ビタミンDは何から摂る?閉経後10年で激減する骨密度に備えて骨貯金を
年をとるとつまずきやすく、転びやすくなる。井尻整形外科の院長・井尻慎一郎さんが指摘する。
「それは気がつかないうちに足が上がりにくく、すり足になっていたりするからです。目も悪くなり視界も狭くなっているのも関係しています。高齢者に骨折が多いのは、単に骨が弱くなっているということに加え、そういった反射神経や運動能力、筋力などの低下もあいまっているからです」(井尻さん)
加えて、年を重ねると骨がもろくなる骨粗しょう症が原因で、骨折が起きやすくなる。特に女性は、閉経後10年で骨密度は激減してしまう。ちょっとつまずいて、ちょっと転んで、が命取りになる
骨折・転倒は要介護の原因の4位をしめている。年齢とともに骨は弱くなっていくとはいえ、骨折で死を早めるなんてまっぴらごめんだ。
長生きするか早死にするかの鍵は「食」「太陽」「ウオーキング」
長生きできる骨作りにもコツがあった。大前提として「骨貯金がベスト」だと言うのは井尻さん。
「骨は新しく作られてはなくなっていきますが、子供の頃は作り出す量の方が多く、年とともに失われる量が多くなります。なので、閉経までにたくさん骨を作って貯金しておくことが大事です。
鍵を握るのは食事と運動。若いうちからカルシウムやビタミンDの多い食事をとり、適度な運動をして貯金しておいた方がいいですね。今から始めても骨密度の減少を抑えることができるので、遅すぎることはありません」
カルシウムが多いのは牛乳やチーズなどの乳製品、小魚、緑黄色野菜。
ビタミンDが多い食材について、骨粗鬆症財団理事で健康院クリニック院長の細井孝之さんがアドバイスする。
「ビタミンDは、魚、きくらげ、干ししいたけ、卵、うなぎ、鮟肝。肝油ドロップにも含まれています。過剰摂取は禁物ですが、日本人でビタミンDをきちんと摂れているのは2~3割しかいないといわれています。食品から摂りにくい場合はビタミンDのサプリメントを摂ってもいいでしょう」
手のひらを太陽にかざしてビタミンDを
さらに日光浴がビタミンDを作り出す。
「シミが気になって日焼け止めに日傘に帽子と完全防護している女性もいますが、多少は日光に当たった方が、ビタミンDができて骨にとってはいい。日陰で30分程度の日光浴や、手のひらを太陽にかざすだけでも充分です」(井尻さん)
運動はウオーキングが最適。井尻さんは、膝が悪い人には水中ウオーキングをすすめているが、骨にはあまり効果がないと言う。
「骨を丈夫にするためには、骨に少し負荷をかけた方がいいんです。宇宙飛行士は宇宙に3か月滞在したら、骨粗しょう症がひどくなって、骨折しやすくなるのですが、それは無重力だから。
水中ウオーキングは、無重力状態に近いので、骨にいいのはやはり地上でのウオーキングです」(井尻さん)
むらき整形外科クリニック院長・村木重之さんは、
「習慣づけるにこしたことはないですが、義務だと思わずにできる範囲で始めるのがいいですね」と続ける。
「車で出かけていたスーパーまで歩いてみるとか、疲れない程度に。よく1日1万歩といいますが、それはあくまで目標であって、普段運動しない人がいきなり1万歩は無理です。雨の日やしんどいときは休んで、自分のペースで始めましょう。今の季節なら春の花を見ながら、ゆっくり近所を散歩してみるのもいいでしょう」
余談になるが、年中ダイエットに気をとられているのもよくない。やせすぎは骨の大敵だからだ。
「最近は少しくらい中性脂肪やコレステロール値が高くても、その方が健康だといわれています。体が重い分、骨も強くなる。逆にやせすぎて栄養失調になると骨も弱くなり、筋力も落ちて、骨が丈夫でも転倒するリスクが高くなります。
欧米では日本と同じく高齢者が増加しているのに、高齢者の骨折数は減少しています。つまり、予防すれば防げるのです」(村木さん)
一度検査を受けて、まずは骨の状態をチェック。そして毎日コツコツ、生活を見直して、長生きできる骨作りをするのみ!
※初出:女性セブン
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