【俳句】楽しみ方、作るコツ、「人生を変えた一句」を稲畑汀子さんに教わる
人気テレビ番組『プレバト!!』(TBS系)などの影響もあって、近年、俳句がグッと身近になっている。
そこで、高浜虚子を祖父に持つ俳人の稲畑汀子さん(87才)に、俳句の楽しみ方、作るコツ、自分の人生を変えた一句を教えてもらった。
自然からさまざまなことを学べる楽しみがある
80年以上俳句と共に生きてきた稲畑さんは、俳句の楽しみは自然からさまざまなことを学べることだという。
「自然に親しみ、恩恵をいただいて、日本語の大切さがわかってきます。私たちは俳句を作るうえで、色んな言葉を自然から学んでいるわけね。太陽が見えて、虹が出る。雷が鳴って怖いと思ったら、それを俳句にしたらいい。
俳句を作るコツは、季題(季語)として読み継がれてきた、季節の言葉を大事にすること。季題は重苦しいと思う人がいるかもしれないけど、季題は体の中に住みついている日本人の感性なの。それが大変大きな力を持っています。だから、それを大事にしながら、言葉を整えてください」(稲畑さん。以下同)
祖父、父が俳人で、幼い頃から身近に俳句があった。自宅で毎週、猿蓑(蕉門の発句・連句集)の研究会が行われ、部屋の外でその話を聞いていることもあった。
「小学生のとき、父が句会に連れて行ってくれました。清水寺に行ったとき”清水の塔の際より桜散る”と作ったんです。隣にいた小学校教師のかたが”桜散る”より”散る桜”にしたら、俳句らしくなるよ、って教えてくれたんです。そういう会話の中で育ちました。
富士山の麓に虚子の山荘があって、夏になると行っていました。そこでも句を作っていたんですが、『お上手ですね』って虚子に褒めてもらってね。大人の真似事だけど、褒めてもらえるとうれしくて、また作るのよ(笑い)」
”足が痛い”も俳句にしてみる
俳句をすることで得たものは計り知れないと言う。
「俳句に触れて生きているから、毎日楽しいわよ。年だから、足が痛い腰が痛いと言っているけど、それも俳句にするんです。すると、痛いのが治ってきました。薬の役目もしてくれますよ。句会に行こうと思ったら、そりゃあ元気が出るじゃない(笑い)」
稲畑さんの人生を変えた一句
「空といふ自由鶴舞ひやまざるは」稲畑汀子
80年、夫を亡くした稲畑さんが、鹿児島県出水市を訪れた際に詠んだ句。この地には現在、句碑が建立している。
「夫と父が亡くなり、沈んでいたんです。そんなとき、鶴が空を舞いあがって、素晴らしい情景を見ました。空を飛んでいる鶴のような自由な心を持とうと思ったのが、私の人生の変化です。父や夫の死は心の奥底にしまって、これからも俳句を作って生きていこうと前向きになれたんです」
俳句の基本
■ルール
●5・7・5の定型
●季語を入れる
5・7・5に当てはまらない字余り、字足らずになる破調の句や、定型にこだわらない自由律俳句、季語のない無季俳句もあるが、初心者はまずは有季定型にチャンレンジを。
■道具
●ノート(句帳)
●ペン
●歳時記/辞書
”深は新なり”と高浜虚子は言った。道具云々より、深いところにある新しさを大切にして。
稲畑汀子(いなはた・ていこ)
87才。祖父・高浜虚子、父・高浜年尾に俳句を学ぶ。1979年「ホトトギス」主宰、2013年名誉主宰となる。1982年より朝日俳壇選者。
※女性セブン2018年8月16日号
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