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暮らし

豪雨から命や住まいを守るための備えとは?【パート2:対策編】

 気象庁より「大雨注意報」が発令され、岡山県倉敷市真備町の山沿いに「避難準備・高齢者等避難開始」の避難情報が出たのは7月6日の11時30分。その後、同地域で最終的な「避難指示(緊急)」が発令されたのは、翌7日深夜1時30分。その間、約14時間。私たちは水害に備え、一体何ができるのか? 

 専門家に事前の備えと、いざという時に持っていくべきものについて聞いた。

→パート1:対処法編を読む

【1】自分が住んでいる土地の地形を事前に知っておく

 国土交通省のHP『わがまちハザードマップ』にアクセスすると、各市町村が作成した「ハザードマップ」を閲覧できる。これは、洪水や津波などの被害に遭いそうな地域を明記してある地図のこと。自分が住んでいる場所の水害リスクを事前に確認し、氾濫時の危険箇所や避難場所などの情報を知っておくことが大切だ。

『わがまちハザードマップ』URL https://disaportal.gsi.go.jp/hazardmap/

 安全に避難できるルートを事前に確認しておく 自宅を基準に、どちらの方角が高いか低いかを把握し、いざという時すぐに高い方へ避難できるようにしておこう。そうすれば、避難所に行くより、近隣の頑丈な建物や高台に避難した方が安全だという別の判断もできる。

【2】早めに行動すれば浸水からわが家を守れる

 気象庁が「大雨注意報」を発令したら、川や山沿いに住む人は避難準備を早めに始めよう。この時、家の中への浸水に備えて、できるだけ水が家屋に入らないよう準備をしてから避難することが大切だ。
 
●土のうや水のうで浸水を防ぐ

土のうで浸水を防ぐ方法イラスト

 出入口など水が入りやすい場所を塞いでおく。ドアの外側には、防水シートを敷き、その上に土のうや砂のうをのせて入り口を密閉する。ドアの内側には、防水シートを敷き、その上に段ボールをのせ、水を入れた厚手のゴミ袋(水のう)を段ボールの中に入れる。

●風呂やトイレの排水口を塞ぐ

 今は生活排水を流す下水管と雨水を流す雨水管が別々になっている地域がほとんどだが、下水管が逆流する可能性もある。その際、家屋への浸水を防ぐため、厚手のポリ袋に水を入れて口を縛り、風呂やトイレの排水口に詰めてから避難するとよい。

●床下の換気口は鉄板などで塞ぐ

 家屋の床下にある換気口は、鉄板などで塞いだら、継ぎ目にも水が入らないようコーキング剤で埋めておき、床下浸水を防ぐ。さらに家屋の下部分に梱包ラップを巻いてから避難するとなおよい。

●玄関に防水板を設置する

 金属パネルでできた市販の防水板(止水板ともいう)を玄関などの前に設置して水の侵入を防ぐ。重い土のうを積み上げるよりも簡単に設置できる。

【3】普段から雨でも役立つアイテムを備えておく

 普段から家に備えておくべき防災アイテムは、地震の備えなどと同じで、飲料水(1人1~2ℓ程度)や非常食、懐中電灯、ラジオ、救急用品、軍手、バッテリーなどでよいが、水害の時にも兼ねられるよう、なるべく防水のものを用意しよう。

●すぐに持ち出すものはコレ!

豪雨時すぐに持ち出すアイテムイラスト

 両手が使えるよう、傘よりレインウエアを用意しよう。また、靴は長靴だと歩きづらいので、足に合ったスニーカーの方がおすすめ。濡れると体が冷えるので、身に着けるものはなるべく、綿製品より速乾性の高い素材のものを。

●スマホは必ず防水対策をラップが意外と使える!

連絡手段や情報収集に役立つスマートフォンや携帯電話は防水ケースなどに入れること。ラップを巻くだけでも防水効果はあり、ラップの上から操作もできる。充電器も忘れずに。

●ライトは懐中電灯よりもネックライトにし、両手をあける

 夜に避難する場合もあるので、防水仕様のライトは必須。ネックライトとは、首にかけるタイプの懐中電灯。なお、転倒すると流される可能性が高いので、棒や傘などで水の中を確認しながら歩くとよい。

避難情報が伝わらなかった不運

 避難情報は3種類あるのをご存じだろうか。西日本豪雨では、この避難情報が出されていたにもかかわらず、きちんと伝わらず、逃げ遅れた人も多くいた。岡山県倉敷市の防災危機管理室担当者は言う。

「7月6日11時30分に倉敷市内全域の山沿いに最初の警報である『避難準備・高齢者等避難開始』が出されました」

 避難情報はエリアメールをはじめ、NHKのLアラート、消防車による巡回や市内各所の放送塔などで流されたが、高齢者の中には、携帯電話を持たない人も多く、また、激しい雨音で放送塔の避難情報が聞こえにくかったという。

 その後、同日22時に真備地区全域に全住民の避難をすすめる『避難勧告』が出された。さらに、23時45分には真備地区小田川南側に、翌7日深夜1時30分には真備地区小田川北側に、それぞれ緊急避難を求める『避難指示(緊急)』が出された。

 国土交通省によると、この『避難指示(緊急)』のわずか4分後に高馬川の堤防が決壊したという。

 正しい避難情報を得て、早めに避難することが、命を守ることにつながるのだ。

被災地の声

「数年前、台風で避難勧告が出た時、早めに避難したのに大した被害がなかったので、今回も大丈夫だろうと、私も周りの住人も油断していました。放送塔から流される間延びしたアナウンスも緊急性を感じさせませんでしたし、消防車の呼びかけは聞こえませんでした。7日深夜に『避難指示(緊急)』が出て、ようやく事態の深刻さがわかりました。とはいえ、暗闇の中、動くのは危険だったので、とりあえず家電や書類など、濡れては困るものを2階に移しておき、明け方4時に家族で避難しました」とは、倉敷市真備町の小田川周辺に住む男性(60才)。天災に油断は禁物だ。

 倉敷市で10年以上用水路の管理をしてきた男性(65才)は、こう語る。

「今回の水害では、あふれやすいとされる高梁(たかはし)川と小田川の合流付近ではなく、そこから3km上流の小田川の堤防が決壊していました。その付近の川の中には木がたくさん生えていたのですが、予算不足を理由に国は木を伐採していなかったようです。もしかするとそれも、川が氾濫した原因の1つだったのかもしれません。こういった地元の状況を知っているのは役所の職員ではなく地元民です。行政に任せっぱなしにするのではなく、住民の手で記録を残していくことも必要だと思いました」

※女性セブン2018年9月6日号

【関連記事】

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