いとうまい子さんも!ロコモや介護予防にAIを活用する研究進む
外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理法が国会で成立し、新しい制度が今年の4月から始まる。外国人人材を介護の世界でも活用していく背景にあるのは深刻な人手不足。多くの高齢者向けの施設が介護人材の確保に苦労しているのが実態だ。
介護業界の人手不足の解消に期待されているものの一つにロボットの活用がある。“介護ロボット”と聞いて何を思い浮かべるだろうか。「介護従事者の代わりに高齢者を持ち上げてお風呂に入れる」「ベッドから車椅子に移乗する際にアシストするロボットスーツ」などを知っている人もいるだろう。このようなロボットも少しずつ介護現場に普及しているが、近年では会話をし、コミュニケーションを取ることで認知症予防をしたり、介護予防体操のインストラクターをするなど様々な種類のロボットが出てきている。
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介護ロボットの開発に取り組むいとうまいこさん
女優のいとうまい子さんも介護ロボットの研究開発に取り組む一人。テレビ制作会社社長としても活躍するいとうさんは、2010年に早稲田大学人間科学部eスクール健康福祉科学科へ入学。2014年には同大学修士課程へ進み、ロコモティブシンドローム予防を目的としたスクワット運動をアシストする「ロコピョン」を開発。現在は博士課程へ進み、予防医学の促進について研究開発を進めている。
ロコモティブシンドロームとは、骨や関節、筋肉など運動器の障害のために、立つ、歩くなど移動機能が低下している状態のことをいう。略称はロコモ、和名は運動器症候群といい、要介護の原因として近年注目されている。
いとうさんが今回フェローに就任し、タッグを組むことになったのが株式会社エクサウィザーズ。エクサウィザーズにはAI研究者やエンジニア、外資系コンサルティングファームや起業経験を通じて鍛えた20代後半の若手、そして、元プロ野球球団のオーナーなど多彩な人材が集い、AIの活用によって社会課題の解決を目指している。現在取り組んでいるエビデンスに基づく認知症ケアの普及・浸透に加え、今後はいとうさんとAIを活用し、ロコモティブシンドローム対策や介護予防の分野にも研究開発を拡大していくという。
「ロコモティブシンドロームの予防」を啓発
父親がガンで寝たきりになったことが、いとうさんが介護に関わる研究を続けている理由の一つ。自分では移動もできず天井だけを見て過ごしている姿をとても切なく感じ、涙を流した経験もあるという。フェローに就任したいとうさんに介護ロボットについての考えなどを聞いてみた。
「介護現場の現状ですが、今はまだロボットを活用できているとは言えない状況だと思います。ただ、介護業界における様々なデータが揃いつつありますので、今後は人の手が足りない場面や、人でなくてもできる分野、ロボットだからこそ得意とする場面で活用されるようになると思います。私が開発を進めているロボットは介護のためではなく、高齢者がいくつになっても自立して行動できるよう、ロコモティブシンドロームの予防をサポートするロボットで、今までに開発したロボットの進化版を開発予定です」(いとうまい子さん 以下「」はいとうさん)
いとうさんが取り組んでいる課題についてさらに聞いてみた。キーワードは予防だ。
「私が取り組んでいるのは『ロコモティブシンドロームを予防する!』ということです。ところが、『予防が何より重要である!』ということへの認識が、高齢者だけでなく中高年の方々も薄いので、そのことが大きな課題だと思っています。そのためにもロコモティブシンドローム予防の重要性を多くの方に知って頂けるように、ロボット開発と同時に啓発にも取り組んでいきたいと思っています」
介護の世界でのロボット活用はまだ始まったばかり。いとうさんとエクサウィザーズが目指すロコモティブシンドロームの予防をサポートするロボットへの期待は大きい。いとうさんの今後の取り組みに注目が集まりそうだ。