兄がボケました~認知症と介護と老後と「第19回 久々の区役所にて…」
50代で若年性認知症を発症した兄と8年にわたり共に暮らし、サポートしてきたライターのツガエマナミコさん。昨年から兄は特別養護老人ホームに入所しましたが、さまざまな制度を活用するための手続きは、すべて引き続きマナミコさんが担っています。申請しないと受けられない助成など、煩雑な手続きが必要なのです。
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手続きを忘れていました!
歯の治療が継続中でございます。
インプラントは基礎工事が済み、定着するのを待っているところでございまして、5月に最終仕上げとなるようでございます。その間、インプラントの隣の歯を治療し、最後のかぶせ物でまた血迷って自費診療のセラミックにしてしまいました。保険診療でもよかったのかもしれませんが、インプラントの隣の歯が安物ではバランスが悪い気がしてしまい、渋沢栄一さま15名と交換いたしました。インプラントと合わせると総勢58名の渋沢さまがわたくしの手元から旅立ったことになります。保険診療でも北里柴三郎さまや津田梅子さまが頻繁に飛んでいき、トータルを計算する気にもなりません。
しかも、最近は逆サイドの奥歯に痛みが始まるというドミノ倒しのような悲劇の連鎖。こちらを治せばあちらが壊れる……まだまだ費用が嵩みそうでございます。
費用が嵩むといえば、兄のお支払い事情でございます。
兄の施設入所時にきちんと手続きをしていれば1割負担で済んだ医療費が、8か月間も3割負担でお支払しており、我ながら少し凹んでいます。
原因はわたくしのうっかり。「自立支援医療受給者証」※の指定医療機関と指定薬局の変更を忘れていたのでございます。「介護保険負担割合証」で1割負担となっていても、「自立支援医療受給者証」の医療機関と薬局が指定したところでないと、医療費が3割負担になってしまうのでございます。
気づいたのは2月に届いた兄の国民健康保険医療費通知書でございます。ズラズラと並ぶ1年間の支払金額が昨年9月(8月末施設入居)から明らかに跳ね上がっており、よくよく見ると3割負担ではないですか。「兄は1割負担なのに、間違ってる!」と思った瞬間に「そうだ、変更してない!」と気づき、そこで自分の過失を認めることとなりました。
兄に関する「〇〇証」類を施設にすべて預けたときに「あとは施設にお任せだ~」と肩の荷をすっかりおろしてしまったゆえに、医療機関と薬局の指定変更まで思いが及ばなかったのでございます。しかも、毎年3月末までに「自立支援医療受給者証」の更新手続きをしなければならないこともきれいさっぱり忘れておりました。
通院に付き添っていたころは、嫌でも「〇〇証」類を目にするので更新時期には気を付けていましたが、預けてしまうと存在すら忘れてしまい、危うく失効するところでございました。更新には2年に1度、医師の診断書が必要で、今年は必要な年。あわてて施設の方に事情を説明して、病院に診断書を書いていただきました。そして先日久しぶりに区役所へ行き、更新手続きをしてまいりました。
そのついでに、なんとわたくし!「マイナンバーカードの申請」をしてまいりました。
「今頃?」とツッコンでくださいませ。そうです、わたくしはまだマイナンバーカードを持っていないのでございます。
はじめは、区役所まで来たついでにどうすればいいのか聞くだけ聞いてみようと思っておりました。ただ、折しも入居・転居シーズンでごった返しておりましたので、きっと「これを読んでください」と紙の一枚も渡されておしまいだろうと予想しておりました。ところがびっくりするほど親切丁寧で迅速な対応だったのでございます。
「お写真がなくてもここで無料で撮りますから」とあれよあれよと撮影され、あっという間に写真ができて、言われるがまま申請書を書く窓口に流されて、運転免許証を見せたら書類が出来上がり「これを帰りにポストに入れてくださいね」と小さな封筒を渡されました。「一番近いのは区役所を出てすぐのファミレスの先ですから」とポストの場所まで教えてくださる親切さ。「証明写真の持参」が不要で、こんなにストレスなくやっていただけるならもっと早く来ればよかったと後悔したくらいでございます。なにはともあれわたくしのマイナンバーカード申請は終わりました。あとは1~2か月後に通知が来て、指定された日時に区役所に取りに行くばかりでございます。
問題は兄。兄のマイナンバーカードの手続きは若干複雑になりそうでございます。そのお話は次回にいたしましょう。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性62才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現66才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。
イラスト/なとみみわ