【2024年度グッドデザイン賞】介護の負担を減らしてくれる注目のアイテム5選|介護中の記者がレポート
介護をする家族にとって、新たな介護用品やサービスを取り入れて、少しでも介護の負担を減らせたら――。そこで2024年のグッドデザイン賞を受賞した商品に着目。シニア・介護関連のものも数多く選ばれているので、親を通いで介護中の記者が気になったアイテムをご紹介する。
2024年のグッドデザイン賞を受賞した気になるアイテム5選
公益財団法人 日本デザイン振興会が毎年開催する「グッドデザイン賞」。国内外の多くの企業や団体が参加する世界的なデザイン賞であり、”G”マークとともに広く親しまれている。
2024年度のテーマは「勇気と有機のあるデザイン」で、審査対象となった5773件の中から1579件がグッドデザイン賞に選ばれた。
受賞作の中から90代の母を通い介護中のR60記者が気になった、シニア・介護関連の5アイテムをご紹介する。
【1】グッドデザイン金賞!介護用洗身用具『switle BODY』
最初にご紹介するのは、グッドデザイン賞の上位20位内にランクインし、金賞を受賞した『switle BODY』(スイトル ボディ)。
本体とシャワーヘッドがコンパクトに収まり、手軽に持ち運びができるポータブルシャワーだ。要介護者をベッドなどに寝かせたまま、周囲を濡らさず体や髪を洗うことができるというもの。
日常の「困った!」を解決する物づくりを行うシリウスが手がけたもの。同社はこれまでも、掃除の負担を減らすスティック型掃除機や、火を使わず調理できるコンベクションオーブンなど、高齢者の困りごとに寄り添う家電を開発、販売してきたが、新たに手がけたのが、介護シーンの入浴をお助けする本アイテムだ。
水や専用ソープ、タオルなどを用意し、本体内蔵のタンクに水を注いで温度設定をして電源を入れるだけと、操作は簡単。シャワーヘッドを利用者の体や髪にあてながら洗い、ソープや水をまさに「吸い取る」仕組み。独自に開発したシャワーヘッドにより、液だれを防ぎ、周囲を濡らさずにすむとのこと。
また、約1リットルという少ない水で全身の「予洗い→洗身→すすぎ」までできるので、節水・節電にも。
現在、専門の販売店を通じて販売されており、介護施設や訪問介護での活用がメインだが、在宅介護での利用も視野に入れているとのこと。
★記者の注目ポイント
寝たきりのかたに限らず、入浴やシャワーを嫌がる人たちの衛生管理にも役立ちそう。訪問入浴などで活用されたら、今後使ってみたいと思った。手軽でポータブルなのに体と髪まで洗えるのはとても便利、入浴介助の負担を減らしてくれることに期待!
【データ】
販売名:介護用洗身用具 switle BODY
販売元:シリウス
価格:18万4800円
重量:約5.5㎏(ACアダプター・水・専用ソープ含まず)
温度設定範囲:38~45℃
https://www.sirius-agent.co.jp/
【2】高齢者向けデザイン付き嚥下食『クックデリのソフト食プレミア』
高齢者向けデザイン付き嚥下食『クックデリのソフト食プレミア』は、グッドデザイン賞の中でも、新たなビジネスモデルなどを創出するデザインとして認められた『グッドフォーカス賞』に選ばれた。
クックデリは、高齢者施設向けの食事の開発・販売を手がける企業だ。施設では利用者の嚥下状態でさまざまな形状の食事を用意する必要があるが、同社が開発した完全調理済みの冷凍食品を活用することで、施設側は負担が減り、利用者は「食べること」が楽しみになる、そんなビジネスを目指しているという。
中でも、今回受賞した『クックデリのソフト食プレミア』は、「食べる意欲を引き出すこと」を目指してデザインされた介護食だ。
特殊製法のデザインプリントにより、やわらかい介護食の表面に、魚の皮や肉の焼き目をつけるなど、通常食のようなリアルな見た目や形が再現されている。
見た目だけではなく、栄養面や形状などにも工夫が。”残さず食べ切れる”ことも食事への意欲には欠かせない要素。高齢者が「食べ切れる」少量でも高栄養なのもポイント。
また、献立もステーキやさばの味噌煮、角煮などと種類が豊富だ。
★記者の注目ポイント
90代の母もそうだが、「食事が一日の最大の楽しみ!」と言う高齢者は多い。しかし、食材をやわらかくすり潰した介護食は見た目がいまいちという声も…。こうした新たな技術によって食べる楽しみや喜びを感じながら、健康もサポートできる取り組みが広まるといいと感じた。
【データ】
販売名:高齢者向けデザイン付嚥下食『クックデリのソフト食プレミア』
販売元:クックデリ
https://www.cookdeli.com/
【3】医師らに気軽に何度でも相談できるヘルスケアアプリ『HELPO』
『HELPO』(ヘルポ)は、身体の不安や不調を医師・看護師・薬剤師などの医療チームに24時間365日何度でも相談できるスマホ用のアプリだ。医師の診療が必要な場合は、そのままオンライン診療の受診もできる。
ソフトバンクがヘルスケア分野の社会課題の解決推進のために設立した企業「ヘルスケアテクノロジー」からリリースされたこのアプリは、2024年4月に全面リニューアルを実施。このたび、グッドデザイン賞に選ばれた。
リニューアルにより、自分の健康診断記録や日々の歩数や睡眠記録する「マイカルテ」や、健康目標を達成するとポイントがもらえる機能「健康チャレンジ」を搭載。すっきりとシンプルな画面構成で、シニア世代にも使いやすいデザインになっている。
★記者の注目ポイント
高齢者は深夜など思わぬときに体の不調を訴えることがある。そんなとき専門家に相談できるのは心強い。親に限らず自分の健康管理にも活用できそう。
【データ】
販売名:HELPO(ヘルポ)
販売元:ヘルスケアテクノロジーズ
アプリ月額利用料:550円
https://healthcare-tech.co.jp/
【4】介護職の方々の願いから生まれた排泄センサー『ヘルプパッド2』
『ヘルプパッド2』は、ベッドに敷くシート形状の排泄センサーだ。前モデルは、2022年度グッドデザイン賞金賞に選ばれ、2度目の受賞となった。
センサーが「におい」を検知しAI判定する。便と尿を判別し、介護者のPCやスマホ、タブレットに通知がいくことで、必要なタイミングでのおむつ交換が可能に。排泄ケアをする人たちの負担軽減にもつながっている。
『ヘルプパッド2』は前モデルよりも検知能力を高め、スッキリとしたデザインに改良。現在、高齢者施設や医療施設からの引き合いも多く、発売台数も伸びているという。
開発・販売のabaは、「要介護者はもちろん、介護者も含め、人間が持つ本来の生命力を引き出せるよう、温かみのあるテクノロジーを通じて、必要なときに必要なケアを届ける手伝いをする」と理念に掲げている。
審査員からも「介護現場の人手不足に直結する問題解決として、今後もさらなる発展を遂げてほしい」との期待も寄せられた。
★記者の注目ポイント
シートマットの厚みが1cm程度とかさばらない設計。最新のAI技術が、高齢者施設など介護現場の負担軽減につながっている点が頼もしい。
【データ】
販売名:ヘルプパッド2
販売元:aba
価格:オープン価格
https://helppad.jp/
【5】地域に貢献!コミュニティスペース『ウエルカフェ』&移動販売車『うえたん号』
最後にご紹介するのは、全国に約3000店舗のドラッグストアを展開するウエルシアホールディングスが提供しているコミュニティスペース『ウエルカフェ』と、移動販売車の『うえたん号』。
『ウエルカフェ』は、地域協働コミュニティスペースとして、ドラッグストアの店内の一角を利用したフリースペース。現在、全国469か所で展開されていて、休憩やイートイン機能だけでなく、自治体と行政機関との関係を構築し、地域住民の活動やコミュニティの場にもなっている。
一方、『うえたん号』は、食品・生活日用品に加え、化粧品や第一類医薬品を含む一般用医薬品(要事前注文)を販売している移動販売車。
2022年静岡県島田市からスタートし、埼玉県秩父郡長瀞町、愛知県岡崎市などの全国の26自治体と協働し28台が運行中(2024年11月時点)。買い物を困難に感じる人への買い物支援や地域のコミュニティづくりも担っている。
ドライバーによる見守りや車両後部の大型モニターを使いオンラインを通じて薬剤師や看護師による健康相談が受けられる。
【データ】
サービス名:ウエルカフェ、うえたん号
提供元:ウエルシアホールディングス
https://www.welcia.co.jp/
★記者の注目ポイント
高齢者にとって気軽に立ち寄れる居場所があることは、孤立を防ぐとともに、フレイル予防にもつながるだろう。90代の母も外出に付き添いが必要になってきているため、移動販売車で医薬品が買えるのは助かるサービスだ。
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グッドデザイン賞受賞の介護関連アイテムやサービスは、どれもが利用する人に寄り添ったものばかり。介護生活が豊かに前向きになれるような、より良いものが今後も増えるといいと感じた。
※各社が発表したプレスリリースなどを元に構成。
取材・文/本上夕貴