兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし「第43回 兄、社長様にご挨拶」
若年性認知症を患う兄と2人暮らしのツガエマナミコさんは、兄の生活のさまざまなサポートを行っている。確定申告の手続きも、兄の分も担ったツガエさん。昨年は、マンションの買い替え、兄の退職など生活にも大きな変化があったのだが、無事に還付金を受取ることができひと安心。そして、今回は、ずっと懸案だった、兄が長年勤めた会社の社長へ挨拶に行くこと…。
「明るく、時にシュールに」、でも前向きに認知症を考えます。

* * *
社長、兄、妹…三方ウインウインウイン
確定申告の翌日、とうとう兄と連れ立って社長さまに退職のご挨拶をしに行ってまいりました。本来なら昨年末に済ませなければいけなかったことでございます。
兄には前々から日程を話しても忘れてしまうので、当日の朝「今日はお昼食べたら社長さまにご挨拶に行きます。会社やめて時間経っちゃったけど一応けじめだから、一緒に行くよ」と話しました。
一瞬嫌な空気になるかと思ったのですが、のんびりと朝食を食べ終わると兄は「会社、行けるかな?」と言いながらやおら自室へ行って着替え始めたのです。そして10時ぐらいには出かける格好をして洗面所とトイレを行ったり来たりしています。「ん?妙にやる気あるな」と思っていると、部屋から「保険証持ってる?」という声が飛んできました。「持ってるよ」と返事はしましたが、しばらくすると「どこだっけ病院。病院でしょう?」と聞くので、やれや