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77才後期高齢者の若手芸人「おばあちゃん」喜寿祝いライブで見せた笑いと涙「人生は楽しんだもの勝ちよ」

 70才を過ぎてお笑いの世界に飛び込んだ女性がいる。温かくのんびりした笑いで観客を魅了する吉本のピン芸人「おばあちゃん」だ。2月に77才の喜寿を迎え、後期高齢者でありながら芸歴5年目の新人――。そんな今注目のおばあちゃんの喜寿を祝うお笑いライブが開催された。その模様をレポートする。

注目の芸人「おばあちゃん」の喜寿祝いライブ開催!

 2024年2月12日、おばあちゃんの誕生日となるこの日、『祝77歳!芸歴5年目『おばあちゃん』の喜寿をお祝いする会』が東京・神保町よしもと漫才劇場で開催された。

 チケットは完売、126席の会場は満席、おばあちゃんを囲み、同期の若手やぼる塾ら先輩芸人も出演し、会場は盛り上がりを見せた。

芸人・おばあちゃんってどんな人?

 1947(昭和22)年生まれ、団塊の世代の”おばあちゃん”。彼女がお笑いの世界に飛び込んだのは、2018年。定年退職後に高齢者劇団で活動していたが、舞台を基礎から勉強したいと思い、吉本総合芸能学院東京校(東京NSC)に24期生として入学する。

「NSCの入学金を振り込もうとしたら、銀行の人に振込め詐欺と心配された」「先輩芸人に挨拶するとお孫さんの付き添いですかと言われる」など、“おばあちゃん”ならではの珍場面も多いという。

 毎日朝5時に起きてNSCに通い、ネタ見せはもちろん、腹筋やスクワットなどの体力作り、ダンスなどの表現授業にも若い同期たちと一緒に懸命に取り組んできた。

鉄板ネタ「シルバー川柳」を3作披露

 ライブの序盤では、金魚番長、鬼ぷりんら同期芸人たちに見守られる中、77才初のネタを披露した。

 おばあちゃんは、喜寿を祝う紫色のちゃんちゃんこ姿で静かに登場。「ヨボヨボの若手です」と自己紹介し、背丈より高い”サンパチマイク”の前に立つ。

「私がマイクに触れると点滴に見えますが、マイクです」と掴みのネタを披露し、会場は笑いに包まれた。

 仲良しの先輩芸人、ぼる塾・あんりさんから「最初に会ったときは、若手芸人の祖母かと思ったよ」とつっこまれると、「若手芸人のおばあちゃんです、ボケてませんよ」と切り返しさらに笑いを誘う。

 おばあちゃんの持ちネタは、身近な出来事を句にしたためた“シルバー川柳”だ。

 この日のお題は、高齢者の医者通い。病院で繰り広げられる“あるある”エピソードを語った後に「そこで一句」と、短冊を取り出して句を読み上げる。

「朝起きて 今日も元気だ 医者通い」

「スリッパで 足がもつれる 高齢者」

「大丈夫 順調ですよ 老化です」

 この日は舞台上で3首を披露し、会場を沸かせた。

 おばあちゃんの芸には、高齢者らしいゆったりした「間」の中に生まれる独特のおかしみがある。彼女の笑いの原体験は、戦後のお笑いを牽引した、花菱アチャコ・横山エンタツ、京唄子・鳳啓助らの“しゃべくり漫才”だそうで、令和の時代において唯一無二の存在感を放っている。

 おばあちゃんは2023年6月、約600人のライバルを制し、東京・神保町よしもと漫才劇場のオーディションを勝ち上がり、過去最高齢の劇場所属メンバーとなった。76才の劇場デビューは吉本史上最高齢ということでも注目を集めている。

 3月には初となる自著の発売も控え、今後益々ブレイクの予感。この日の舞台には、多くのメディアが駆けつけていた。

同期・先輩芸人にイジられ笑いあり涙あり

 ライブ中盤では、ダンスが得意な芸人、グリフォン國松さんが登場し、TikTokで流行っているダンスをおばあちゃんにレクチャー。コミカルな動きで必死にダンスをするおばあちゃんの姿に、笑いの渦が巻き起こる。

 おばあちゃんがコンビを組みM-1グランプリに出場し共に3回戦を勝ち抜いた、現役医師であり芸人のしゅんしゅんクリニックPさんも登場。

 認知症予防の指体操を教えるネタでは、若手芸人たちが苦戦する中、おばあちゃんだけが華麗な指の動きを見せる一幕も。


おばあちゃんと孫世代のやさしい交流

 若手芸人にとっておばあちゃんは、鎬を削るライバルでありながら、優しい「祖母」的な存在でもある。

「劇場では若手が率先して荷物を運ぶのを手伝う」「おばあちゃんがお団子を食べ始めると喉に詰まらないか心配でさっと水を差し出す」「いつもお煎餅やみかんを配るので楽屋が実家みたいになる」など、若手から愛されるほのぼのとしたエピソードも披露された。

 ライブのフィナーレは、先輩芸人・あいすけさんが書いた手紙を読み上げた。ふたりは、劇場の合間などによく一緒にご飯に行く仲だという。

「私は祖母が去年亡くなりました。だから、この世にいる私のおばあちゃんは、“おばあちゃん”だけになりました。同じ時代に芸人になれて、ともに舞台に立てることが嬉しい」と涙ながらに手紙を朗読。

「40才年上のあなたは、人生の大先輩ですが、芸人としては後輩です。だから、あなたが困ったら、先輩として全力で助けます!」とあいすけさんが力強く締めくくると、おばあちゃんの目にもうっすら涙が浮かんでいた。

 72才でお笑いの世界に飛び込んだおばあちゃん。膝が痛いときもあれば、若者言葉がわからず戸惑うこともあると言うが、ライブの最後に発した「毎日新しいことの連続でわくわくする。人生は楽しんだもの勝ちよ」。その言葉に胸を打たれた。

プロフィール/おばあちゃん

1947年生まれ。77才。中学卒業後、大手企業事務職に就職し、24才で結婚・退社。33才で造船所に入社し職場復帰後、64才の定年まで設計部門に勤務。経済的な理由から高校進学ができず、通信制高校を卒業。放送大学に通い自らの乳がん経験をテーマで論文を書き卒業。定年後、高齢者劇団を経て、2018年に71才でNSC吉本総合学院東京校24期生として入学。ピン芸人としてデビュー後はシルバー川柳ネタが話題に。3月12日に初の著書『ひまができ 今日も楽しい 生きがいを -77歳 後期高齢者 芸歴5年 芸名 おばあちゃん-』(ヨシモトブックス)が発売予定。

おばあちゃんが無料のYouTube生配信イベントに登場!

 3月5日19時~実施するYouTube生配信イベントに、なんとスペシャルゲストにおばあちゃんが出演。テーマは「シニア世代の”聞こえ”について知っておくべきこととその対策」。おばあちゃん渾身の耳にまつわるシルバー川柳ネタが生で見られるかも!?

イベント申し込みはコチラ↓↓↓↓↓

無料視聴用URLのお申し込みはこちらから(申込締切/3月4日 23:59)

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※「介護のなかま」になっていない方は、まず登録用のアンケートが開きます。その後、無料視聴の申し込みページに自動的に移動します。

→イベント詳細はコチラ
https://kaigo-postseven.com/147613

撮影/柴田愛子 取材・文/前川亜紀

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●お笑い芸人レギュラーほかよしもと芸人が発信する<介護レク本>「高齢者の笑顔で苦労も吹き飛ぶ」

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