%も低下することが、科学的に立証されています。かぜや新型コロナなど感染症にかかるリスクが上がるのはもちろんのこと、がん細胞は低温を好むため、がんのリスクも上がる。
一方、深部体温が1℃上がると、免疫力は5倍にもなるといわれている。かぜをひいたときに熱が出るのは、免疫力を一気に上げて、ウイルスを退治しようと体が働いている証拠なのです」(山口さん・以下同)