胃を健康に導く5つの生活習慣を医師が指南「早食いはNG、30回よく噛んで食べる」
猛暑続きで食欲減退、冷房と冷たいものでお腹冷え冷え~。ちょっと食べたら胃もたれ、キリキリ、胸やけも。加齢のせいだからと諦めてはダメ! 不調に向き合い、胃を健康に導く生活習慣について、消化器内科の専門医に聞きました。実は、「よく噛んで食べる」ことで7割の患者の症状が軽くなるという。
胃を健康にする5つの生活習慣を専門医が指南
胃に病気が見つかれば医師の指導に従って治療をするが、検査をしても病気が見つからないときや、なんとなく不調を感じているときはどうすればいいのだろう。
【1】胃の消化を妨げない
「胃が弱っているときは、負担をかけないために、おかゆやヨーグルト、豆腐・豆乳、バナナなどの消化のいいものを食べ、回復を待つのが基本です。しかし、不調を繰り返さないためには、生活習慣を改善して胃を健康にした方がいい。重要なのは、消化しやすい状態で食べ物を胃に送り、消化を妨げないことです」(新板橋クリニック院長・清水公一さん、以下同)
【2】早食いはNG!食べることに集中し30回噛む
清水さんが、胃がもたれるといった不調を訴える患者に「よく噛んで食べているかどうか」を聞くと、その約9割が「早食い」「噛んでない」と即答するという。この悪習慣を改めるだけで、7割の患者は症状が軽くなるというから、驚きだ。胃の健康にとって生活習慣はそれほど重要なのだ。
「食べ物をよく噛んで食べると唾液が出ますが、唾液と食べ物が混ざった状態で飲み込めば、食道から胃への移動がスムーズになり、胃の消化活動も順調に進みます。噛む回数の目安は30回ですが、40才を過ぎると唾液の分泌が減ってくるので、もっと噛んでもいいですね」
「早食い」はもってのほかで、口に食べ物を入れたらいったん箸をおき、食べ物を飲み込んでから、新たな食べ物を口に入れる習慣をつければ、咀嚼(そしゃく)を意識しやすく、自然と噛む回数が多くなる。また、「ながら食べ」は、食べること以外に意識が向いて咀嚼がおろそかになるため絶対NG。
【3】正しい姿勢を意識し、食後の前かがみは×
さらに、注意したいのが前かがみ姿勢だ。
「前かがみになると腹圧がかかって胃が圧迫され、胃の動きを制限してしまいます。食事中は気をつけていても、食後にスマホに熱中して猫背&前かがみになっていると、胃を圧迫して消化を妨げるので気をつけましょう」
姿勢だけでなく、きつめの下着や洋服による胃の圧迫にも注意。圧迫すると血行不良によって内臓が冷え、胃の働きが鈍くなってしまう。お腹を温める腹巻きは有効だが、締め付けすぎは避けよう。
【4】食べてすぐには入浴しない
食後は消化活動のために血液を胃に集中させる必要がある。だが、このときに入浴して温まると全身の血流がよくなるため、胃の働きが妨げられてしまう。
「その結果、食べ物が消化されずに胃にとどまり続け、胃酸の逆流が起きやすくなり、胃もたれ、胸やけしやすくなります。食べ物が胃で消化されるのに2~3時間かかります。食後に入浴する場合は、2~3時間たってから入浴するといいでしょう。食事の時間が遅い場合は、入浴後に食事をした方がいいですね」
【5】寝るときは、上半身を少し起こす
「食後、眠くなって横になる人も多いと思いますが、すぐに横になると、満腹の胃の内容物が逆流しやすくなるため、食後3時間くらいは横にならない方が消化にはいいですね。どうしても横になりたいなら、左を下にしましょう。右を下にするとカーブしている胃よりも食道が下にくるため、逆流しやすくなります」
また仰向けの場合は、背中あたりの布団の下に畳んだバスタオルやクッションを入れ、上半身を少し起こして寝ると、胃酸の逆流が防げる。
胃の市販薬 症状と代表的な商品
市販の胃薬も細分化され、いろいろな種類が出ているが、自分の症状に合った薬を選ばないと効果を得にくい。以下、種類別の働きと、代表的な市販薬を紹介しよう。
胃酸分泌抑制薬
胃酸の分泌を抑える成分を配合した薬。すっぱいものがこみ上げるなどの胃酸過多や、胃もたれ、胸やけなどに。
【商品】ガスター10、アシノンZ錠など。
消化管運動機能改善薬
食道や胃の動きを改善し、胃酸を胃に押し戻したり、胃から腸への排出を促す働きがある。胃痛、胃もたれ、胸やけなどに。
【商品】タナベ胃腸薬<調律>。
粘膜保護薬
食道や胃の粘膜の傷口に働き、胃酸で粘膜が傷つかないように保護する薬。空腹時の胃痛、吐き気などに。
【商品】スクラート胃腸薬S、セルベール。
制酸剤
胃酸分泌を抑制するとともに、胃酸を中和してダメージを軽減する薬。胃痛、胃もたれ、胸やけなどの症状に。
【商品】サクロン、パンシロンAZ。
消化酵素剤
消化酵素と同じように働く成分が含まれ、消化吸収を助ける薬。食べすぎ、飲みすぎ、油っこいものを食べた後、胃もたれに。
【商品】ベリチーム酵素、第一三共胃腸薬プラス。
鎮痙剤(ちんけいざい)
胃の緊張、収縮などを抑える薬で、ストレスなどによる胃痛、胃がけいれんしているような急激な痛みにも対応。
【商品】ブスコパンA錠、サクロンQ。
健胃剤
オウバク、センブリなどの生薬が含まれ、胃の働きをよくする薬。胃のむかつき、胃もたれ、食後の胃痛などに。
【商品】太田胃散、第一三共胃腸薬。
総合胃腸薬
胃のさまざまな症状に対応するよう、複数の成分をバランスよく配合した薬。胃の症状全般に効く。
【商品】キャベジンコーワα顆粒。
ただし、不安な場合は薬剤師に相談し、1週間のみ続けても改善されない場合は病院に行こう。
協力/薬剤師・犬伏洋夫さん(越前堀薬局)
教えてくれた人
新板橋クリニック院長・清水公一さん
消化器内科医。脳内物質と自律神経、腸・胃脳相関の視点から機能性消化管疾患(逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群)の治療に取り組んでいる。患者自らが脳内物質と自律神経をコントロールして症状を改善する専門治療を行っている。
※女性セブン2022年8月11日号
https://josei7.com/
取材・文/山下和恵 イラスト/うえだのぶ