MCI(軽度認知障害)の改善に「ビフィズス菌AI」が期待と研究報告
7年後の2025年、65才以上の高齢者の約5人に1人は認知症を患っていると予測されている(厚生労働省)。そして、同省は内閣府や他省庁と共に「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~」(新オレンジプラン)等を掲げ、その対策に乗り出している。
MCIの改善に「ビフィズス菌がひと役」の可能性
今や社会全体で認知症に取り組む時代。さまざまな認知症の予防法が提唱される中、この度、森永乳業株式会社から注目される研究発表があった。
同社は、日本農芸化学会2018年度大会(3月名古屋市で開催)にて、「ビフィズス菌A1(Bifidobacterium breve A1)」に、「軽度認知障害(※注1)が疑われる人の認知機能を改善する可能性を確認」と発表し、注目を集めた。
「ビフィズス菌」は、体内で乳酸や酢酸といった有機酸を生成し、悪玉菌の増殖を抑え、私たちのお腹の調子を整えてくれる働きを持っている。その種類はたくさんあるが、人の腸にすむビフィズス菌は、約10種類ほど発見されているという。ビフィズス菌A1は、同社が発見したビフィズス菌の1つだ。
今回の研究は、そのビフィズス菌A1を、軽度認知障害であると考えられる人たちに、約8か月間摂ってもらい検査したものだ。研究内容は以下のとおり。
【研究内容】
■研究方法
・研究期間:2016年12月から2017 年7月
・対象者(被験者):愛媛県松山市内の整形外科に通院中の高齢者のうち、ミニメンタルステート検査(MMSE)(※注2)にて軽度認知障害の可能性が高いとされた27名(軽度認知障害であると考えられるMMSEスコア22点から26点に該当する人)
・方法:「ビフィズス菌A1」入りのカプセル(ビフィズス菌A1を100億個含有)を1日2個摂取。摂取前及び8週後、16週後、24週後にMMSEによって認知機能評価を行う。
■研究結果~認知機能評価~
図のように、MMSEスコアは、ビフィズス菌A1の摂取により、摂取前から、摂取16週後と、24週後のいずれにおいても経時的に有意な上昇が認められた。
この研究結果からもわかるように、「ビフィズス菌A1を継続的に摂ることで、軽度認知障害が疑われる高齢者の認知機能に、改善効果の可能性がある」ということなのだ。同社は、引き続きビフィズス菌A1の有効性を検証していくという。
腸にも優しいビフィズス菌が認知症対策にもなるのなら、ありがたい話。より研究や開発が進められれば、商品化も検討されるだろう。〝5人に1人認知症時代”に備えるためにも、同社の研究に注目していきたい。
注1:軽度認知障害/健常者と認知症の中間にあたるグレーゾーンの段階で、MCI(Mild Cognitive Impairment)とも呼ばれている。認知症は(一部の場合を除き)完治が難しいが、軽度認知障害の段階では、適切な治療・予防をすることで回復したり、発症を遅延したりすることがあるという。
注2:ミニメンタルステート検査(MMSE)/認知機能を比較的簡便に評価できる聞き取り式質問票。認知症のスクリーニングや診断の補助として広く活用。総スコア30点満点にて評価され、得点が低いほど認知機能障害を有する可能性が高いとされる。本研究では22点から26点を「軽度認知障害の疑いがある人」としている。
【データ】
会社名:森永乳業株式会社
住所:〒108-8384 東京都港区芝5-33-1
問い合わせ:お客さま相談室0120-369-744
公式サイト:http://www.morinagamilk.co.jp/