「片手でクッキング」が話題!麻痺があっても料理を楽しむ
今年2月、片麻痺の人に向けたレシピ集『片手でクッキング』を、東京ガスがホームページに公開したところ、アクセスが一気に増え、大きな話題に。100年以上にわたり、料理教室の運営などで培ったレシピやアイディアが、片手の不自由な人の救世主となっている。レシピの考案秘話とともに、そのノウハウを教えてもらった。
片手調理が自信をつけるきかっけに
脳卒中を含む脳血管疾患で通院している患者数は、全国で約118万人と推計され(厚生労働省『平成26年患者調査の概況』による)、その多くのかたがたが手足の麻痺などの障害を抱えてしまうという。
東京五輪のパラリンピックのオフィシャルパートナーでもある『東京ガス』がこのたび、片麻痺やけがなどで両手が自由に使えない状況に対応した料理のアイディアや調理の工夫を盛り込んだ小冊子を作成。この2月にホームページを通じて無料配布を開始し、多くの注目を集めている。
「食を切り口に共生社会に向けた取り組みができないかと考えたのが『片手でクッキング』が生まれたキッカケです。調理の工夫などのノウハウは、横浜市総合リハビリテーションセンターに監修していただき、メニューの開発は弊社で行いました」(同社 東京2020 オリンピック・パラリンピック推進室 原口聖名子さん)
同社「食」情報センターの杉山智美さんは、公開メニューについて次のように語る。
「1品でも満足でき、一般的な食材で作れるもの、という視点で選びました。片手ではできないと思われる動作でも、ちょっとした工夫でできる、と思えるアイディアを盛り込んでいます」
監修を行った『横浜市総合リハビリテーションセンター』副センター長の高岡徹さんも、「片手調理は、料理を長年やってきた人には、非常に取り組みやすいリハビリテーションです。片手が不自由になっても後ろ向きにならず、自信をつけるキッカケにしてほしい」と、語っている。実際に調理を行った人からは、「また料理ができるなんて思っていなかった」「切る、割る、開けるといった動作が1つずつできるようになり、自信につながった」など、前向きな声が多く寄せられている。
「調理を足がかりに積極的になり、外に出る機会を増やすなど活動の場を広げてほしいですね」(高岡さん)
片手調理はコツさえ習得すれば、どんどんレパートリーが増やせるものばかり。まさに、「食で広がる快適な暮らしづくり」だ。
シリコン製軽量カップなど片手で扱いやすい道具も登場
調理時に水や調味料を計るためのグッズにも、片手使用時に使いやすいものが登場している。必要に応じて手に入れたい。
たとえば、シリコン製の計量カップは片手で持っても滑りにくく、サイドを押せば先がすぼまるので注ぎやすい。
また、ボウルは取っ手や注ぎ口のついたものが片手使いには便利だ。
固定しやすい調理道具を選ぶ
片手で調理する際、もっとも困るのが食材や調理器具の固定方法だ。片手でも扱いやすく、固定もしやすい道具選びが肝要だ。
「釘つきまな板」は、食材を釘に刺して固定できるので、皮をむく、切る等の動作の助けになる。市販のものもあるが、薄いまな板に釘を刺して、自分で作ることもできる。
釘付きまな板の代わりに、濡れ布きんでも食材を固定できる。食材ごとに布きんを取り替えるのが理想なので数枚用意し、使用後は洗う。
キャベツやレタスなど大きめの野菜を切る時は、皿や大鉢など、ある程度の大きさと重さのあるものを野菜にのせて押さえるとよい。
丸い果物はお椀に入れて。お椀に濡れ布きんを敷き、丸い果物を入れれば皮むきもラクにできる。りんごは上から皮をむき、途中で上下を入れ替えて下部分の皮をむく。
100均などの“すべり止めグッズ”も活用を。調理器具を使う時はすべり止めマットを敷いておこう。まな板などには切って使えるタイプ、ボウルなど底が狭いものには、ソープホルダー等の活用も◎。
【データ】
冊子はカラーで20ページ、無料でサイトhttps://www.tokyo-gas-2020.jp/challenge/からダウンロードできる。
写真提供/東京ガス
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大反響の「片手でクッキング」そのコツとポイントを紹介
※女性セブン2018年4月19日号
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