暮らし

老後夫婦で家事を分担するための妻の心得3つ|あなたの夫は洗濯機が使えますか?

「男やもめに蛆(うじ)がわき、女やもめに花が咲く」。ひとり暮らしの男性は家事がおろそかになり身の回りが不潔になりがちだが、女性のひとり暮らしは身ぎれいで、周囲からもてはやされるという意味のことわざだ。あなたの夫は、大丈夫だろうか。妻に先立たれた夫の実例をもとに、夫に教えておきたい家事についてリサーチ。いざというときに備え、早いうちから夫婦で家事を分担しておこう。

妻に先立たれた夫「洗濯機の使い方がわからない…」

 妻に先立たれ、おひとりさまとなった夫の荒れた生活は、想像以上に外見に出るもの。

 シニア世代のサポート事業を手掛けるアリア代表・松本すみ子さんさんこう語る。

「会社勤めの現役時代に妻を亡くした男性がいたのですが、それまでピシッとしていたのに、急に、ワイシャツの袖口は汚れたままになり、ヨレヨレのスーツで出社するようになってしまいました。これまでは妻が整えてくれていたのでしょう。みすぼらしい姿では第一印象が悪くなり、仕事にも支障が生じます」

 衣服は工夫のしどころでもある。実際に、長年連れ添ってきた妻の千絵さん(仮名・享年66)を昨年がんで亡くした望田宏文さん(仮名・69才)に話を聞いた。

「亡くなって、もうじき1年になろうとしています。私自身、元気がなくなったという自覚があって、あまり格好も気にせんようになりました。それではアカンと思うのですが…」

 宏文さんが最も困ったのは、電化製品の使い方だ。

 洗濯物を干したり、アイロンがけを手伝ったことはあったが、それ以外の家事は、ほぼ任せっきりだったので、ご飯ひとつ、どう炊いていいかわからなかったという。

「私の実家は農家だったので、薪をたいて、“おくどさん(かまど)”でご飯を炊くことならできるんやけど、最新の炊飯器の使い方がわからない。

 洗濯機なんか、使い方も洗剤の量もわかりませんでした。幸い、息子夫婦が近くに住んでいたから、“どないすればいいねん?”とイチから操作を教えてもらって、ようやく覚えたところです」

 宏文さんは、アイロンをかけなくてもしわになりにくいシャツに買い替えたという。

夫に家事を覚えてもらうために…妻の心得3か条

【1】クリーニング店利用のマニュアルを作成しておく

 金銭面が許すなら、クリーニング店をフル活用したって構わない。

「洗濯機を持たず、靴下も下着もすべてクリーニングに出している男性もいます。

 ほかにも、靴下は100均で買って、汚れたらはき捨てるという人もいます。いろいろなやり方があっていいのだと思っている方が、いざというときにお互い気が楽です」(家事研究家・佐光紀子さん)

 教えておきたいのは、「クリーニング店の利用マニュアル」だ。

「どのクリーニング店へ行けばいいか、ワイシャツは何枚たまったら出せばいいか、スーツは年に何回なのか、何曜日が安いのかといったことを紙に書いて、冷蔵庫の扉など、常に目に入るところに貼っておく。もし夫に『なぜこんなところに?』と聞かれたら、『私もうっかりするからよ』と言って流しましょう」(松本さん)

【2】ロボット掃除機を自分で買ってもらう

 最近は、どんな種類の家事にも家電が存在するといっても過言ではない。洗濯や掃除に至っては、全自動ですべてやってくれることが常識だ。

「機械が好きな男性は多いのに、妻が買ってきたAI家電には手を触れないため、使い方を知らないことが多い。『壊して妻に怒られたくない』というのが本音のようです」(佐光さん・以下同)

 ならば、最初から「夫のもの」にしておけばいい。

「ロボット掃除機を買ってもらうのはどうでしょう。こちらの希望する機能を伝えて、機種の選定から注文手続きまでお願いする。届いたら、『毎朝何時になったら掃除』といった、細かい設定までやってもらいましょう」

 男性のひとり暮らしは、掃除まで手が行き届かず部屋が荒れることが多い。夫が使い慣れたロボット掃除機は頼もしい存在になるはずだ。

【3】食器洗いは頼って任せてみる

 食事をする限り、サボれない家事の1つが食器洗いだ。食器洗い乾燥機もあるが、事前のセッティングなど準備が必要なため、ハードルが高い。手洗いの方法を覚えてもらった方が近道だ。

「あるご家庭の話ですが、家事に目覚め始めた夫が、食器を洗ってくれたそうです。しかし、鍋用、食器用、シンク用と細かくスポンジを分けていたにもかかわらず、よりによって夫はシンク用のスポンジで食器を洗っていた。それを妻が注意したことによって、夫はへそを曲げてしまったそうです」(全日本ズボラ主婦連盟代表理事 料理研究家・浅倉ユキさん・以下同)

 スポンジを使い分けていることなど、夫からすれば妻の勝手だ。ふたりで家事を行うと決めたならば、無理強いしてはいけない。

「頼む」のではなく、「頼る」ことが大切

「目的は、夫を“自分の代わり”にすることではなく、しかるべき将来にひとりで生きられるスキルを身につけてもらうことです。夫が同じスポンジでも平気ならば、目をつぶって、“夫クオリティー”を尊重してください」

 大事なのは、夫に「頼む」のではなく、「頼る」こと。そして、一度頼ったことは任せることだ。

教えてくれた人

シニア世代のサポート事業を手掛けるアリア代表・松本すみ子さん、家事研究家・佐光紀子さん、全日本ズボラ主婦連盟代表理事 料理研究家・浅倉ユキさん

※女性セブン2021年4月22日号

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