カツオによる「アニサキス被害」が急増している理由とは
「かつおによるアニサキス被害が急増」というニュースを最近よく耳にする。アニサキスは刺身などから人体に入って胃壁などに潜り込み、激しい腹痛や吐き気、嘔吐を引き起こす。さばやいかが媒介するイメージが強いが、なぜ今年はかつおによる被害が増えているのだろうか。国立感染症研究所の杉山広さんに聞いた。
海水温の上昇でかつおが豊漁。流通網の発達で全国で生食できるように
「さばなどに比べ、かつおはアニサキスの寄生数が一般に少ないので、危険度の高い魚ではないと思っています。そんな中、かつおによる被害急増の理由はいくつかあるかと思います。1つは、海水温の上昇によるもの。かつおの稚魚は南の海で育ち、黒潮に乗って日本へやってくるのですが、今年はその数が増えているようです。
ここ数年、海水温が上がったことにより、プランクトンが増えた。そのため、“共食い”するかつおの数が減り、結果、かつお自体の数が増えた。そして、豊漁によってアニサキス被害が増えたのではないでしょうか」
風が吹いたら桶屋が…というように、海水温が上がったらアニサキス被害が増えた、というわけだ。
さらに、別の要因として、杉山さんは「流通網の発達」を挙げる。遠隔地から新鮮な魚介類が早く、しかも冷蔵やチルドで運ばれてくるようになり、かなりの種類の魚が、生食可能になったからだと指摘する。
「北海道のとれたてのさんまの刺身など、これまではその土地の人しか食べていなかった料理が、今は全国どこでも気軽に食べられるようになってきました。おいしいものを食べられる半面、アニサキスのリスクは高まっているのです」(杉山さん)
流通網の発達により、スーパーに並ぶ刺身の盛り合わせも当然ながら増えた。
アニサキスは60℃で1分以上加熱、-20℃で24時間冷凍で死滅する
「盛り合わせを食べてアニサキス被害にあっても、まぐろ、鯛、ひらめなど数種類の魚が盛られていると、どの魚が原因なのか特定できません。しかし、かつおは刺身やタタキなど一品料理で出るケースが多いので、食べた人は記憶しやすい。つまり、“犯人”に特定されやすい。ほかの魚に比べると不利な状況にあるのでしょうね」(杉山さん)
ちなみに、アニサキスは60℃で1分以上加熱、もしくはマイナス20℃で24時間以上冷凍すれば死滅する。
アニサキス被害を避けるには生食を極力避けるにこしたことはないが、生食の魅力が捨てがたいのも事実。自己責任でご対処を。
※女性セブン2018年6月21日号
【関連記事】